一瞬で婚約破棄されたけど、帝国で元気に魔女やってますよ。

奈加末 奏哉

文字の大きさ
1 / 6
帝国への旅立ち 編

また一瞬で婚約破棄されました...

しおりを挟む
「もういい、お前との婚約は破棄させてもらう!」

 見るだけで鬱陶しいほどの、キラキラとしたアクセサリーに身を包んだ若い男が声を荒らげていた。

 すると、どうやら一緒に口論をしていたらしい小柄な女はゆっくりと立ち上がった。

「あーそうですか、どうでもいいです。勝手にしてください。」

女はそう言い放ち、男を激昂させると、足早に部屋を出ていった。

 後ろの部屋でヒステリックに喚き散らす男を無視し、女はすぐに荷物をまとめて屋敷を出ていった。

 初めは勢いよく歩いていたが、徐々に足取りが弱々しくなり、しまいには頭を抱え、顔面を蒼白くしてうずくまっていた。

「どうしよう、お父様に殺されるううぅぅ!!」

 昼間の街に絶叫が響いた。

---------------------------------------

~1日前~

「レリシア、これが最後のチャンスだ。分かったな?」

 自身の父であるヴァインにそう問われたレリシアは口をとがらせ、不服そう頷いた。

 それを見たヴァインは深い溜息をつき、白髪の混じり始めた頭を抱えた。

「全く、お前は何度婚約を破棄されたら気が済むのだ。」

 その言葉にすかさずレリシアは反論する。

 「それは違いますお父様。これまでの婚約破棄は、全て相手の殿方に問題がありました。」
 
 この言葉は事実なのだが、あまりにも婚約を破棄されすぎていたので、ヴァインは聞く耳を持たなかった。

 悔しさにレリシアは唇を噛んだ。

「何度同じことを言っているんだ?初めのうちならまだ分かるがな、9回だぞ?9回?」

「......だって」

「だってじゃない。今回の婚約を取り付けるのだって父さんがどれほど苦労したか知っているのか?これがお前に与える最後のチャンスだ。」

 ヴァインは厳しい言葉を突きつける。

 レリシアを心配しているからこそ、その言葉は彼女を突き放すものだった。

「............わかりました。」

 叱られて涙目になりつつも、レリシアは震える声で返事をした。

「今回はどこへ行けばいいのですか?」

 そう聞くと、ヴァインは苦い顔をして目を泳がせた。

(嫌な予感がする......)

 そう思っていると、ヴァインはレリシアに今回の婚約相手を伝えた。

「それなんだが......クリル家のご長男の所だ...。」

 嫌な予感は、見事に的中した。

「ク............リ............ル...............?」

 レリシアは目眩がした。

 クリル家の次期当主であり、長男のクリル・ダーラは、庶民階級の間でも話題になるほどの悪名高い貴族である。

 常に他者を見下し、傲慢で、金遣いも荒い。

 レリシアが最も嫌悪する人種だった。

「冗談ですよね?お父様???」

 父は目を閉じ、何も言わない。

 レリシアは膝から崩れ落ちて、絶望したような表情を浮かべている。

(あぁ、私の人生...終わった...。)

 しかも、レリシアはヴァインにこれが最後のチャンスだと言われたことも思い出した。

 しばらく考えた末に、レリシアはもう全てを諦め、自暴自棄になる道を選んだ。

「あは、あははは、あははははは」

「ど、どうしたんだレリシア?」

 ヴァインがドン引きしていたが、そんなはもう関係ない。

(そうよ、相手が何か言ってきても言い返したら良いだけじゃない。)

 令嬢としての思考を完全に放棄し、レリシアは覚悟を決めた。

「それで?いつ行けばいいのですか?」

「あ、あぁ1週間以内とは言われているが...。」

 もっと駄々をこね、行きたくないと喚き散らすと思っていたヴァインは驚いていた。

「そうですか。では今。」

「何だって?」

「今です。今すぐ向かいます。」

「.........は?」

 ヴァインの困惑を尻目に、レリシアは側近のメイドに指示を飛ばした。

「エルザ、今すぐ部屋の荷物をまとめて頂戴!」

「かしこまりました。」

 すると即座にエルザと呼ばれたメイドとレリシアは部屋を出ていった。

 呆気に取られ、目を剥いて驚いていたヴァインだったが、しばらくすると深い溜息をついた。

「はぁ......胃が痛い。」

---------------------------------------

 そうして、レリシアはクリル家に向かった。

 しかし、早速のように結納金に文句を付けてきたクリル・ダーラと口論になり、また婚約を破棄された。

「どうしよう......胃が痛い............」

 そう呟きながらレリシア・シュヴァイレンは亀のような速度で家に帰るのだった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

処理中です...