異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
90 / 179
第二章 初学院編

89

しおりを挟む
2、3日もつことは確かそうだな。このテレシ―侯爵領から王都まで全速力で行けば、1日半たどり着くころができる。だけど、不測の事態があった時や上級回復魔導士をそろえる時間を考えると、2,3日という時間はあまりに心もとない。それに、アースが回復した後に、こいつは何かをするようだ。何を考えているのかはわからないが、こいつの気味の悪い笑顔から明るいことでないことは想像にたやすい。事前に聞きだしたいところだが、こいつがしゃべるとも思わないし、何より、アース自身が回復しないと意味がない。


自分の魔力を他人に譲渡するのは非常に難しいことだ。ただ流し込むだけならば、以前殿下がアースにやったように騎士にもできることだ。だけど、自分の魔力を相手が使えるように譲渡するのが難しいのだ。魔力と一口に言っても、人によって性質が異なっている。その性質にあうように変化させて、相手に渡さねければ、相手は受け取った魔力を使うことができないのだ。相手の魔力の性質を感知し、自分の魔力をそれに適合するように変える技術がなければならない。そのようなことができるのは、上級魔導士の中でもほんの一握りだ。もちろん、俺達の中の誰かができるとも思えない。ここは、無理をしてでも王都に向かうべきだろうか?
俺達が俯くことしかできないでいると、ジールが主に近づきそして、アースを自分に渡すように言った。

「ジール、できるのか? 魔力の譲渡なんて、そのような高等なことを………。」

「俺にはできないッスよ。だけど、木に任せることはできるッス。俺に任せていただけないッスか? もちろん、俺だけの魔力では足りないと思うッスから、皆の魔力も頂けるとうれしいッス。」

木に任せる………? 木属性の魔法で、魔力の譲渡が可能だというのだろうか? 水の供給といい、索敵といい、ジールの能力はすごいな。アースが以前、木属性は万能だと評していたが、まさにその評価にふさわしい活躍ぶりだ。

「わかった。ジールに任せる。すまない、よろしく頼む。」

主はそういうと、アースを大事そうにしながら、ジールに渡した。ジールはアースを受け取ると、小声で何かをつぶやいた。すると、ジールの手のひらに何かの種のようなものが現れた。そしてジールは、アースの服をめくり丹田あたりにその種を押し付けた。

『魔樹の呼び声』

ジールがそう詠唱した次の瞬間、アースの腹の上でその種が、三十センチメートルくらいの若木へと成長した。

「「「「な………。」」」」

アースの腹に、根を張った木が生えている………。普通の木は人に生えないし、そもそもどういう原理でそうなっているのかもわからない。ジールのことだから、安全面は大丈夫だと思うが………。グート様も目を見開いて、アースに生えた木のことを見ている。

「えーと、急に変なことをしてしまって申し訳ないッス。これは寄生植物の一種で、魔樹の一種でもあるラジュラの木っス。この木は寄生主の魔力で発芽し、その後は木の枝を伸ばして他所から魔力を吸収して、寄生主に流すという習性があるッス。最初は発芽するために寄生主から魔力を吸い取る必要があるッスけど、その後はまるで発芽のお礼をするかのように寄生主に魔力を供給し続けるッス。」


………いや、もはや何も言うことができないけど、とにかくすごいな。初学院生で魔力の譲渡ができることも驚きだし、それをできる能力や魔力量がすごい。


「ジールには感謝してもしきれないな。」


「はっ。万能とは都合のいい言葉だな。所詮は、最強にはなれない器用貧乏なやつに使う言葉だ。」



せっかくのいい雰囲気に、あの角野郎はこの場に水を刺すような言葉を大声で言い放った。

こいつに助けられたのは事実だ。感謝もしている。だけど、そろそろ殴り飛ばさないと気がすまなくなってきた。


「……それはそうッスね。だけど、俺が最強じゃなくてもそれでいいんッスよ。俺達にはアースがいるッスからね。あなたの主は、間違いなく最強ッスよ。それでももちろん、俺は2番手止まりに甘んじずに、研鑽を続けていくッスよ。」


ジールは、アースの腹から生えている木の枝を掴み、魔力を流しながらそう言った。

……ジールは強いな。俺たちもジールに続いて、枝を掴んで魔力を流した。


「……お前らは、誰も彼も気持ちが悪いなぁ。人の心配ばかりしてやがる。」


そいつはそう言うと、いまいましそうにしながら、どこかへと姿を消した。



しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

処理中です...