俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎

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クラフトスキル

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 俺は街の喧騒を背に、鍛冶場への道を歩き始めた。かつての仲間たちのことは、もう気にしないようにしよう。今は目の前のことに集中するときだ。

 鍛冶場に着くと、その少し先にある武器屋の露天がいつもより賑わっていた。魔王討伐のニュースは、この場所にも影響を与えているようだ。

「おや、ロアン。久しぶりだな」

 鍛冶場の主人、グラムが俺に声をかけてきた。彼の顔には、いつもの温かな笑顔が浮かんでいる。

「やあ、グラムのおっさん。久しぶり」

 俺は軽く会釈をして答えた。グラムは、俺がこの街に来てから世話になっている鍛冶師だ。技術を磨く上で、多くのアドバイスをくれた恩人でもある。

「魔王いなくなってからというもの、世の中変わっていくもんだ」

 グラムは感慨深げに言った。俺はうなずきながら、周りを見回した。鍛冶場にも、いつもより多くの人が訪れている。その多くが、一般人のようだ。

「みんなダンジョン探索用の装備を求めているんですね」

 俺の言葉に、グラムは頷いた。

「そうさ。誰もが冒険者になれる時代だ。ここんとこは武具を買いに来るやつがひっきりなしでな。商売としては嬉しいが、買ったからって扱えるわけではないんだがねぇ」

 グラムの言葉に、俺は思わず眉をひそめた。確かに、武具を持っているだけで冒険者になれるわけではない。しかし、そこには新たな可能性も感じる。

「なるほど……」

 俺は自分のスキルを活用する一つの方策に思い至った。
 グラムは俺の様子を見て、少し首を傾げた。

「どうした、ロアン? 何か思いついたのか?」
「ああ、ちょっとしたアイデアです」

 俺は曖昧に答えた。

「またちょっと工房を貸してもらえるかな」
「ああ、もちろんだ。好きなだけ使っていいぞ」

 グラムの許可を得て、俺は早速工房に向かった。パーティを追い出されてからというもの、工房も失ってしまったのだ。スキルやアイテムでクラフト作業はどうとでもなるのだが、集中できる作業場所はそう簡単に見つからない。頭の中では、既にいくつかのアイデアが形になりつつあった。誰でも扱える、しかし経験を積むほどに威力を発揮する装備。

 工房に入ると、俺は『ポータブル鍛冶台』を広げた。そして、『次元の指輪』から様々な素材を取り出す。C級ではあるが、それでも入手困難な希少金属、魔力を帯びた宝石、そして魔物から採取した特殊な素材。これらは一般の鍛冶師には手に入りにくい貴重なものだ。C級とはいえ、その希少性は十分に高い。

 俺はこれらの素材を慎重に選び、組み合わせていく。C級の素材でも、適切に扱えば十分に高性能な装備を作り出せる。それが俺のクラフトスキルの真価だ。

 カンカンと金属を打つ音が、工房に響き渡る。俺は黙々と作業を続けた。時間の経過も忘れ、ただ目の前の作業に没頭する。各種の素材を巧みに操り、その潜在能力を最大限に引き出していく。

 俺はクラフトスキルを発動させた。レベル2素材活用スキル『ハイマテリアル』、レベル2魔法付与スキル『ハイエンチャント』、レベル2武具作成スキル『フォージアーティスト』。これらのクラフトスキルを発動しながら鍛冶道具を操ると、素材が完璧に融合し始め、宝石の粉末が青く輝き、金属に魔力が流れていく。そして、金属が形を整え、腕輪の姿になったそれは、魔力を帯びた腕輪になった。

「成長する魔力の腕輪だ」

 俺は小さく呟いた。青く輝く魔力宝石が埋め込まれた銀の腕輪。見た目はシンプルだが、その効果は使えば使うほど高まっていく。

 背後から足音がして、振り返るとグラムが立っていた。

「おお、もう完成したのか。ロアン、お前の技術は本当に素晴らしいな」

 グラムは腕輪を興味深そうに見つめた。

 俺は黙って頷いた。この腕輪なら、初心者でも安全に使え、かつ経験を積んだ者なら真価を発揮できるはずだ。

 俺は腕輪を次元の指輪にしまった。工房を出ると、夕暮れ時の街並みが目に入った。人々は相変わらず活気に満ちている。

 街の喧騒を背に、俺は宿への道を歩き始めた。今日作った腕輪をどうやって売るか、そしてどうやって量産するか、考えを巡らせる。物件斡旋所に持ち込んで、冒険者ギルドとの取引を模索するのもいいかもしれない。または、直接冒険者たちに売り込むのも手だ。

 量産については、素材の調達が課題になりそうだ。C級とはいえ希少な素材を大量に確保するのはそう容易ではない。でも、ダンジョンの難易度が下がっているなら、自分で素材を集めに行くのも選択肢の一つかもしれない。

 宿に戻り、部屋に入ると、俺は深く息を吐いた。ベッドに横たわりながら、販売戦略と生産計画を練る。魔王討伐後の世界で、俺のクラフトスキルを最大限に活かす方法を模索しながら、俺は少しずつ眠りに落ちていった。
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