妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

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四章

第65話 危険な二人

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「良いだろう!! しかし貴様は人族ではないのか?」

 人族を滅ぼしたいというミザリーの願いを悩む素振りを見せることなく、肯定するミスラちゃん。
 この人たち、ちょっとやばいかも……。

 しかし、ミザリーは僕が思っていた以上に復讐に燃えているようだ。
 僕は彼女が特定の誰かに恨みを持っていると思っていたのだが、人族すべてを葬るつもりらしい。

「自分は魔族の血も入っているっす!」

「ふむ……なるほどの! よし!では早速人族を滅ぼすぞ!」

 人類の滅亡がいとも簡単に決まってしまった。
 いやいや、ちょっと待ってほしい。
 それでは僕自身も、まだ見ぬ僕の妹たちも死んでしまうではないか。

「ちょっと待ってよ!それって僕も死んじゃうじゃん!」

「む……確かに我の復活に尽力したお主まで滅ぼしてしまうのは気が引けるの…… どうじゃここは一つこやつ以外の人族ということで勘弁してやってくれんかのぅ……?」

「……ニアさんは魔族じゃないっすか? 以前にリッチの調伏を見て経験があるって言ってたじゃないっすか!」

 リッチさんの調伏というのは、あの虐待行為のことを指しているのだろうか。
 あれは僕が父親に虐待されたことがあるという意味だったのだが……。
 もし僕が魔族だったら殺されることはないのであれば、それに便乗しとく方が良さそうだ。

「え……あ……ま、まあ……魔族といえば魔族かもしれなかったり……」

「なんじゃ!それならそうと早う言えというのに!じゃあ問題ないな!滅ぼすぞ!」

 何故こうも血の気が多いのだろうか。
 しかし僕だって譲れないのだ。

「まあまあ落ち着いてよ……人族は悪い人ばかりじゃないよ……?」

「そんなことないっす!滅ぶべきっす!自分の家族は人族に迫害されていたっす!」

「家族はどうなったの?」

「よくそんなに簡単に聞けるっすね……? 薄々感じてたっすけど、結構無神経な人っすよね……」

「僕はミザリーのことが心配なだけだよ!」

 失礼な!せっかく僕が心配して聞いてあげたというのに!
 まあ、ちょっとだけ興味本位で聞いたところはあるけど……。
 ちょっとだけなんだから良いじゃないか!
 僕だってちゃんと六割ぐらいは心配しているのだ!

「あー!もう!煮え切らん奴らじゃ!たかが人族を滅ぼすだけでウジウジと!」

「ウジウジしてるのはニアさんっす!邪神様!人族を滅ぼしてくださいっす!」

「いやちょっと……」

 僕がミスラちゃんを止めようとするが、魔法を発動する準備に入った。
 というか、ここで発動したら僕たちも塵になっちゃうんじゃ……

「……んー? おっかしいのー?」

 魔法発動の準備をし始めたかと思ったら、次は首を傾げるミスラちゃん。

「こうか!……それともこうか!…………むむ……」

「ど、どうしたっすか邪神様……?」

「うーむ……どうやら我は超弱体化しちゃってるみたいじゃの! 長い間封印されてた影響で溜め込んでいた魔力もほとんどなくなっているようじゃ!」

「そ、それって……つまり人族を滅ぼすことはできないってことっすか……?」

「今のところはの!」

「失われた魔力はどのくらいで回復するっすか?」

「まあ、人族を全て滅亡させるにはあと千年はかかるじゃろうな! それと我は定期的に魔力を補給しないと消滅するでの。我が死なないようにちゃんと養うのだぞ!お主ら!」

「そ、そんな…… じゃあこんなに苦労した意味ってなんだったんすか……」

 ミザリーが今にも泣きそうになり、膝から崩れ落ちる。

 まあ、僕としてはミスラちゃんが大量虐殺をしなくても済んだのは嬉しい限りである。ミザリーには悪いけど、人族を滅ぼすことは諦めてもらおう。

「千年後でよいのであれば、我の目的のついでに滅ぼしてやろうぞ!」

「千年なんて自分も死んでるっす! 人族の苦しむ姿が見れないっす!」

 ミザリーの恨みも相当なものだ。
 一体何があったというのか。
 まあ、ミザリーの気持ちもわからなくはない。
 アーサーの藻掻き苦しむ様を想像するのは、溜まったストレスを解消するのにちょうど良いのだ。
 僕が手を下したいという願望はないが、思いがけず藻掻き苦しんでもらえないものだろうか。

「ならば他の願いを考えておくことだな!」

 ミスラちゃんが得意げにふんぞり返っている。
 ……なんて尊い……
 パシャパシャ
 しっかりとカメラに収めておかないと……。

「じゃあ、そろそろ帰るね」

「うむ!」

 そう言ってミスラちゃんがついてこようとする。
 僕としてはお持ち帰りたいところではあるが、世の中にはルールというものがある。
 学園は部外者が勝手に入れるようなところではなく、何より男子寮に入れるわけにもいかない。

 また、僕の部屋にはダンという肉欲に溺れた魔物がいるため、ミスラちゃんを連れ込んでしまえば、あっという間に奴の欲望の捌け口にされること請け合いだ。
 実際はどうだか知らないが僕の勝手な印象だ。
 あんなに食べ物に執着し、暇さえあればぐーすか寝ているのだ。
 であれば、性欲に関しても推して知るべしだ。

 かといってダンを追い出してミスラちゃんと二人きりになってしまえば、僕の紳士度が限界を迎えてしまう。
 そうなってしまえば紳士的行為がとどまることを知らないだろう。
 紳士度というのは僕の助平度合いを示す指標であり、紳士的行為とは高ぶった紳士度をリセットする儀式のようなものなのだ。

「ミスラちゃん、本当に心苦しいけど、連れていけないんだよね……」

「なんじゃと! ……さ、先ほどは……あ、あれだけ我を求めていたくせに! 許さんぞ!ああ許さん!ここで仕留めてやる!」

「ちょ、ちょっどやべで……ぐるぢぃ……」

 僕の方が少し背が大きいので、ミスラちゃんは背伸びをしながら、その小さな両手で一生懸命に僕の首を締め上げる。

 ふ……ふふ……か、かわいい……え、えへへ……
 なんだか変な趣味に目覚めてしまいそうである。
 へ、へへ……どうしよう……ちょっと気持ちいいかも……

 僕は泡を吹いて、気が遠くなりながらも新たな扉が開く音だけが聞こえていた。

「……本当に……自分の苦労はなんだったっすか……」

 ミザリーが呆れたように呟いているのを最後に僕の意識は途絶えた。




***




 目が覚めた後はユーリに叱られるからどうしても帰ると駄々をこねた。
 ミスラちゃんはそれでも納得せず、僕に対抗して駄々をこねてきた。
 彼女は常に邪悪な魔力を纏っているので、このまま王都に戻れば大騒ぎになると主張し、諦めてもらおうと思ったのだが、魔力は抑えられるとのことで、結局一緒に帰ることになってしまった。

 まあ、ユーリの部屋にでも泊めてもらえば大丈夫だろう。
 最初は怒るかもしれないが、ユーリは優しい子なのだ。
 身寄りがない子どもを放っておくほど薄情ではないはずである。

 ミザリーは上に報告しないといけないとかでどこかに行ってしまった。
 一体どこに何を報告するというのだろうか。
 気にはなったが、一刻も早く帰りたかったので詳しくは聞かなかった。

 というわけで、僕は寮の一室で正座をしていた。

「お兄ちゃん……また女の子拾ってきて……! 早く返してきなさい!」

「違うよ……僕は彼女のお兄ちゃんに……」

「また訳のわからないことを……!」

 僕の弁明にユーリの眦が吊り上がる。

「違うぞ!ユーリよ! ……その……ニアが我を求めるのでな……?仕方なしにだな……」

 ミスラちゃんは最初こそ勢い良く声を上げるが、顔を赤く染めて次第に声が小さくなっていく。

 誤解されるようなことは言わないでほしい。
 いや誤解ではないのだが……。
 もっと上手い言い回しがあるのではないだろうか。
 なんとなく気付かないふりをしていたが、ミスラちゃんはちょっと頭が弱い疑いがある。

「求める!?仕方なく!? ……ゆ、誘拐……!?お兄ちゃん!!」

「違うんだよ…… いや、そうとも言えるけど……」

「次から次へと…… お前、本当に懲りねぇな……?」

 ダンの呆れ顔が僕の神経を逆撫でる。

「ちくしょう!!やっつけてやる!!」

 ダンに飛びかかろうとするが、ユーリから冷たい空気が漏れ出していることに気付く。

「お兄ちゃん……? ……今僕とお話ししてる……よね?」

 ユーリの背後に般若を幻視する。

「ひっ……!」

 ミスラちゃんにも見えているのだろうか。
 短く息を吸って怯えた表情を浮かべていた。

 これ以上、余計なことはしない方が良さそうだ。
 僕はゆっくりと額を床に付けて平伏する。

「…………ごめんなさい……」

 その後、小一時間こってり説教をされた。

 なおミスラちゃんについては、僕の必死の説得によりユーリの部屋で面倒を見てもらえることになったのだった。

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