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誰にも見られない配信を今日も始める
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20××年。
世界は滅びた。
理由は知らない。
正確には、私には教える必要がなかったのだと思う。
気ずいた時には、私はこの世界にいた。
再建された町。澄んだ空。
モンスターと魔法と配信が、生活の一部として組み込まれた世界。
ーー電脳世界。
そう呼ばれている。
でも、私にとってはただの現実だった。
逃げ場のない。生活そのもの。
「……配信、開始」
声が振るえないように意識して、ボタンを押す。
画面の隅に、小さな表示が浮かぶ。
視聴者:0
コメント欄には、
《コメントを入力してください》
という薄い文字だけが、ずっと居座っていた。
打ち込めば、
誰でも最初の一言になれるはずなのに、
そこには、ずっと何も無かった。
スクロールしても、何も出てこない。
過去のコメントも、名前も、残っていない。
「こんばんは……」
返事はない。
分かっていた結果なのに、
胸の奥が少しだけ、きゅっと縮む。
声を出すと、
自分の声だけがヘッドセット越しに返ってくる。
ここにいるのは、
配信している私だけだった。
この世界では、見られることが勝ちになる。
戦えなくても良い。
魔法が使えなくてもいい。
特別じゃなくてもいい。
誰かの視界に入りさえすれば、
それは仕事になり、
生きていていい理由になる。
……私はそれが欲しかった。
能力はない。
才能もない。
家族は、世界が終わる前に、
私を仮想世界生きの枠に押し込んだ。
「そっちの方が安全だから」
そう言われた気がする。
本当は、邪魔だっただけだ。
今のこの顔も、
整えられた姿も、
全部この世界が勝手に用意した物だ。
それでも、
誰かに見られる私でいないと、
元の自分に戻ってしまいそうで怖かった。
「今日も、特に何もありません」
少しだけ笑う。
笑わないと、泣きそうだったから。
街の映像を流す。
再建された建物。
行き交う人。
遠くから聞こえる、人気配信者の歓声。
ここは賑やかで、
私はひどく浮いている。
コメント欄は、動かない。
コメント欄が動かない配信は、
時間の流れだけが、やけに遅い。
それでも、配信は切らない。
切った瞬間、
今日一日、誰にも必要とされなかったことが
確定してしまう気がして。
「……じゃあ、今日も始めます」
誰にも見られない配信を、
それでも私は、今日も続けている。
窓の外では、
この世界が当たり前の顔で回っている。
その中で私は、
画面の前に座り続けている。
ーーそして、この時私は、まだ知らない。
この誰にも見られない配信が、私の人生を、
もう一度動かす入口だった事を。
今日も、配信は続いている。
世界は滅びた。
理由は知らない。
正確には、私には教える必要がなかったのだと思う。
気ずいた時には、私はこの世界にいた。
再建された町。澄んだ空。
モンスターと魔法と配信が、生活の一部として組み込まれた世界。
ーー電脳世界。
そう呼ばれている。
でも、私にとってはただの現実だった。
逃げ場のない。生活そのもの。
「……配信、開始」
声が振るえないように意識して、ボタンを押す。
画面の隅に、小さな表示が浮かぶ。
視聴者:0
コメント欄には、
《コメントを入力してください》
という薄い文字だけが、ずっと居座っていた。
打ち込めば、
誰でも最初の一言になれるはずなのに、
そこには、ずっと何も無かった。
スクロールしても、何も出てこない。
過去のコメントも、名前も、残っていない。
「こんばんは……」
返事はない。
分かっていた結果なのに、
胸の奥が少しだけ、きゅっと縮む。
声を出すと、
自分の声だけがヘッドセット越しに返ってくる。
ここにいるのは、
配信している私だけだった。
この世界では、見られることが勝ちになる。
戦えなくても良い。
魔法が使えなくてもいい。
特別じゃなくてもいい。
誰かの視界に入りさえすれば、
それは仕事になり、
生きていていい理由になる。
……私はそれが欲しかった。
能力はない。
才能もない。
家族は、世界が終わる前に、
私を仮想世界生きの枠に押し込んだ。
「そっちの方が安全だから」
そう言われた気がする。
本当は、邪魔だっただけだ。
今のこの顔も、
整えられた姿も、
全部この世界が勝手に用意した物だ。
それでも、
誰かに見られる私でいないと、
元の自分に戻ってしまいそうで怖かった。
「今日も、特に何もありません」
少しだけ笑う。
笑わないと、泣きそうだったから。
街の映像を流す。
再建された建物。
行き交う人。
遠くから聞こえる、人気配信者の歓声。
ここは賑やかで、
私はひどく浮いている。
コメント欄は、動かない。
コメント欄が動かない配信は、
時間の流れだけが、やけに遅い。
それでも、配信は切らない。
切った瞬間、
今日一日、誰にも必要とされなかったことが
確定してしまう気がして。
「……じゃあ、今日も始めます」
誰にも見られない配信を、
それでも私は、今日も続けている。
窓の外では、
この世界が当たり前の顔で回っている。
その中で私は、
画面の前に座り続けている。
ーーそして、この時私は、まだ知らない。
この誰にも見られない配信が、私の人生を、
もう一度動かす入口だった事を。
今日も、配信は続いている。
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