異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
98 / 179
第二章 初学院編

97

しおりを挟む
「俺を召喚したお前の名は、アースと言ったか? まあ、名前なんかどうでもいい。そんなことよりもお前、俺を召喚したときの代償に何をささげたか覚えているか?」



遂に来てしまったか、この時が………。
あの時俺は、皆を守るために「俺のすべてを代償にする」と言った。そのツケを払えということだろう。すべてと口にしてしまった以上、命をとられてもおかしくない。そうなれば謹慎どころの話ではなくなるな。
せっかく転生したのに………もう少し、もう少し生きたかったな………。



「覚えています。俺のすべてを代償にする、と言いました。………覚悟はできています。」



俺がそういうと、鬼人はニターッと醜悪な笑みを浮かべた。人の命をとることが楽しいのだろうか? あの夢が現実に起こったことなのだとしたら、この鬼人は本当は優しい人なのではないかと思う。




「口では何とでも言えるなぁ。まあ、いい。すべてを代償にするということで、魂を食らいつくしてやろうかと思ったのだが、せっかく生き残る手助けをしたんだ。もっと、面白い方がいいだろ? ………ということで、いつ殺されるのかわからない恐怖に、おびえてもらおうかと思うのだがどうだぁ? 殺されるのは明日か、来年か? それとも、婚姻の前か、誕生日の前か? そんな恐怖におびえる毎日を過ごしてもらう。死ぬのは変わりないし、死ぬ時を選ぶのも俺だ。どうだ、面白いだろう?」




………いや、悪趣味すぎて面白くもなんともない。俺たちは、ただただドン引きするしかなかった。
ま、まあ、すぐに殺されることはないというをポジティブに捉えよう。




「………わかりました。ただ、1日前でもいいので、予告が欲しいです。引継ぎや挨拶等があると思いますので、よろしくお願いします。」


「………はぁ? それだけか?」


「え………。あ、そうですね。俺たちを助けてくださって、ありがとうございました。俺が生きていられるのは、あなたのおかげです。本当に、ありがとうございます。」



「………はぁ? も、もっと何かあるだろう!  俺は、好きな時にお前を殺すと言っているんだぞ!」



「い、いえ………。あなたを召喚したときに、その代償に俺の命はなくなるものだと思いましたので、その………少しでも生きられるのならうれしいです。」



俺がそういうと鬼人は、引きつった笑みを浮かべた。
もちろん、いつ殺されるのかわからないのはとてつもなく恐い。だけど、だからこそ、その時まで精一杯生きよう。



「チッ………。あー、冷めたわ。こんなつまらないガキだとは思わなかったぜ。お前、妙に大人びているな。………うん? よく見ると、お前の魂の色は………。」


鬼人はそういうと、俺の両肩を掴んで見分し始めた。
近いって、本当に近い。和装に角と目立つ部分が多くて一瞬気にならないけど、まぎれもないイケメンだ。あと、角が刺さりそうだから距離感を大切にしてほしい。



「ふははははははっ。お前は、そうか、そうなのか! うまそうな魂だなぁ。」



近い、近いって!

……それよりも、俺が転生者だということに気づいたみたいだから、変なことを言わないように阻止しなければならない。俺が口止めをしようとすると、キルが俺と鬼人の間に入ってきた。




「アースから離れてください!」


「なんだぁ? あー、役立たずの王子様か。どうしたんだ、そんなに情けない顔をして?」


見ると、キルは涙を流していた。



「お願いします。………アースの命を奪わないでください。」


「ふははははは。お前は泣くことしかできないのかぁ? まったく、泣くことしかできない王族は使い物にならないな。お前がいくら頼もうがわめこうが、こいつの魂をもらうことに変わりはない。それが、こいつとの契約だからな。」



「俺のすべてを代償に」と口に出してしまっている以上、この鬼人がいくら悪趣味だろうと言い返すことはできない。俺はキルの肩を掴んで、ゆっくりと首を振った。



「だが、少し面白そうなことが分かったからなぁ。ほんのわずかな間だが、退屈しのぎにはなりそうだ。じゃあ、気が向いたらまた来るぜぇ。」



鬼人はそういうと、姿を消してしまった。
気が向いたらまた来るということは、召喚の主導権はあちらにあるということだろうか? 現時点では、俺が召喚すれば来るというシステムではなないようだ。
それはそうと、俺が転生者であることがあの鬼人に知られたことが幸か不幸か、わずかな間だけど生きていられる猶予につながったようだ。




「………しばらく、頭を冷やしてくる。」


俺が鬼人のことを考えていると、キルはボソッとそういうと、部屋をあとにしてしまった。
引き留めようかと思ったけど、この短い間に色々とあったし、俺も頭を整理する時間が欲しかったから、引き留めなかった。



「ジールは、アースの側にいてやってくれ。俺とキースは、主の様子を見に行ってくる。俺たち側近にとっても、今は、あらゆることの転機だと思う。各々、やるべきことを整理しよう。」



「ありがとう、ローウェル。キルのこと、よろしくね。」


「………アース。また、あとでな。」




ローウェルはそういうと、俺の肩に手をのせた後、部屋をあとにした。キースも同じく、俺の肩に手をのせた後に部屋をあとにした。
今は少し、距離を置いた方がよさそうだね………。



「ア、アース………。俺、何と声をかければいいかわからなくて………。すまないッス………。」


見ると、申し訳なさそうな顔をしたジールが涙を浮かべていた。



「ジールが謝ることは何もないよ。でも、参っちゃうよね。アルベルト殿下もとても厳しかったし………。」


「本当にそうッスよね! 本来ならば、敵の戦力や状況を考えて、殿下を守り切ったことを称えられるべきなのに、罰が与えられるなんておかしいと思うッス………。アルベルト殿下の側近の皆さんも、納得しているんッスかね?」



うーん、どうだろうか………。兄上やアルフォンスさんなら、アルベルト殿下に意見を述べてくれたかもしれないけど、何も言わなかったということは、事前に納得していたのだろうか? それとも何か、他に事情があるのだろうか?


「何か、事情があるのかもしれないね………。」


「事情ッスか? というと、やむを得なく、罰を与えたということッスか?」





しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...