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やっぱり、似たモノ同士。

先生、これは18禁乙女ゲームじゃありません。

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とりあえず、皆には席をはずして貰った。
  これから、重大な話し合いをする必要があるからと。

  土論は後ろ髪を引かれる様子だったが、私が何時にない真剣な顔をしていたので、何も言わずに引いてくれた。




  ――――・・・そして、2人きりになった・・・―――。


  ソビエト帝国皇帝は、カウチにだらしなく座ったまま、髪を玩び、楽しそうに言った。
  『いつから気付いていたんだ?』

  『装甲車から、出て来た時からです。』

  『私は何かしたかな?』

  『10万の兵を引き連れて私を奪いに来た皇子が、あなた一人だった。
  これが、3万でも5万でも、10万ではなく、もっと小規模部隊であったなら、私は疑わなかったでしょう。
  もしくは10万の兵に2,3人の皇子が率いていたなら・・・・。

  私達が予測していた、王位継承権争奪、棒倒しゲームの棒が私だったのなら、あなた一人だけ来るというのはおかしい。1人ではゲームが成立しないんですよ。
  全員ではないにしても、2,3人は来るはずです、今だ後継者問題が、解決していないのなら。
  でもあなたは、お一人でいらした。10万の大軍を引き連れて。
  たかが、16人いる皇子の中の1人がそんな権力があるとでも?
  そんな権力を持ち得るのは、「皇帝」本人だけです』




  私は一呼吸おいて、男の目をじっと見つめながら言った。



  『お噂はかねがね、伺っております。「紅のアンドレイ」様』



  その男は、不敗神話を持つ「伝説の紅のアンドレイ。」
  彼の戦いぶりは凄まじい。
  全身を返り血で真っ赤に染め、瞳さえも周り中が血塗れているのを反射して真っ赤に染まる。
  それにもかかわらず、彼は態と軍服は真っ白を身に着ける。白が好きだから。
  だが一旦、戦いが始まると戦神と化し、身も心も深紅に染まるのだ。

  今回、私達が勝つことが出来たのは、ただ、彼が求めていたのが、『次期女王だけ』、だったからに、他ならない。
  私を求めて深追いしなければ、海を制し、港を制圧され、いずれは全てを奪われていたかもしれない。彼は、天性の戦略家だ。
  だから、もしかしたら、今回の敗退も、次期女王を得るための布石だったのかもしれない。

  だが、2度目は無い。今度戦争が起こったとしたら、この男は容赦はしない。私達は無残に惨敗し、日本王国は、ソビエト帝国の属国と成り下がるだろう。
  だから、何んとしても!二度とソビエト帝国と戦争を起こしてはならない。
  特にこの男が皇帝である間は。決して・・・――――――!



  『あなたが今、こんな所で、悠長に寛いでいらっしゃると言う事は、後継者争いはすでに終息し、足元をすくわれる心配がまるでない状態と言う事。
  ―――――――・・・王位継承権者を全て粛清なさいましたか?』

  何でも無い事の様に、男は肩をすくめ、

  『かの有名な次期女王を迎えなければならないからな。身辺整理は、万全にしなければ、失礼だろう?嫁いびりをする姑も小姑もいないよ。』

  と悪戯っぽくニヤリとした。

  『私は、一妻多夫制が、認められているとは言え、婿は取れますが、嫁にはいけないんですよ。家業を継がなければならないので。』

  『あなたを得られるのであれば、私は喜んで婿に入るよ。』

  と、にっこり笑う。憎らしいほど、チャーミングだ。あくまで顔だけだが。

  『不可能ですね』

  『私が、愛しい妻に逢いたくて、イソイソと通い続ければ良いことだ。
  私はあなた以外とは、結婚するつもりは無いからな。
  いずれ白い子供が生まれたら、わが国の後継者として、引き取れば良い事だ。』

  『・・・・お分かりでしょうが「」として、この結婚は絶対「成功」させなければならない案件です。
 日本王国にとっては、これほど、願ってもない申し出などないでしょう。
 でも、どうして、私だったんですか?
 大国ソビエト帝国にとっては、是が非でもという話ではないでしょう!
 それも、戦争を仕掛けてまで・・・・っ!!』

 
 『・・・・――――我が帝国にとって必要だった、とでも言っておこうかな。私にとって戦う理由など、初めて戦場に立たされた、13歳の時から、私が私であるからとしか言いようがない。』

 『っ!!私は、あなたの事が分からない。私には、すでに素晴らしい夫が居ます。それはもう完璧な。存在そのものが奇跡だと言うような。』

 『!!そんなモノと比べられたくはないが、私だってちょっとぐらいは良いところがあるはずだ!』

 『そういう事じゃなく!他に愛する人がいる女などと一緒に居て辛くないんですか?!
 あなたほどの容姿と名声があれば、あなただけを愛してくれる人は、大行列を作っているでしょうに。』

 『私にも褒められるところがあったようで、ほっとしたよ。』

 褒めてねぇし。

  『・・・・・―――それが、運命だと言ったら?』

 この男の似合わないセリフに、私は、思いっきり顔に「罠?」と書いているような、うろんな目で、彼を見た。
 その顔を見た彼は、くすくす笑いながら、
  
 『初めは好奇心だな。隣国の「カッコウの国の最上の女王」が、どんな女なのか見てみたくなった。
―――――そして会って見たら、これ程自分にぴったりな女は、世界中で捜しても1人として居ないと確信した。』

  『どこが?!』

  『あなただって気付いているはずだ。私達が似た者同士だと。
  確信したのは・・・そう、あの初対面の時の一言だな。
  「監獄プレイDeath!」と。
  くくく・・・・私は嬉しくてその日眠れなかったよ。
  そして決意した、どんな汚い手だろうと手段は選ばない、あなたを私のモノにすると。』

  『マニアですね』

  私は気の毒そうに男を見た。
  男は、なぜか、とても幸せそうに答えた。

  『フフ・・あなたに一目惚れした。それだけは確かだ。自分でも信じられないが、これが「初恋」というものなんだと思う。
・・・―――だから、嫌わないで欲しい・・・』

 しょぼんと最後に口にされた言葉は、強力除草剤のように、私の敵意を根こそぎ死滅させた。
 そんなことを言ってくれる、相手を嫌えるわけがないじゃないか!チクショウ!

 『私は・・・・、多分、あなたのことを、嫌っては、いないと思う・・・・それどころか、忌忌しいことに、好意さえ抱いてしまっている。
  氷みたいな外見と評判の持ち主なのに、お茶目な花火でプロポーズしてくれたり、
  地元民しか知らない合言葉。登別といえば、「熊牧場」とキラキラした瞳で即答したり、私の前でのあなたは可愛い所ばかり見せ付ける』
  
  男はきょとんとした顔をした。自覚がなかったらしい。

  『でも私には、あなたを幸せにする自信がない!!』

  思わず俯き、それと同時に、溢れ出た涙が滴り落ちる。
 彼に「好意」を持ってしまったからこそ、自分を好きだと言ってくれる相手に「自己犠牲」という名の自己満足の義務感だけで、彼の幸せになる機会を奪ってはいけないと強く感じた。

  男は、戸惑ったように思わず立ち上がり、無言で、鍛え上げられた力強い腕で、私を壊れ物のように恐る恐る抱き締めてきた。
  その不器用な仕草に、一層胸を締め付けられる。

  『私は、二人の夫を幸せにできる程、器用な人間じゃない。それどころか、タグが付いてたら間違いなく「ただの馬鹿」って書いてあるに違いないのに、それでも私は、あなたに、結婚してもらわなければならない、どうしても!!』

 『葵、私は今まで幸せとは無縁な人生を送って来た。だから断言できる。初めて恋する事が出来た、君の側に居るだけで、私は、幸せになれる。貴方としか結婚したくない』

 『私の事なんか何にも知らないくせに!』

 『貴方の何もかもが、知りたいし、知ってほしい。それが、「恋」と言うものなんだろう?』

 

  彼は、悪戯っぽく、ふわりと唇を合わせる。下唇を甘噛みし、一度のキスが次のキスへと、境目無く続いてゆく。耳の奥でドクドクと言う音が鳴り響き、足元がくにゃりと崩れ、男の舌の思わせぶりな動きに体の奥が熱くなる・・・が。




  無理っ・・・!!


 ****




  『・・・・・っ!ちょっと!待った!!先生に、ちゃんと、ケジメ付けるまでは、駄目!!』

  慌てて、あらん限りの力で彼を押しのける。

  『・・・・ぇーーーーー・・・・。』


  がっーーーーーっくり!!と項垂れたアンドレイが物凄く可愛そうに見えたがソコは譲れない。

  でもあまりにも、しょんぼりしているので、まあこの位なら、と思って、自慢の胸にこの哀れを誘う男の顔を埋めさせる。

 可愛い人だ。なんだかもう、諦めの境地で、いつの間にか、この人を受け入れている自分がいる。


  そして、しばらく手触りの良い青銀の髪をなでていたが、どうしても、この体勢になると三つ編みが、したくなる。

  痛くしないようにしながら、きっちり硬く編んでゆく・・・・・・・。



  ――――・・・どの位そうしていただろう。アンドレイは、私の胸におとなしく顔を埋め幸せそうに微睡まどろんでいた。

  『アンドレイって、私の胸大好きでしょう?』

  『あなたも自分の胸が好きだろう?あなたは絶対巨乳好きのはずだ。』

  『何で分かるの?!』

  『私がそうなんだから、間違いない。私達はどうしようもない程、「似たモノ同士」だからな。』

  本当に嬉しそうに言いながら、私が自分の髪をずっと掴み続けている事を、不思議そうに見た。

  『何してるんだ?』

  私は、にっこりと笑うと、これ見よがしに、ずっと掴んでいた彼の三つ編みを離す。

   やはり、彼の青銀の真っ直ぐ過ぎる髪は、跡も残さず、スルンスルンと解けてゆく・・・・。



  『・・・・あなたに、知っておいて欲しい事があるの・・・・』

  私は深刻な顔をして言った。

  『気を落とさずに聞いて欲しいんだけど・・・――――』

  彼が不思議そうに私を見る。






  『あなたは、一生!「レゲエ」には、なれない・・・・っ!』

  と、悲痛な声で、残酷な告知をした。



  一瞬キョトンとした彼は、一拍遅れて、大いにウケてくれた。


  とても、綺麗な笑顔だった。


  ――――・・・その、眩い笑顔を見ながらふと思う。

  私達は似たモノ同士。笑いのツボも、一緒だ。
  それなら、これから先、辛い事があっても、彼を笑わせて上げることが出来るのなら、

  ――――――・・・私は彼にとって、少しは価値の有る人間になれるのかもしれない、と。



 
 

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