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夜の小窓と睡眠薬 Bルート
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俺はと言うと、受験を越え、大学生となった。
しかし残念ながら親友君は居なくなったし、もう一人の親友である男、Hも別の大学へと行ってしまった。
正真正銘陰キャボッチの完成である。
こんなヘンテコな趣味のおかげで大学デビューは大コケ。服はダボダボ、髪はボサボサの、文字通り根暗が誕生した。
そしてそんな記念すべき年から一年が経過し、俺は大学二年生となった。
講義を終え、床屋に行った俺は、帰宅してマンションの二階の自室にて窓から夜空を眺める。
結局入学してから友達という友達はほとんどできなかった。少し話せる、趣味友達なるものもできはしたが……やはり、親友君とHほどの友達というのは、一人も居なかった。
壁にかかっているカレンダーをじっと見つめる。
今日は七月十三日。親友君の……命日。
そして同時に、俺の誕生日でもあった。
SNSを開く。『誕生日おめでとう』なんて通知は、一切なかった。Hからも送られてこない。
まあ、何はともあれ俺はめでたく二十歳……酒、タバコができる歳になったのだ。
すぐそこのコンビニで買ってきたセブンスターの箱を開ける。一本の白い棒に、俺の目は釘付けになる。
思い切ってライターで日をつけ、咥えてみる。
その瞬間、ゲホッゲホッと大きくむせた。
しかも窓がしまっていることを忘れていたため、急いで開ける。肺を痛める煙が天に昇っていく。
「……」
俺はその様子をじっと見つめる。一口一口、大きくむせながら、煙を吐き出していく。
そしてあっという間にもう吸えないくらいまでタバコが小さくなった。俺は用意していた灰皿にグリグリと先端を押し付け、そのまま灰皿に入れる。
「……まずいじゃねえか」
ぼそっとつぶやく。あいつが美味いって言うもんだから、てっきり俺の口にも合うのかと思っていたぜ。
持病の喘息も相まって、咳が止まらない。
苦しみをかき消すように、好物のエナジードリンクを喉に流し込む。
しかし炭酸の刺激が逆効果となり、さらに咳が出る。
でもだんだんと咳は落ち着いてきて、心が安らいでいく。……やはり、俺にはタバコなんかよりカフェインのほうが似合ってるな。
『依存症がよぉ』
ふと脳内でそんな声が聞こえてくる。ああ、わかってるさ。依存していることなんて。
心のなかで返答して再び夜景を見つめる。住んでいる場所が閑静な住宅地であるため、明かりは少なく暗闇が窓の外に広がっていた。
夏にしては寒すぎる風が部屋を通り抜ける。
にしても、この一年間つまらなかったな、と十九歳を振り返る。
友達と遊びに行くなんてイベントもなく、ただただつまらない毎日を送っていた。
偶にHと遠出するくらいしか、することがなかった。
最近感じるのだ。こんな生活より、楽しいことは空に浮かんでるんじゃないかなって。
机に放置してある一つの箱を手に取る。中身は、大量の咳止め薬。そんな箱が、なんこも、なんこも散乱している。
この薬はいわゆるオーバードーズに使われる薬だ。……親友君とB君は、これを使って薬物自殺した。
寂しい。心のなかで蠢く感情のまま、行動を開始する。ずっと寂しかった。親友君が居なくて。本当に寂しくて、こんな世界に興味がなくなった。だから、親友くんが行った世界に、興味を持ったのだ。
コップに水を入れ、ある薬を全部ティッシュの上に出す。
再度夜空を見上げ、覚悟を決める。
――俺もお前と同じ景色を見に行くぜ、親友君
夜空に言葉を残した瞬間、突然一本のコールがけたたましく鳴り響いた。
気持ちを崩されたことを恨みながら電話に出る。
表示名は、『H』
「もしもし」
『誕生日おめでとう』
「……遅いぞ。もうそろそろ日が変わるというのに」
『え、そうか。まあ気にしたら負けだろ』
いつものおちゃらけたテンションで話すH。変わらないもう一人の親友に、思わず笑みが出る。
「ありがとう。プレゼントは?」
『この電話だが?』
「……今度ラーメン奢れ」
『はいはい』
はぁ、とため息をつく。
「なあ」
再び暗闇を見つめる。
『ん~?』
「最近、生きる意味ってのがわからなくなってきたんだよなあ」
コップ片手に、そんなことを愚痴る。
本当に意味がわからないといった様子で、Hが返してくる。
『何いってんだ、お前らしくない。それに生きる意味なんて、美味いメシ食ってりゃそれでが意味になるだろ』
「……」
大きく目を見開く。数年前、親友君と山にいたときの情景が広がっていた。
フッと小さな笑いをこぼし、直後大きく声を出して笑った。
『うるさいぞ、時間考えろ』
「だったらこんな時間にかけてくるな」
一通り笑った後落ち着いて会話を再開する。
「そっか……そうだな。美味い飯食えたら、十分だよな」
『わかったか。にしてもなんでお前そんな急に病み散らかしてるんだ』
「……色々、あってねえ」
該当で照らされた夜道を見下ろす。
『ふーん。まあ、興味ないし、聞かないでおこう』
「ふっ。ありがたいぜ」
夜空に満足した俺は、窓を締めた。そして大きく息を吸って、Hに言ったのだった。
「さ、ラーメン食いに行こうぜ、今から」
『……いいじゃん。じゃあ、○○駅集合な』
直後、通話が切れた。
……まあ、美味い飯って、生きる意味になるよな。そうだろ?
俺は昔の自分にそう聞いた。
心のなかで、誰かが首肯する。
肌寒い部屋で、俺は薄めのダウンを羽織って、外へ飛び出した。
しかし残念ながら親友君は居なくなったし、もう一人の親友である男、Hも別の大学へと行ってしまった。
正真正銘陰キャボッチの完成である。
こんなヘンテコな趣味のおかげで大学デビューは大コケ。服はダボダボ、髪はボサボサの、文字通り根暗が誕生した。
そしてそんな記念すべき年から一年が経過し、俺は大学二年生となった。
講義を終え、床屋に行った俺は、帰宅してマンションの二階の自室にて窓から夜空を眺める。
結局入学してから友達という友達はほとんどできなかった。少し話せる、趣味友達なるものもできはしたが……やはり、親友君とHほどの友達というのは、一人も居なかった。
壁にかかっているカレンダーをじっと見つめる。
今日は七月十三日。親友君の……命日。
そして同時に、俺の誕生日でもあった。
SNSを開く。『誕生日おめでとう』なんて通知は、一切なかった。Hからも送られてこない。
まあ、何はともあれ俺はめでたく二十歳……酒、タバコができる歳になったのだ。
すぐそこのコンビニで買ってきたセブンスターの箱を開ける。一本の白い棒に、俺の目は釘付けになる。
思い切ってライターで日をつけ、咥えてみる。
その瞬間、ゲホッゲホッと大きくむせた。
しかも窓がしまっていることを忘れていたため、急いで開ける。肺を痛める煙が天に昇っていく。
「……」
俺はその様子をじっと見つめる。一口一口、大きくむせながら、煙を吐き出していく。
そしてあっという間にもう吸えないくらいまでタバコが小さくなった。俺は用意していた灰皿にグリグリと先端を押し付け、そのまま灰皿に入れる。
「……まずいじゃねえか」
ぼそっとつぶやく。あいつが美味いって言うもんだから、てっきり俺の口にも合うのかと思っていたぜ。
持病の喘息も相まって、咳が止まらない。
苦しみをかき消すように、好物のエナジードリンクを喉に流し込む。
しかし炭酸の刺激が逆効果となり、さらに咳が出る。
でもだんだんと咳は落ち着いてきて、心が安らいでいく。……やはり、俺にはタバコなんかよりカフェインのほうが似合ってるな。
『依存症がよぉ』
ふと脳内でそんな声が聞こえてくる。ああ、わかってるさ。依存していることなんて。
心のなかで返答して再び夜景を見つめる。住んでいる場所が閑静な住宅地であるため、明かりは少なく暗闇が窓の外に広がっていた。
夏にしては寒すぎる風が部屋を通り抜ける。
にしても、この一年間つまらなかったな、と十九歳を振り返る。
友達と遊びに行くなんてイベントもなく、ただただつまらない毎日を送っていた。
偶にHと遠出するくらいしか、することがなかった。
最近感じるのだ。こんな生活より、楽しいことは空に浮かんでるんじゃないかなって。
机に放置してある一つの箱を手に取る。中身は、大量の咳止め薬。そんな箱が、なんこも、なんこも散乱している。
この薬はいわゆるオーバードーズに使われる薬だ。……親友君とB君は、これを使って薬物自殺した。
寂しい。心のなかで蠢く感情のまま、行動を開始する。ずっと寂しかった。親友君が居なくて。本当に寂しくて、こんな世界に興味がなくなった。だから、親友くんが行った世界に、興味を持ったのだ。
コップに水を入れ、ある薬を全部ティッシュの上に出す。
再度夜空を見上げ、覚悟を決める。
――俺もお前と同じ景色を見に行くぜ、親友君
夜空に言葉を残した瞬間、突然一本のコールがけたたましく鳴り響いた。
気持ちを崩されたことを恨みながら電話に出る。
表示名は、『H』
「もしもし」
『誕生日おめでとう』
「……遅いぞ。もうそろそろ日が変わるというのに」
『え、そうか。まあ気にしたら負けだろ』
いつものおちゃらけたテンションで話すH。変わらないもう一人の親友に、思わず笑みが出る。
「ありがとう。プレゼントは?」
『この電話だが?』
「……今度ラーメン奢れ」
『はいはい』
はぁ、とため息をつく。
「なあ」
再び暗闇を見つめる。
『ん~?』
「最近、生きる意味ってのがわからなくなってきたんだよなあ」
コップ片手に、そんなことを愚痴る。
本当に意味がわからないといった様子で、Hが返してくる。
『何いってんだ、お前らしくない。それに生きる意味なんて、美味いメシ食ってりゃそれでが意味になるだろ』
「……」
大きく目を見開く。数年前、親友君と山にいたときの情景が広がっていた。
フッと小さな笑いをこぼし、直後大きく声を出して笑った。
『うるさいぞ、時間考えろ』
「だったらこんな時間にかけてくるな」
一通り笑った後落ち着いて会話を再開する。
「そっか……そうだな。美味い飯食えたら、十分だよな」
『わかったか。にしてもなんでお前そんな急に病み散らかしてるんだ』
「……色々、あってねえ」
該当で照らされた夜道を見下ろす。
『ふーん。まあ、興味ないし、聞かないでおこう』
「ふっ。ありがたいぜ」
夜空に満足した俺は、窓を締めた。そして大きく息を吸って、Hに言ったのだった。
「さ、ラーメン食いに行こうぜ、今から」
『……いいじゃん。じゃあ、○○駅集合な』
直後、通話が切れた。
……まあ、美味い飯って、生きる意味になるよな。そうだろ?
俺は昔の自分にそう聞いた。
心のなかで、誰かが首肯する。
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