俺を凡の生産職だからと追放したＳ級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ？〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます～

レベル３の領域へ

　街の至る所で戦いの音が響き渡る。魔物たちの唸り声と、人々の叫び声が入り混じり、空気が震えているかのようだった。俺は広場の中央で、黙々と武器を作り続けていた。

　汗が目に染みる。脳も筋肉もすでに悲鳴を上げていて、指先が痺れそうになる。それでも、俺は作業の手を止めることはできなかった。俺の周りには、様々な武器や防具が山積みになっている。それらは次々と人々の手に渡り、戦場へと運ばれていく。

　遠くで轟音が響く。振り向くと、巨大な人型の魔物──おそらく『ジャイアント』が、建物の一角を破壊していた。手慣れている戦士なら対抗できるものの、戦闘の素人では簡単には処理できない。やがてその脅威がすぐ近くにまで迫っていた。俺が戦うしかないのか。だが、この手を止めたら、別のところで戦う人々に武器を提供することができない。

　その葛藤の中、指輪が、これまでにない輝きを放った。そして、眩いばかりの光が辺りに広がった瞬間、指輪の結晶が砕け散ったのだった。

　瞬間、駆け巡る全能感。俺の手が、信じられないほどの速さで動き始める。まるで、意識と同調するかのように、思い描いた武器が次々と形になっていく。

　 レベル３武具作成スキル『フォージマエストロ』。高性能かつ軽量性を両立した耐久性のある装備の製作が可能になった。今までなら数日かかっていた高度な装備が、わずか数分で完成する。

　レベル３魔法付与スキル『エンチャントエンジニア』。効率的な魔力注入と使用者の魔力増幅装備の製作が可能に。魔力の制御が格段に向上し、より複雑で強力な魔法効果を装備に組み込めるようになった。

　レベル３装備者テーラリングスキル『シンクロスミス』。使用者に最適化された装備のカスタマイズと潜在能力引き出しが可能に。装備を使う人の特性を瞬時に分析し、その人に最適な性能を引き出せるようになった。

　レベル３装備修理スキル『リペアレジェンド』。 迅速な修復と性能向上、既存装備への機能追加ができるこのスキルで、人々が戦闘の中で壊れた武具を持ってきては、それを修理してさらに強い武具を作り出す。素材を新規に消費するより多くの武器が作れる。

　俺は新たな装備を次々と生み出していく。気づけば手中には淡く光を放つ剣があった。その刃は、まるで水面のように揺らめいている。俺は剣を手に取り、その性質を確認する。この剣は、使用者の魔力と同調し、刃の硬度と鋭さを自在に変化させることができる。硬い鎧には鋭い刃となって切り裂き、柔らかい体には鈍器のようになって叩きつける。まさに、相手を選ばない万能の武器だ。

「おい、もっと作ってくれ！　こんな武器があれば、俺たちにも戦えるかもしれない！」

　男性の叫びに、周囲の人々が同意の声を上げる。俺は頷き、さらに作業を加速させる。次に完成したのは、光を帯びた鎧だった。この鎧は、着用者の動きに合わせて硬度を変化させる。動きを妨げない柔軟性と、強力な防御力を両立させているのだ。さらに、着用者の魔力を増幅させる効果まである。

「こ、これは凄い！　こんな鎧なら、魔法使いでも前線で戦えるぞ！」

　魔法学校の教師が、興奮した様子で叫ぶ。彼の言葉に、周囲の魔法使いたちの目が輝き始めた。俺は黙々と作業を続ける。弓、槍、盾、そして魔法装置。それぞれが、これまでとは比較にならないほどの性能を持っている。

　先ほどの『ジャイアント』と、市民たちが激しい戦いを繰り広げていた。俺は新しく作った武器を、そちらに届けるよう指示する。

「これを使え！　きっと勝てる！」

　俺の言葉に、数人の若者が頷き、武器を抱えて走り出す。しばらくすると、歓声が上がった。『ジャイアント』が、ゆっくりと崩れ落ちていく。その姿を見た人々の目に、希望の光が宿る。

「俺たちにも、戦えるんだ……！」

　その言葉が、街中に広がっていく。人々の表情が、恐怖から決意へと変わっていった。

　俺は作業を続けながら、街の様子を観察する。至る所で、市民たちが魔物と戦っている。その光景は、まるで訓練された兵士のようだった。

　新しい剣は、シャドウクロウラーの素早い動きを的確に捉え、その影のような体を切り裂いていく。魔法増幅の杖を手にした魔法使いたちは、これまでの何倍もの威力の魔法を放ち、空を舞うエレメントウィングの群れを次々と撃墜していく。街の中心部では、巨大なクリスタルゴーレムが暴れていた。

　その体は、まるで宝石のように輝き、通常の武器では歯が立たない。しかし、俺の新しい武器を手にした戦士たちは、その装甲さえも切り裂いていく。魔力を増幅する鎧を着た魔法使いたちは、ゴーレムの弱点を的確に狙い、効果的な一撃を放つ。

　戦いの様子が、目に見えて変わっていく。最初は圧倒されていた市民たちが、今や魔物たちを追い詰めている。街の各所で、魔物たちが倒れていく音が聞こえる。

　そのとき、背後から声がかかった。

「ロアン様！　緊急事態です！」

　振り向くと、一人の使者が息を切らせて駆けてきた。その表情には、ただならぬ緊迫感が窺える。

「どうした？　何があった？」

　使者は、震える声で報告を始めた。

「ブレイクウォーター領からの緊急連絡です。大規模な魔物の群れが、都市部に向かっているとのことです！」

　その言葉に、俺は愕然とする。ここでの戦いはまだ終わっていない。しかし、ブレイクウォーター領も危機に瀕している。

「くそっ……どうすればいい……」

　俺は頭を抱える。このまま街を守り続けるべきか。それとも、ブレイクウォーター領へ向かうべきか。

　そのとき、シルヴィとミアが駆けつけてきた。ミアは魔力開放状態で、コスプレのような格好をすることでその存在を隠している。

「ロアン。ここはもうすぐ上位ランクの戦士たちがこっちに到着する。緊急避難用の魔法陣を使えばすぐにブレイクウォーターに移動できる。行こう」
「あっちのがヤバい雰囲気を感じるよ。たぶん、ダンジョンが何か動いてる」

　二人の言葉に、俺はすぐに決意を固めた。

「ブレイクウォーター領に向かう」

　俺は次元の指輪に詰め込めるだけの素材と武具を詰め込んで、ブレイクウォーターへと飛んだ。