69 / 77
五章
第69話 校則違反の罰則が重すぎる
しおりを挟む僕は現在、学園長室に来ていた。
来ていたというより、連行されたと言ったほうが表現としては正しいだろう。
フランちゃんの部屋に侵入したことが学園長の耳に入ったのだ。
僕が侵入した痕跡は完璧に消しているので、ミザリーの証言によるものだろう。
もしくは僕がパンティーを盗んだことが気付かれたか。
しかし、後者の可能性はないと僕は踏んでいる。
いっぱいあるパンティーの一つや二つ無くなっても気にする人はいないのだ。
そもそも盗難の可能性を考えるより先に自分で紛失したと考える方が自然だろう。
だから大丈夫大丈夫……。
僕が社会的に抹殺されることはないはずだ……。
「ニア・シスコーン、ここに連れてこられた理由はわかるな?」
「全くわかりませんけど…… 僕は担任の教師に乱暴に引きずられてきただけだし……」
「ほう…… この状況で文句を言うか……」
学園長アリア・トードンが僕に圧をかけてくる。
僕だって文句の一つも言いたくなるというものだ。
朝、真面目に授業を受けようと静かに席に座っていたのだが、担任の教師が急に喚き散らして、この学園長室へ連行されたのだ。
「……急に学園長に呼び出されて混乱しているというか……」
強制的に連れてこられたことはとても腹立たしいが、下手に刺激して状況が悪くなるのは避けたいので、大人しくしておこう。
「ふん……まあいい…… 貴様には女子寮に侵入したという疑いがかけられている。 これは知っての通り明確な校則違反だ」
「……なんのことだか……」
「学園長に嘘を付くのも校則違反だ」
そんな馬鹿みたいな校則など聞いたこともない!
校則を確認したことはないが、そんなものがあって堪るか!
「横暴だ!!学園長だからってなんでもやっていいわけじゃない!!」
「学園長に楯突いた罪で死刑だ」
死刑だと!?
職権乱用しすぎだろう!
如何に学園長と言えども生徒の命を奪う権利などないはずである!
でも流石に死刑はやめてほしいな……。
「や、やだなぁ…… 学園長先生に逆らうわけないじゃないですかぁ……」
「散々舐めた態度をとっておいて今更媚を売っても遅いぞ」
僕を試すのは本当にやめてほしい。
僕の怒りの沸点は低いのである。
怒るなと言われても努力ではどうにもならないのだ。
「い、いやぁ……申し訳ないというかなんというか、死刑だけはやめてほしいなぁみたいな……」
「ふん……だったら正直に答えることだな。 貴様は女子寮に侵入したな?」
「だったらどうしようと言うんですか……?」
僕は最後の最後まで明言はしないぞ。
相手の心証は悪くなるかもしれないが、僕の名誉が掛かっているのだ。
「校則違反で罰則を与えることになる。 貴様の態度次第では退学になるか、死刑になるか…… よく考えて発言するんだな」
「………………」
その二択しかないのか!
退学は仕方ないが、死刑になることだけは勘弁してほしい。
というか校則違反で死刑なんておかしいだろ!
「女子寮に侵入して何をしようとしていた?」
侵入した前提で話を進めないでほしい。
「……どうして侵入したと思うんですか?」
「タレコミがあったからな。 貴様もよく知っている人物だと思うがな?」
ミザリーのことだろう?
生徒の証言より、身元のしれない部外者の証言を信じるのか!
しかし、僕はそんな余計なことは言わないと学んでいるのだ。
こんなところで、僕に容赦なく鎌をかけてくる弟の存在が活きてくるとは思わなかった。
「知りませんよ!! 誰ですかそんな失礼なことを言う人は!!」
「……そうかそうか。 まあ、そいつは身元の知れん不審者だったからな。適当なことを言っていたのかもしれん。 だが、貴様の名前を知っていたのは事実だ」
「死刑にしたんでしょうね!! 僕は大事な学園の生徒だというのに簡単に死刑を宣告されているというのに!!」
「死刑にはしてないが、騎士団に引き渡しておいた。 しかし、まあ……貴様の言うことは尤もだ。 優秀な魔法使いの卵を死刑するのは私の本意ではない」
だったら死刑になんかするな!
僕を弄ぶのはやめてくれ!
「アーサーも貴様を高く評価していたようだしな」
アーサーの奴がなんだというのか。
いつから奴は僕を評価する立場になったというのだ。
静まりかけていた怒りが沸々と蘇ってくる。
僕のフランちゃんを姑息な手段で奪うだけに飽き足らず、あろうことか僕を評価するとは……どれだけ僕を下に見れば気が済むのだ!
「……何が言いたいんです……?」
不機嫌さを隠そうともせずに問う。
「今回の件はなかったことにしてやっても良い」
なんと!この短時間に心変わりしたというのだろうか。
だとしたらさっさとお暇しよう。
「ありがとうございます。ではそういうことで」
そそくさと部屋を後にしようとすると、肩をガシリと掴まれる。
痛い!!力加減を考えろ!!
「まだ話は終わっておらん! 戻れ!」
「……なんでしょうか?」
なかったことにすると数秒前に言ったばかりなのに、また心変わりしたというのか。
流石に気難しすぎではないだろうか。
きっと友だち少ないんだろうな。
「条件次第ではと言った」
「言ってません」
言っていなかったはずだ。
「今言った。 ……私に歯向かうのか?」
横暴だ!!
どうせ次の瞬間には死刑とか言い出すのだろう。
死をチラつかせて脅してくるのはあんまりじゃないか!
「条件とは何でしょうか」
「よろしい。 条件は、学園の一大イベントである闘技大会の新人戦で優勝することだ」
僕が素直に話を聞く姿勢になったのを確認すると、満足そうにそんなことを言い出す。
僕は水魔法と多少土魔法を使えるぐらいで、戦闘なんてからっきしできないのだ。
「無理です」
「生徒の実力を見破れない私ではないぞ? 新入生の中で私の正体に気付いていたのは貴様だけだったのだからな」
だとしたら、この学園長の目は相当な節穴だろう。
入学試験の時に肩もみをしたオヤジが実は学園長だったなんて、入学式でネタ晴らしをされるまで全く気付いていなかったのだから。
「学園長の目は節穴ですね……ぶへぇっ!」
ビンタされた……。
「……ダンジョンでは大活躍だったらしいな?」
なんだか格好を付けているようだが、本当に僕の実力を見抜いているとは思えない。
確かに僕の真の実力は相当高いとは思うが、未だ覚醒の時を迎えていない。
僕は大器晩成型なのだ。
学園長の正体を見破ったことを理由に、僕の実力が高いと思っているならそれは大きな勘違いだ。
本当に恥ずかしいぐらいの勘違いだ。
「ふふ……」
勘違いしているにも関わらず、全てを見抜いている風に格好を付けている学園長が可笑しくて思わず笑ってしまった。
「クク……! やはり実力を隠していたか……!」
そんな僕の様子を見て更に勘違いを加速させる学園長。
「ふふ……ふふふ……ふふふふ……」
ちょっと待って……!ふふ……!
そんなに勘違いしちゃって……!!ふふふ……!
どうしよう……ふふ……。
このままじゃ本当に闘技大会に参加させられてしまう……ふふふ……。
ふふ……ふふふ……ふひぃ!!
「入試の成績トップのアーサーですら貴様に勝つことはできないと言っていたからな! 本当にそこまでの実力があるのか、私は興味がある! 貴様の隠された実力を証明して見せろ!」
「ふふ……ふふふ……ふふふふふ……」
なんだか僕が笑いを堪えている間に面倒なことになってしまった。
どうせ、大会なんかに出てもボロ雑巾になっておしまいだ。
もう逃げちゃおうかな……ふふふ……!ふひ!ふひぃ!!
0
あなたにおすすめの小説
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる