先生、これは18禁乙女ゲームじゃありません。

bara10jisya

文字の大きさ
19 / 42
やっぱり、似たモノ同士。

先生、これは18禁乙女ゲームじゃありません。

しおりを挟む
とりあえず、皆には席をはずして貰った。
  これから、重大な話し合いをする必要があるからと。

  土論は後ろ髪を引かれる様子だったが、私が何時にない真剣な顔をしていたので、何も言わずに引いてくれた。




  ――――・・・そして、2人きりになった・・・―――。


  ソビエト帝国皇帝は、カウチにだらしなく座ったまま、髪を玩び、楽しそうに言った。
  『いつから気付いていたんだ?』

  『装甲車から、出て来た時からです。』

  『私は何かしたかな?』

  『10万の兵を引き連れて私を奪いに来た皇子が、あなた一人だった。
  これが、3万でも5万でも、10万ではなく、もっと小規模部隊であったなら、私は疑わなかったでしょう。
  もしくは10万の兵に2,3人の皇子が率いていたなら・・・・。

  私達が予測していた、王位継承権争奪、棒倒しゲームの棒が私だったのなら、あなた一人だけ来るというのはおかしい。1人ではゲームが成立しないんですよ。
  全員ではないにしても、2,3人は来るはずです、今だ後継者問題が、解決していないのなら。
  でもあなたは、お一人でいらした。10万の大軍を引き連れて。
  たかが、16人いる皇子の中の1人がそんな権力があるとでも?
  そんな権力を持ち得るのは、「皇帝」本人だけです』




  私は一呼吸おいて、男の目をじっと見つめながら言った。



  『お噂はかねがね、伺っております。「紅のアンドレイ」様』



  その男は、不敗神話を持つ「伝説の紅のアンドレイ。」
  彼の戦いぶりは凄まじい。
  全身を返り血で真っ赤に染め、瞳さえも周り中が血塗れているのを反射して真っ赤に染まる。
  それにもかかわらず、彼は態と軍服は真っ白を身に着ける。白が好きだから。
  だが一旦、戦いが始まると戦神と化し、身も心も深紅に染まるのだ。

  今回、私達が勝つことが出来たのは、ただ、彼が求めていたのが、『次期女王だけ』、だったからに、他ならない。
  私を求めて深追いしなければ、海を制し、港を制圧され、いずれは全てを奪われていたかもしれない。彼は、天性の戦略家だ。
  だから、もしかしたら、今回の敗退も、次期女王を得るための布石だったのかもしれない。

  だが、2度目は無い。今度戦争が起こったとしたら、この男は容赦はしない。私達は無残に惨敗し、日本王国は、ソビエト帝国の属国と成り下がるだろう。
  だから、何んとしても!二度とソビエト帝国と戦争を起こしてはならない。
  特にこの男が皇帝である間は。決して・・・――――――!



  『あなたが今、こんな所で、悠長に寛いでいらっしゃると言う事は、後継者争いはすでに終息し、足元をすくわれる心配がまるでない状態と言う事。
  ―――――――・・・王位継承権者を全て粛清なさいましたか?』

  何でも無い事の様に、男は肩をすくめ、

  『かの有名な次期女王を迎えなければならないからな。身辺整理は、万全にしなければ、失礼だろう?嫁いびりをする姑も小姑もいないよ。』

  と悪戯っぽくニヤリとした。

  『私は、一妻多夫制が、認められているとは言え、婿は取れますが、嫁にはいけないんですよ。家業を継がなければならないので。』

  『あなたを得られるのであれば、私は喜んで婿に入るよ。』

  と、にっこり笑う。憎らしいほど、チャーミングだ。あくまで顔だけだが。

  『不可能ですね』

  『私が、愛しい妻に逢いたくて、イソイソと通い続ければ良いことだ。
  私はあなた以外とは、結婚するつもりは無いからな。
  いずれ白い子供が生まれたら、わが国の後継者として、引き取れば良い事だ。』

  『・・・・お分かりでしょうが「」として、この結婚は絶対「成功」させなければならない案件です。
 日本王国にとっては、これほど、願ってもない申し出などないでしょう。
 でも、どうして、私だったんですか?
 大国ソビエト帝国にとっては、是が非でもという話ではないでしょう!
 それも、戦争を仕掛けてまで・・・・っ!!』

 
 『・・・・――――我が帝国にとって必要だった、とでも言っておこうかな。私にとって戦う理由など、初めて戦場に立たされた、13歳の時から、私が私であるからとしか言いようがない。』

 『っ!!私は、あなたの事が分からない。私には、すでに素晴らしい夫が居ます。それはもう完璧な。存在そのものが奇跡だと言うような。』

 『!!そんなモノと比べられたくはないが、私だってちょっとぐらいは良いところがあるはずだ!』

 『そういう事じゃなく!他に愛する人がいる女などと一緒に居て辛くないんですか?!
 あなたほどの容姿と名声があれば、あなただけを愛してくれる人は、大行列を作っているでしょうに。』

 『私にも褒められるところがあったようで、ほっとしたよ。』

 褒めてねぇし。

  『・・・・・―――それが、運命だと言ったら?』

 この男の似合わないセリフに、私は、思いっきり顔に「罠?」と書いているような、うろんな目で、彼を見た。
 その顔を見た彼は、くすくす笑いながら、
  
 『初めは好奇心だな。隣国の「カッコウの国の最上の女王」が、どんな女なのか見てみたくなった。
―――――そして会って見たら、これ程自分にぴったりな女は、世界中で捜しても1人として居ないと確信した。』

  『どこが?!』

  『あなただって気付いているはずだ。私達が似た者同士だと。
  確信したのは・・・そう、あの初対面の時の一言だな。
  「監獄プレイDeath!」と。
  くくく・・・・私は嬉しくてその日眠れなかったよ。
  そして決意した、どんな汚い手だろうと手段は選ばない、あなたを私のモノにすると。』

  『マニアですね』

  私は気の毒そうに男を見た。
  男は、なぜか、とても幸せそうに答えた。

  『フフ・・あなたに一目惚れした。それだけは確かだ。自分でも信じられないが、これが「初恋」というものなんだと思う。
・・・―――だから、嫌わないで欲しい・・・』

 しょぼんと最後に口にされた言葉は、強力除草剤のように、私の敵意を根こそぎ死滅させた。
 そんなことを言ってくれる、相手を嫌えるわけがないじゃないか!チクショウ!

 『私は・・・・、多分、あなたのことを、嫌っては、いないと思う・・・・それどころか、忌忌しいことに、好意さえ抱いてしまっている。
  氷みたいな外見と評判の持ち主なのに、お茶目な花火でプロポーズしてくれたり、
  地元民しか知らない合言葉。登別といえば、「熊牧場」とキラキラした瞳で即答したり、私の前でのあなたは可愛い所ばかり見せ付ける』
  
  男はきょとんとした顔をした。自覚がなかったらしい。

  『でも私には、あなたを幸せにする自信がない!!』

  思わず俯き、それと同時に、溢れ出た涙が滴り落ちる。
 彼に「好意」を持ってしまったからこそ、自分を好きだと言ってくれる相手に「自己犠牲」という名の自己満足の義務感だけで、彼の幸せになる機会を奪ってはいけないと強く感じた。

  男は、戸惑ったように思わず立ち上がり、無言で、鍛え上げられた力強い腕で、私を壊れ物のように恐る恐る抱き締めてきた。
  その不器用な仕草に、一層胸を締め付けられる。

  『私は、二人の夫を幸せにできる程、器用な人間じゃない。それどころか、タグが付いてたら間違いなく「ただの馬鹿」って書いてあるに違いないのに、それでも私は、あなたに、結婚してもらわなければならない、どうしても!!』

 『葵、私は今まで幸せとは無縁な人生を送って来た。だから断言できる。初めて恋する事が出来た、君の側に居るだけで、私は、幸せになれる。貴方としか結婚したくない』

 『私の事なんか何にも知らないくせに!』

 『貴方の何もかもが、知りたいし、知ってほしい。それが、「恋」と言うものなんだろう?』

 

  彼は、悪戯っぽく、ふわりと唇を合わせる。下唇を甘噛みし、一度のキスが次のキスへと、境目無く続いてゆく。耳の奥でドクドクと言う音が鳴り響き、足元がくにゃりと崩れ、男の舌の思わせぶりな動きに体の奥が熱くなる・・・が。




  無理っ・・・!!


 ****




  『・・・・・っ!ちょっと!待った!!先生に、ちゃんと、ケジメ付けるまでは、駄目!!』

  慌てて、あらん限りの力で彼を押しのける。

  『・・・・ぇーーーーー・・・・。』


  がっーーーーーっくり!!と項垂れたアンドレイが物凄く可愛そうに見えたがソコは譲れない。

  でもあまりにも、しょんぼりしているので、まあこの位なら、と思って、自慢の胸にこの哀れを誘う男の顔を埋めさせる。

 可愛い人だ。なんだかもう、諦めの境地で、いつの間にか、この人を受け入れている自分がいる。


  そして、しばらく手触りの良い青銀の髪をなでていたが、どうしても、この体勢になると三つ編みが、したくなる。

  痛くしないようにしながら、きっちり硬く編んでゆく・・・・・・・。



  ――――・・・どの位そうしていただろう。アンドレイは、私の胸におとなしく顔を埋め幸せそうに微睡まどろんでいた。

  『アンドレイって、私の胸大好きでしょう?』

  『あなたも自分の胸が好きだろう?あなたは絶対巨乳好きのはずだ。』

  『何で分かるの?!』

  『私がそうなんだから、間違いない。私達はどうしようもない程、「似たモノ同士」だからな。』

  本当に嬉しそうに言いながら、私が自分の髪をずっと掴み続けている事を、不思議そうに見た。

  『何してるんだ?』

  私は、にっこりと笑うと、これ見よがしに、ずっと掴んでいた彼の三つ編みを離す。

   やはり、彼の青銀の真っ直ぐ過ぎる髪は、跡も残さず、スルンスルンと解けてゆく・・・・。



  『・・・・あなたに、知っておいて欲しい事があるの・・・・』

  私は深刻な顔をして言った。

  『気を落とさずに聞いて欲しいんだけど・・・――――』

  彼が不思議そうに私を見る。






  『あなたは、一生!「レゲエ」には、なれない・・・・っ!』

  と、悲痛な声で、残酷な告知をした。



  一瞬キョトンとした彼は、一拍遅れて、大いにウケてくれた。


  とても、綺麗な笑顔だった。


  ――――・・・その、眩い笑顔を見ながらふと思う。

  私達は似たモノ同士。笑いのツボも、一緒だ。
  それなら、これから先、辛い事があっても、彼を笑わせて上げることが出来るのなら、

  ――――――・・・私は彼にとって、少しは価値の有る人間になれるのかもしれない、と。



 
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生メイドは貞操の危機!

早桃 氷魚(さもも ひお)
恋愛
クララは乙女ゲームの世界に転生した、モブのメイド。 最推しキャラの公爵令息、ロルフのメイドとして、不幸フラグを折りながら、天使のように愛らしい推しを守ってきた。 ロルフはクララに懐き、魔法学園に入学するときも、離ればなれになるのを嫌がるほど。 「帰ってきたら、ずっと一緒だからね?」 ロルフとそう約束してから三年後。 魔法学園を卒業したロルフが、ついに屋敷へ戻ってきた! だが、クララの前に現れたのは、 かつての天使ではなく、超イケメンの男だった! 「クララ、愛している」 え!? あの天使はどこへ行ったの!? そして推し!! いま何て言った!? 混乱するクララを、ロルフはベッドに押し倒してきて……!? ----- Kindle配信のTL小説 『転生メイドは推しを甘やかしまくった結果、貞操の危機です!』 こちらは番外編です! 本編よりずっと前の、推しがまだ天使だった頃のお話です。 本編を知らなくても読めます。

処理中です...