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しおりを挟むアリスは全力で駆けていた。
「折角生まれ変わったっていうのに何が悲しくて前世みたいに野郎に絡まれて、つるんで愛想笑いしてないといけないのか! ……今世こそは、可愛い女の子とお近付きになってみせるんだ!」
バタン!
どれぐらい走っただろう。激しく息を切らせてドアを開けて自室に駆け込む。
「……ふぅ、ここまできたらもう大丈夫」
随分走ったのでブラウスが汗でベタベタして張り付いていた。
「……ベタベタして気持ち悪い!」
汗と息苦しさと気持ち悪さを何とかすべく上着を脱ぐとスカートを下ろす。ブラウスの隠しボタンを一つづつ外していく。ふと目の前の鏡に目が行く。とても可憐で理想の女の子の姿がそこにあった。
汗ばんだ肉体に乱れた衣服と熱い吐息。薄暗い室内が鏡の中の少女を更に背徳的に演出する。
ほんの少し指を伸ばせば届きそうな……触れるか触れないかの微妙な距離。
ごくり
あと少し……
鏡の中にいる冷ややかな目をした少女と目が合った気がする。
「……あ!」
さっきまで感じた、えもいわれぬ高揚感が、それを遥かに上回る罪悪感によって上塗られていった。アリスになった若者は恥ずかしさに耐えきれずにそこから後ろを向くと倒れ混んでしまった。
「はぁはぁはぁ……ダメ!」
自分なのに自分のじゃない。それが重くのし掛かる。
「女神様……僕、どうしたらいいの?」
急に瞼まぶたに重石が乗った様に感じ、意識を手放すと暗転する。
目が覚めたら自室ではない天井が目に映る。それに対しての感情はわいてこなかった。
「アリスさん良かった。貴女が部屋で倒れていたのを女子寮担当のこのミケーネさんが見つけてくれて……よかったわ!」
自分の側から、何時もは感じない上品なコロンの香りが漂っている。
「それは……どうもありがとうございま……」
そこにいたのは華奢な医務室のココア先生、の後ろに隠れきれていない大きな影。
何もかもが意識と共にゆっくりと落ちていく。
「今日はゆっくり休むといいわよ」
どこかで野太い声で泣く猫みたいな声がした気がする。
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