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四章
第63話 復活の儀式
しおりを挟む小一時間ほど経過しただろうか。
僕が椅子に座り、船を漕いでいるとミザリーが嬉々とした声を上げる。
「できたっす!! 自分的にはなかなか上手くいったっすがどうっすか、ニアさん!」
魔法陣の出来映えなど僕には分からない。
母親からは習ったことはあるが、一度も成功したことはなかった。
魔法陣はなんか丸を描いて、その中に絵を色々組み合わせて作るものだが、僕は前世でも丸を上手に描けなかったのだ。
結果、完成した魔法陣が歪な形になり魔法が不発になった。
しかし、今後魔法陣を使う予定はないので大丈夫だと思う。
今回のような儀式や召喚術など複数人で発動する魔法に用いられ、数十人単位で発動する転移魔法のようなものもある。
この魔法陣はそこまで大規模なものではないようなので、二人でも大丈夫なのだろう。
ミザリーは魔法の制御が云々と言っていたので、もしかしたら一人でも発動できるのかもしれない。
「上手だね」
僕からすると綺麗に丸になっているので、上手くできているように見える。
「ありがとうっす! 大変だったっす!」
僕が褒めてあげると、ミザリーは嬉しそうにしている。
「それじゃあ早速始めるっすよ!」
「僕は何をすればいいの?」
「魔法の制御をお願いするっす! 自分は魔力を注ぐっす!」
「うーん……まあやってみるよ……」
「一応魔法陣に制御補助の記述もしておいたのでそこまで難しくはなはずっす!」
発動したこともない魔法の制御をしろと言われてもできるのだろうか。
少し不安だが、やってみよう。失敗しても死ぬわけではないのだ。
「準備は良いっすか?」
ミザリーが魔法陣の中央に禍々しい心臓を置いている。
「……いいよ」
僕がそう言うと、ミザリーが魔力を練り始める。
彼女の周りに魔力の渦ができると同時に魔法陣が反応し始めた。
というか僕はこんなことをしても良いのかな。
人を復活させるなんて良くないことをしているのではないだろうか。
そんなことを考えているとミザリーが詠唱を唱え始めた。
僕はこれからミザリーが発動している魔法の制御をしないといけない。
魔法の制御というのは、魔力を正しい流れに導いてあげることだ。
魔法陣に制御を補助する記述がされていると言っていたし多分大丈夫だろう。
魔法陣に魔力が注がれていき、徐々に光を帯びていく。
すると、禍々しい瘴気のようなものが周囲に発生し、なんだか強い圧で押しつぶされそうになる。
ミザリーも額に汗を貼り付けながら、詠唱を続けている。
かくいう僕も辛い。
なにこれ吐きそう……うぇ……
これは本当に大丈夫なのだろうか……
いくらなんでも禍々し過ぎる。
僕はこのままこの魔法を発動させてしまって良いのだろうか。
止めた方が良いのではないだろうか。
なんかやっぱり命の危険があるかもしれない。
更に瘴気が濃くなってくる。
立っているのも辛く、気が付いたら僕は地面にうつ伏せになっていた。
僅かな間、気を失っていたみたいだ。
ぐぇ……気持ち悪い……
ミザリーも玉のような汗を滴らせて膝をついており、足元は水溜まりになっていた。
これ本当やばいよ……
もう制御してないのに、魔法止まってないし……
「……自分……もう魔力が……ニアさん続きを……!」
ミザリーは詠唱を中断してそんなことを呟いている。
しかし僕は詠唱など知らないし、気持ち悪いし……。
「無理……吐きそう……」
すると、ドクンと空間が脈打った。
「な、な……んすか……!?」
その瞬間、僕の体から魔力が強制的に吸い上げられる。
うえぇぇぇええ……死ぬうぅぅぅううう……
「あぁぁぁあああ……」
ミザリーも同じ状況のようで苦痛に顔を歪めている。
まるで掃除機で体の脂肪を吸い取られるような感覚だった。
乱暴に僕の体が蹂躙されていく。
やめてぇぇ……!
あまりの苦痛に僕の顔面は涙、鼻水、涎に蹂躙されていた。
それからしばらく魔力を吸い取られ続けた。
彼女は魔法陣の発動に魔力のほとんどを使っていたので、早々に気を失っていた。
僕は普段から魔法の練習を続けているので魔力量が多い上に、ほぼ満タンだったこともあり苦痛を感じる時間が長かった。
こんなことなら魔力なんか増やすんじゃなかったと後悔する。
多かった魔力も枯渇し、この苦痛から解放されると思った瞬間、魔法陣が一際大きく脈動し、瘴気が溢れ出す。
この煙、体に害ないよね……?
僕はボロボロになりながらそんなことを考えていると、次第に瘴気が晴れていく。
瘴気の霧の中に人影が見える。
おそらく復活の魔法が成功したのだろう。
しかし、ミザリーは気を失っていて大丈夫なのだろうか。
相手もミザリーに殺されたことに恨みを持っているのではないのか。
「なんじゃ……まだ気を失ってないのか? 久しぶりの食事じゃったから遠慮なく吸わせて貰ったのじゃがのう……」
僕の耳に鈴を転がすような声が聞こえてきた。
なんだこの胸の高鳴りは……ドキドキ……
これまで気持ち悪かったのも忘れて鼻息を荒くする。
そして、その人物が僕の前に姿を現した。
ドクン……と心臓が跳ねる。
小柄でチャーミングな少女がそこにはいた。
彼女は綺麗な白い髪を靡かせて、なんだか自信満々に腕を組んでいる。
露出の多い黒ドレスを身に纏い、僕の紳士度を否応にも上昇させる。
彼女の背中には蝙蝠の羽のようなものがついており、臀部からは悪魔の尻尾のようなものが伸びている。
噂に聞く魔族ではないだろうか。
そして、着目すべきはその恰好だ。
短いスカートに大きく開いた胸元……どうにもけしからん恰好をしている。
這いつくばっていることを良いことに上を見上げる。
うひょひょー!!白い……!素材はコットンだろうか。黒のドレスとのコントラスト……!スバラシイ……!!ワンポイントで小さなリボンがあしらわれているのがとてもキュート……!!
常に持ち歩いているカメラを取り出し撮影を始める。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ
ふーむ……本来であれば肌触りや匂い、味なども知っておく必要はあるが、今はこれぐらいで良いだろう……
お次は……
続いて大きく開いた胸元に目が吸い寄せられる。
果たしてこんなに肌を露出してしまっても良いのだろうか。
その膨らみかけの双丘は、まるでサンクチュアリであった。
もうすぐ……もうすぐだ……!
サンクチュアリの中心には真理の蕾があると言われている。
そこに到達することができれば僕はきっと一人前の紳士になれるはずだ。
首を伸ばして真理の蕾が存在するであろう場所を覗き込む。
自然と鼻息が荒くなってしまう。
…………シャッターチャンス!!
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ
「お主……何をしておる……?」
急に声をかけられたことでビクッと体を震わせる。
上手く取り繕うのだ……!僕ならできる……!
今までどれだけの死地を潜ってきたと思っているのだ……!
「え……あ……えと……君の名前を教えてくれるかな……?」
言葉は詰まってしまったが、かっこいい笑顔ができたと思う。
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