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五章
第68話 国宝級のアーティファクト
しおりを挟む新しい妹であるミスラちゃんを迎え入れ、とても充実した日々を送っていたのだが、僕の心はぽっかりと穴が開いたように満たされることはなかった。
そう、フランちゃんがいないのだ。
シアちゃんとミスラちゃんは最高の妹であることは間違いない。
少し暴力的なところはあるけれど、そこに不満はちょっとしかない。
だから、二人だけじゃ足りないということもないのだが、妹は何人いても困らないし、何人もいた方が嬉しいのだ。
それにシアちゃんとは今は離れ離れになってしまっているので、僕の心はやはり満たされることはなかった。
フランちゃんとは未だに話せてはいない。
僕が颯爽と助けに入ったのだから、向こうから話しかけて来ても良いと思うのだけど、待てど暮らせど僕に擦り寄って来る様子がないのだ。
その上、事あるごとに僕が彼女の視界に入るところに立ち尽くしていると、僕のことを不審者のような目で見てくる気がするのだ。
ピンチを救ったヒーローに対して、そんな失礼なことを思っているなどありえない。
確かに最後は騎士団長を名乗る不審者に全て持っていかれてしまったけど、僕の登場がなければ、彼らの命はなかったはずである。
きっと僕も疲れているのだろう。どうしても暗い考えになってしまう。
そんな感じで話す機会を失ってしまったのだ。
なので、今はフランちゃんの部屋にお邪魔している。
話すきっかけがないのなら作ればいいのである。
彼女の趣味嗜好を知るには部屋を調べるのが一番である。
会話を続けるコツは入念なリサーチが重要なのだ。
ちなみに今は授業中なので、安心して探索できるのだ。
よしよし、まずはそうだな……。枕の匂いから確認してみよう。
寮の部屋は二人部屋なので、事前の覗きでどちらにフランちゃんが寝ているのかは確認済みだ。
「ふーむ!!フローラル!! フランちゃん!フランちゃん!ふーむ!はむはむ!!甘露!!甘露!!はぁぁ気持ちいい!!」
ベッドに潜り込み、フランちゃんの枕に舌鼓を打つ。
「はぁはぁ……溶け合っちゃうぅ……」
まるでフランちゃんと一体になっているような感覚に僕の紳士度が上昇を続ける。
一通り堪能した後は風呂場に向かう。
「ふーむ……どれどれ……」
風呂場に足を踏み入れ、洗面台にある歯ブラシを見つけた。
僕の目の端がキランと光る。
「ふーむ!!いいでしょう!!磨きましょう!!」
フランちゃんの歯ブラシは……こっちだ!!
先ほどベッドで匂いを覚えたので、どちらがフランちゃんの歯ブラシかは容易に判別ができる。
シャコシャコシャコシャコ
ちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱ
舌苔も磨いちゃう!!
ゴシゴシゴシゴシ
「おいちぃぃいいいい!!!」
フランちゃんの味を堪能して大満足だ。
コッソリと元にあったところに戻しておく。
感激だ……!
これで僕とフランちゃんは口腔内細菌をトレードできたのだ。
しかし、こんなものはただの前菜でしかない。
むふふ……お次はメインディッシュだ!
制服のネクタイを締め直してブレザーを翻し、ターンを決める。
こいつは、はっきりと言葉にするのは憚られる。
言うなれば、人類が施行の果てに創り上げた三角形のアーティファクトのことだ。
それは、タンスの中に大事に隠されていることだろう。
寝室に向けて足を運ぼうとすると、僕の視界の端にチラリとチェック柄の何かが映った。
「……っ!!!!!?????? は……は……はぁ……はぁ……」
心臓が痛いぐらいに高鳴る。
とても息苦しい。自然と息が荒くなってしまう。
ゆっくりと視線を移動させる。
そして、僕は見た。国宝級のアーティファクトの存在を。
「し、使用済みパンティー!! ああぁぁあああぁぁぁああああ!!」
洗濯かごに鎮座するそいつに目が釘付けになる。
目玉が飛び出そうになるのを必死に手で押さえつけるが、とても抑えられない。
飛び出た目玉を追いかけるように体が動き出し、それに飛び付く。
「こ、これは……!何だこの汚れは……!!??スーハースーハー!!」
パンティーを鼻の穴に突っ込み匂いを堪能する。
もう辛抱溜まらん!!
「もごもごもごもご!!もがぁぁぁあああああ!!!」
口に放り込んでフランちゃん味を堪能する。
こんなにも僕の紳士度を高めさせて、フランちゃんは一体何を考えているのだ!!
「お主よ、何をしておるのじゃ?」
「……ぶほぉおおお!!!???」
急に声をかけられ、心臓が跳ねる。
驚きのあまり口に含んでいたパンティーを勢い良く吐き出してしまった。
僕のパンティー!!
慌てて再び口に含もうと手を伸ばして気付いた。
「いやぁぁぁああああああ!!!」
ミスラちゃんが隣で怪訝な顔をして僕のことを見ていた。
「騒がしい奴じゃのぅ……」
「み、ミスラちゃんどうしてここに……?」
「我のしもべであるお主が授業に顔を出さぬから探しに来たんじゃろうが」
「そ、そうなんだ…… よく場所が分かったね……?」
パンティーを自分の体で隠すように位置取る。
「お主の気配は、なんかドロドロとして分かりやすいからの!」
得意げにドヤ顔をしているのは可愛いと思うのだが、僕の気配がドロドロという発言はちょっと気に掛かる。
僕の気配はもっと爽やかであるべきだ!
発言の撤回を要求する!
しかし、今はどうにかして僕の行動を誤魔化さないといけない。
最愛の妹であるミスラちゃんとはいえ、全てをつまびらかにすることはできないのだ。
「い、今僕は忙しいからさ、先に戻っててよ……」
僕の背後で怯えているフランちゃんのパンティーに近付こうとジリジリと後退る。
一見すると僕は動いていないように見えているだろうが、実はアハ体験ぐらいの速度で動いているのだ。
「何をしておったのじゃ……? 見たところお主の部屋じゃないようじゃが?」
まずい!なんとかごまかすのだ!
僕のしていた行為は神聖なものではあるが、薄汚れた獣欲と勘違いされやすいのだ。
地面に落ちたパンティー型のアーティファクトをポケットにサッとしまい込む。
「ちょっとね……まあ……大事なことをね…… じゃあ早く出ていこうね……」
訝しげに僕を見るミスラちゃんの背中を押して部屋から出そうとする。
「やっと見つけたっすよ!」
くそ!次から次へと……!僕の崇高な仕事を邪魔するんじゃない!
「ミザリー……今はちょっと取り込み中というか……」
「なんでいつも自分を避けるっすか!ニアさん! ほんとやばいんすよ!」
スタンピード騒動の後、何度も僕の前に現れては、やばいとか何とかに騒いで僕の身の安全が脅かすからに決まっている。
もう厄介ごとに巻き込まれるのは勘弁なのだ。
「誰かいるのかい!さっきから騒がしいよ!」
部屋の扉を勢い良く開けた寮母のおばちゃんが現れた。
僕は咄嗟にフランちゃんのベッドに潜り込む。
「我はしもべを連れてこようとしただけじゃ!」
「授業はどうしたんだい!さっさと行きな! ……というかあんたは何者だい!?学園の生徒ではないね!?」
ミザリーは学園の制服を身に着けていない上に、怪しい黒ローブを纏っているので、怪しまれているようだ。
「ち、違うっす!自分はニアさんの知り合いっす!」
ばか!おばか!
どうして僕を巻き込もうとするのだ、こいつは!
確かにフランちゃんの部屋に侵入しているのは僕の意思ではあるのだが、そもそもこいつが来なければ寮母に勘付かれることはなかったはずだ。
ならば、僕の存在を黙して墓場まで持っていくべきだろう。
「いいから来な! どんな理由があろうと部外者がこの学園に入ることは許さないよ!!」
「ニアさん!ミスラ様!助けてくださいっすぅ~!」
ミザリーが寮母のおばちゃんに連行されていくのを見てホッと息を吐く。
とりあえずは見つからずに済んだ。とっとと撤収しよう。
後は連れていかれたミザリーが余計なことを喋らないように祈るのみだ。
もし、侵入が疑われたら断固として無関係だと主張しよう。
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