妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

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四章

第66話 スタンピード騒動の後①

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 モンスタースタンピードからしばらく経ち、王都の街は復興が進み、中止となっていた授業も再開され、日常を取り戻してきていた。

 現在も騎士団の調査は続けられ、ダンジョンは閉鎖されたままだ。
 冒険者の仕事がなくなるのではないかと疑問に思うが、冒険者ギルドも共同での調査になっているので、逆に忙しそうにしていた。

 未だ解決はされておらず、市民に調査の詳細が知らされることはなかったが、分かっていることはあった。
 このダンジョンスタンピードは人為的に起こされたことだということ、そして、その犯人の一人が捕まったということだ。

 それが誰かということは発表されてはいないが、ある噂が広がっていた。


「ニアさん!聞いてくださいまし!」

 現在、ユーリ、ティーナ、ダン、ミスラちゃんと学園の食堂で昼食を食べていた。

 ミスラちゃんが何故いるのかというと、実は彼女は学園に通うことになったのだ。
 通常の入学試験よりもレベルが高くはなるが、編入試験を受ければ学期の途中で入学することもできるらしいのだ。

 ミスラちゃんはその編入試験を受けたらしい。
 今まではユーリの部屋に匿っていたのだが、いつまでも部外者である彼女を学園に置いておくわけにはいかなかったので、ユーリが無理やり受けさせたのだ。

 試験の結果は、実技の成績は優秀だったようだが、僕の見立て通り頭は弱いらしく、筆記は振るわなかったようだ。
 そのため、僕と同じDクラスに所属することになった。運命だね?うふふ……
 本人は魔法の仕組みというものを分かっておらんだの、間違った知識を教えているだの言い訳をしていたので、現実を見なよと言うと、首をきつく絞められた。

 ちなみに魔族の特徴である羽や尻尾は魔法で不可視状態にしているらしい。
 魔族であることが露見してしまえば問題になるからだ。
 なんでも、魔族は迫害の対象らしいのだ。
 僕の妹を迫害するとは人族め……やはり根絶やしにしておくべきか……
 いやいや、それではユーリたちも死んでしまう。
 彼らだけは対象外としてもらうことはできるのだろうか。

「ティーナ、今日も元気が良いね」

「このウインナーは我がいただく!」

「ちょっ!それ俺のウインナー!!ミスラ様!俺にだけ厳しくないですか!」

 ダンが大事にとっておいた最後のウインナーを奪い取るミスラちゃん。

 ミスラちゃんとダンは完全に上下関係が出来上がっていた。
 こんな奴に構ってあげるなんて、心の優しい妹である。
 でもお兄ちゃんとしてはちょっとだけジェラシーを感じてしまうよ……

「ニアさん!この間のスタンピード事件の犯人が捕まったらしいですわ!」

「この……我に逆らうでないわ! お主はこのレタスとやらを喰らっておれば良かろう!」

「ごがが……」

 ミスラちゃんがダンの口に大量のレタスを突っ込む。
 ダンは何やら顔を紅潮させているような気がする。
 変な気を起こすようならお前の股間にぶら下がっているウインナーを引き千切ることになるぞ。

「犯人は公表されていないのですが、実はワタクシ、その犯人を突き止めたんですの!!」

「ミスラちゃん……他人の食事を取るのはだめだよ……? 特にダンの奴が食べてる物なんかばっちいから捨ててしまいなさい」

「もがががが!もがが!もがが!」

『しつれいな!ことを!いうな!』
 とでも言っているのだろうか。

 そろそろ、自分の食事シーンが他人に見せられないぐらい醜悪だと気付いてほしい。
 今だって糸を引いたレタスがそこら中に散らばっているのだ。
 しかもこの後こいつは散らばったレタスすらも綺麗に平らげるだろう。
 食べ物を粗末にするのは信条に反するのだそうだ。
 心構えだけは立派だが、実際にそれを実行する様は見ていられない。
 少しは周りのことも考えてほしいものである。
 やはりこいつと食事などするものではないな。

 ダンからそっと目を逸らし、ミスラちゃんに向き直る。

「ミスラちゃん、考え直した方がいいよ。 きっとお腹壊しちゃうよ」

 ダンの醜悪な様を見て、顔を青くするミスラちゃん。

「むむ……わかったのじゃ…… 確かに言われてみれば、こやつのウインナーはやけにネトネトしている気がするのじゃ……」

「ニアさん!ワタクシの話聞いてまして!?」

 なんだかティーナが騒いでいるが何も聞いていなかった。

「えと……なんだっけ?」

「はぁ……しょんぼりですわ……」

 ティーナがしょんぼりしてしまったことに罪悪感を覚える。
 しかし、僕は悪くないはずだ。
 横で騒いでいたダンが悪いはずである。

「スタンピードの犯人が分かったんだよね……?」

 ティーナの様子を見ていられなくなったのか、ユーリが助け舟を出してくれた。

「そうなんですわ! ワタクシ、先ほどお手洗いで他の生徒が話していたのを聞いてしまいましたのよ!」

「なんでそんなこと生徒が知ってるのさ?」

 重要情報を生徒が知っていることに疑問を感じる。

「状況からそうとしか考えられないからですわ!」

「それで犯人は誰なの?」

 ユーリも気になっているのか、先を促す。

「――犯人はローレンス・ゲルシュタッドさんらしいですわ……!」

 言われてみれば、最近彼の姿を見ることはなくなった。

「それってお兄ちゃんが怒らせた人だよね?」

 僕が怒らせたとは心外だ。
 僕だって怒っているのだ。殺されそうになったことは未だに忘れていない。

「そうですわ! 皆さん思い出していただきたいのですが、ダンジョンで発生した爆発、以前に学園で多発した爆発事件と似ていませんこと!?」

 先ほどは他の生徒が話していたのを聞いたと言っていたが、あたかも自分が導き出したかのような言い草のティーナ。

「まあ、それだけでローレンスさんと結び付けるのは早計だと思うけど、確かに爆発って聞くとローレンスさんってイメージがついちゃってるよね……」

 ユーリの言う通り、生徒の八割は爆発という文字を見たらローレンスと答えることだろう。

「確かにそれだけで彼を犯人と断定することはできませんわ! でも、ダンジョンで彼の私物が多数散乱していたのを複数の生徒が見ているらしいんですの!」

「それは……決定的だね……ローレンスさんは学園での目撃情報はなかったってことだよね?」

 確かにアリバイさえあれば、私物があったからといって捕まることはないだろう。

「そうみたいですわ!」

「目撃したことを話せば、自分も共犯と疑われると思ったんじゃないかな……」

 僕が根拠もない推測を口にする。

「それも否定できないよね…… しかも結構他の生徒から恨みを買っていたみたいだし敢えて言わなかったとかもあるかも……」

 ユーリも僕の意見に同意する。

「ワタクシも恨みっぱなしですわ! でも冤罪だとしたら可哀そうですわ!」

「ま、まあ騎士団がそう判断したってことは、冤罪という可能性は低いんじゃないかな……?」

 僕は慌てて取り繕う。
 何故ならここまで他人事のように聞いていたが、僕は知っているのだ。
 彼が無実だということを。

 言うまでもなく、ダンジョン爆破事件及び連続学園爆発事件の真犯人は僕なのだ。

 ただし、ダンジョンに彼の私物が落ちていたことに関しては僕は知らない。
 もしかしたら、爆発により僕のリュックが壊れてしまったことに関係があるかもしれないが、確証はないので検討の余地はないはずだ。

 そうは言っても彼だってアーサーには及ばずとも少なからず悪行を重ねてきたのだ。ふさわしい末路と言えるだろう。
 死ぬわけではないのだ。生きてさえいれば良いことがあるよ、きっと。

 ……これが噂に聞くざまぁというものなのだろうか。

 しかし、僕はローレンス君に何かをされたわけではない。
 確かに殺されそうにはなったが、それだけだ。
 実害があったわけではない。
 それでもざまぁに分類されるのだろうか。

 もしかすると、彼はとてもかわいそうな人なのかもしれない。

 まあ彼のことはもう忘れよう。
 きっと今後会うことはないだろうし。

 そんな感じでモンスタースタンピード事件は幕を閉じたのだった。

 ちなみにミザリーについては、人族を滅ぼすと言い出してからもう関わりたくないと思っていたのだが、ちょくちょくと顔を出しては僕によくわからない話をしてはすぐにいなくなるという謎の行動を繰り返していた。
 上層部が動きがどうとか、連絡が取れなくなったとか焦ったように言っていた。
 ミザリーが何の組織に所属しているのかは知らないが、僕を巻き込むのはやめてほしいと思う。
 彼女の様子から厄介事の臭いしかしない。

 しかし、入学してからこんなことばっかりだ。いや、入学する前もか……。
 そろそろゆっくりしたいものだ。

 そうだ!シアちゃんとミスラちゃんを誘って温泉にでも行こうかな。
 ……楽しみだ……ふふ……
 ムクムクと紳士度が上昇しているのを感じる。
 どうしてかな……僕はただ旅行に行きたいだけなのに……。
 ともかくカメラのメンテはしっかりとしておくべきだな……。
 予備も持って行った方が良いだろう。壊れてしまったら大変だからね。
 複数持って行って用途を使い分けてもいいな……。
 ふふ……ふふふ……ふふふふふ……

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