コールドスリープから目覚めたら異世界だった……?

Chiyosumi

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第三章 魔獣狩り、のちダンジョン、ときどきドキドキ!?

第14話 いざ銅等級へ!

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 賢魔兎ワイズ・ラビットの一件で「ブレイブ・ハート」のメンバーと仲良くなったボクは、その後、度々彼らの魔獣狩りに誘われるようになった。
 今、ボクたちが主に狩っているのはE rank――鉄等級相当の狩猟対象魔獣だ。

 普段は「ブレイブ・ハート」のメンバーといっしょに森林鹿フォレスト・ディア怒れる猪アングリー・ボアなどを求めて森に狩りに出かけ、たまに魔野菜の上位種や魔獣がゴンサクさんの農地の近くに出現すればゴンサクさんからの依頼でそれを討伐しに行く。
 ボクは最近、そんな日々を過ごしていた。

 以前は週の大半をロイといっしょにクエストに取り組んでいたけど、今はロイとクエストをこなすのは週に1回くらい。
 あとは「ブレイブ・ハート」のみんなと過ごす時間が増えてきていた。

 ロイもまた自分が所属している「ナッシュ・ヴィレッジ愚連隊」のダンジョン探索に同行する機会が増えてきて、忙しそうにしている。
 それでも相変わらずロイは、ボクが「銀の乙女亭」のお手伝いをしている日には夕食を食べに来てくれていた。

 テミスは賢魔兎ワイズ・ラビットの肉を食べてLv12に上がると、すぐに銅等級へと昇格した。
 リーダーのアルトリウスもそれを追いかけるように銅等級に昇格し、「ブレイブ・ハート」のメンバーでまだ鉄等級なのは最年少の神官ラファエロ君だけになっていた。


 ボクたちは今日、兎狩りをした森よりも更に深い森の中で怒れる猪アングリー・ボアを狩りに来ていた。
 運悪く…… いや、運良く上位種の狂える猪ボア・ベルセルクが現れ、今はそいつと戦っている。

 狂える猪ボア・ベルセルクはD rank――つまり銅等級相当の魔獣で、ランス、テミス、アルトリウスの三人が銅等級である「ブレイブハート」にとってはちょうど良い対戦相手だ。

 狂える猪ボア・ベルセルク騎士職盾役のランスに突進攻撃チャージを仕掛けてくる。

 ――っドゴ!!! ガーンっ!!

 ランスは手に持つ盾でそれを受け止めたが、狂える猪ボア・ベルセルク突進攻撃チャージの全てを受け止め切れず、盾ごと弾き飛ばされた!

「ニコ! テミス! すまん、突破されてそっちに行った!」
「分かった! ボクがなんとかするよ!」

 ランスが突破され、狂える猪ボア・ベルセルクが後衛へと突っ込んでくる。
 でもランスが途中で勢いを止めてくれていたお陰でなんとかなりそうだ……

 ボクは手早く宙に六芒星を魔法の短剣アゾートで描き、呪文を詠唱する。

「混沌よ、原初の合力よ! 力の渦となりて、敵を沈めよ! 重力束縛グラヴィティ・バインド!」

 闇色の力が渦となって重力を生み、狂える猪ボア・ベルセルクの足を止める。

「せやっ! ――はっ!」

 ――ズバっ! ザシュっ!

 後衛のボクとラファエロ君を守ってくれていたテミスが、手斧と鉈の二連斬撃ツイン・スラッシュでダメージを与える。
 狂える猪ボア・ベルセルクは苦しみに呻いて「ブォオオっ!」と声をあげる。

「――っおぉらっ!!」

 ――ザクっ!!

 そこに前衛から急いで戻ってきたアルトリウスが、勢いそのままに突撃剣スラストで止めを刺す。
 アルトリウスは急所を的確に刺し貫いていたらしく、狂える猪ボア・ベルセルクは断末魔の声をあげることさえ出来ずに絶命した。

 以前は同じD rankの賢魔兎ワイズ・ラビットにてこずっていたボクたちも、今ではなんとかD rankまでなら対処できるようになってきていた。
 イレギュラーとかがあるとまだまだ分からないところもあるけれど、そろそろパーティーとしても銅等級扱いになり、ダンジョンにも潜れるようになるかもしれない。

 その時にも声をかけてもらえるように、ボクも早く銅等級に上がらなきゃ……

 賢魔兎ワイズ・ラビット戦の時に中級魔術が使えなくて困ったボクは、あの後、ケレブリエルさんに頼んで中級魔術を教えてもらった。
 重力束縛グラヴィティ・バインドは闇属性の中級で行使できるようになる重力魔術の一つだ。

 他にもボクは火属性の火炎爆裂撃ファイア・エクスプロージョン、風属性の矢除けの風域アヴォイド・アローズ、水属性の水流衝波アクア・ウェイブ、土属性の地陣障壁アース・ウォールなど、満遍なく全属性の中級魔術を習得していた。
 後は合成魔術さえ身に着ければボクも銅等級に昇格できそうだ。


 狂える猪ボア・ベルセルクを仕留めた後、神官職のラファエロ君は突進攻撃チャージでダメージを負ったランスを小回復術キュアで治療している。

 テミスは早速、狂える猪ボア・ベルセルクの血抜きと内臓処理の作業に取り掛かっていた。

狂える猪ボア・ベルセルク賢魔兎ワイズ・ラビットに負けないくらい美味い肉だ! 今夜はコイツで猪祭りだ!」

 と言っているテミスはすでに涎を垂らしている。
 よっぽど美味しいんだろう……

 今夜も楽しい夜になりそうだったけど、残念ながらボクは今日、「銀の乙女亭」のお手伝いの日だった。


 ボクたちは狩人ギルドに戻り、今回の狩りの報告を行い、解体スペースを借りて狂える猪ボア・ベルセルクの解体を行う。
 狂える猪ボア・ベルセルクは300㎏を優に超える大きな魔獣だったので、全員で手分けして解体を行った。

 さすがに狂える猪ボア・ベルセルクはパーティー全員で食べても余裕で余るので、自分たちで食べる分を除いた約200㎏は買取してもらい、素材の牙と皮も今回は現金収入が欲しいということで売却することになった。

 今回の収入は全体で約7,500MP。
 それを五人で割るのでボクの取り分は1,500MP。
 それに加えて狂える猪ボア・ベルセルクのバラ肉、ロース、もも肉をそれぞれ1㎏ずつもらうことになった。

 狩人のテミスが絶賛するほどの狂える猪ボア・ベルセルクのお肉である。
 きっとケレブリエルさんも喜んでくれるに違いない。


 ▼▼▼▼


 その日の「銀の乙女亭」の賄いメニューはボクが持って帰った狂える猪ボア・ベルセルクのお肉で作ったトンカツだった。
 エルフ料理でトンカツは不思議な感じがしたけど、どうやらケレブリエルさんとゴンサクさんは友人らしく、これはゴンサクさんから教えてもらったヤマト料理だそうだ。

 もしかしたら心優しいケレブリエルさんはゴンサクさんからボクがヤマト国出身らしいという話を聞いて、ヤマト料理のトンカツを作ってくれたのかもしれない。
 肉叩きで丁寧に叩かれた狂える猪ボア・ベルセルクのロース肉はフワフワで、衣はサクサク、溢れる肉汁の旨味が絶品だった。

 ソースにはゴンサクさんから譲ってもらった醬油も入っていたらしく、少し懐かしい味がした。

 ボクがトンカツを夢中で食べていると、ケレブリエルさんが声をかけてくる。

「ねえ、君。明日は冒険者も『銀の乙女亭』のお手伝いもお休みの日だったわね?」
「はい、そうですけど……?」
君ももうある程度、基本属性の中級魔術はマスターしたから、そろそろ合成属性の魔術にも手を出して良い頃だと思うの」
「はい、そうですね」
「じゃあ、明日、私が合成属性の魔術を教えてあげるからいっしょにお出かけしましょう!」
「えっ!? 良いんですか? お店の営業とかもあるんじゃ……?」
「少しくらいならスタッフの子たちもいるし大丈夫よ! まぁいちおう夜にはお店に戻るつもりだけどね?」

 ということでボクは翌日、ケレブリエルさんから合成魔術を伝授してもらうことになった。
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