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第三章 ウェルカムキャンプ編
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「改めまして、アース・ジーマルと申します。魔導士見習いで、キルヴェスター殿下の側近を拝命しています。戦闘に加えて、回復、感知ができます。」
「………流石、王族の側近を務める魔導士見習のアース様ですね。戦闘だけではなく、回復や感知まで可能とは。私たちでは、足手まといになるのはないでしょうか?」
「そのようなことはないですよ。今回の森にはC級しか出ないようですから、私がしっかりと援護いたします。それでは、オルト様。そちらのお2人のご友人のことをご紹介していただいても
よろしいでしょうか?」
俺がそういうと、オルト様ははっとした表情を浮かべて、居心地悪そうに突っ立っている2人の友人たちを見つめた。
上位である俺と初対面の挨拶をしていないため、この2人は発言することができなかったのだ。
「申し訳ございません、アース様。こちらがケラト・グールスです。」
オルト様の紹介を受けた彼は、手のひらを左胸にあてて貴族の礼をした。
薄茶色の髪で、真面目そうな印象だ。
「ケラト・グールスと申します。騎士見習です。」
あれ、もう終わり? もともと口数が少ないのかな?
するとオルト様がケラト様の脇腹を肘で小突いて、ひそひそと小声で会話を始めた。
「おい、ケラト! もう少し、何かないのか? 自己紹介が短すぎるぞ!」
「何かと言われても困る。あまり自分のことを話すのが得意ではないし、そもそも何もないからな。」
何もないって………剣を振ること以外、特に話すようなことがないのだろうか?
騎士見習のようだし、趣味も得意なことを剣なのかもしれない。
「お2人はとても仲がいいのですね。」
俺がクスクスと笑いながらそう言うと、2人はバツの悪そうな表情を浮かべてうつむいてしまった。
すると、もう1人の淡い黄色の髪の少年が早く紹介してほしいとでも言いたげな表情で、オルト様の肩をたたいた。
「し、失礼いたしました。もう1人のこちらは、ドール・セーラスといいます。」
「ご紹介にあずかりました、ドールです! 魔導士見習です! アース様とお話してみたいと思っておりましたので、嬉しいです!」
「わ、私のことをご存じだったのですか?」
俺がそういうと、3人は微妙な表情を浮かべて視線を交わし合っていた。
たしかに同じアーキウェル王国の貴族だけど、初学院の時は階級でクラスが分けられかつ在学期間の短かった俺のことをどうして知っていたのだろうか?
「………私たちの学年で、アース様のことを知らない者はほとんどいないと思います。その、初学院のころから話題の中心でしたし、現在もその………色々な意味で目立って
おいでですから。」
「た、たしかにそうかもしれないですね………。やはり、王族の側近というのは目立つもののようですね。」
俺がそういうと、3人は再び微妙な表情を浮かべたが、すぐに貴族スマイルでうなずいてくれた。
………何か変なことを言ったかな?
「ええ、王族の側近に選ばれることは大変名誉なことですからね。そ、そういえば、正式に私の自己紹介をしていませんでしたね。改めまして、オルト・ヴィータと申します。
騎士見習です。尊敬する騎士は、キルヴェスター殿下です。」
「殿下を尊敬しているのですか! キルヴェスター殿下を尊敬している騎士見習と初めてお会いしました。参考までに、どのようなところを尊敬しているのかお伺いしてもよろ
しいでしょうか?」
キルのことを王族として尊敬している人はたくさんいるだろうけど、騎士として尊敬している人は珍しいかもしれない。
キルのかっこよさについてこれから談義できるかもしれないので、是非詳しくお話を聞きたい。
「私のような下級貴族が、キルヴェスター殿下を尊敬するのはおこがましいかもしれないのですが………。貴族院初日の朝早くに騎士棟で、キルヴェスター殿下をお見かけしました。
私は騎士棟がどのようなところか楽しみで、興奮して朝早く目覚めてしまい、騎士棟を見るために訪れたのですが………そこには、剣を無心で振っている殿下のお姿がありました。
王族である殿下が、朝早くから剣を振っている姿に心を奪われました。私も騎士となるために努力していたつもりですが、まだまだだと思い知りました。」
「全然おこがましくないすよ。王族の殿下があのように努力していると知れば、私たちももっと努力しなければならない思いますよね。………ただ、オルト様。睡眠時間や食事の時間を犠牲にして剣を振るのは
ダメですよ。殿下にも昨日、その旨を注意いたしました。成長期である私たちには、訓練とそのほかの睡眠や食事、勉強の両立は不可欠なのです。」
俺がそういうと、オルト様は神妙な面持ちでうなずいた。
前途有望な彼をオーバーワークでつぶすわけにはいかない。オルト様が理解してくれたようで、なによりである。
そこまで話したところで、この時間は終了となった。
彼らとは身分差があることで少々壁があるが、もう少し話していけばいい友人になれると思う。………ウェルカムキャンプ、楽しみだな。
「………流石、王族の側近を務める魔導士見習のアース様ですね。戦闘だけではなく、回復や感知まで可能とは。私たちでは、足手まといになるのはないでしょうか?」
「そのようなことはないですよ。今回の森にはC級しか出ないようですから、私がしっかりと援護いたします。それでは、オルト様。そちらのお2人のご友人のことをご紹介していただいても
よろしいでしょうか?」
俺がそういうと、オルト様ははっとした表情を浮かべて、居心地悪そうに突っ立っている2人の友人たちを見つめた。
上位である俺と初対面の挨拶をしていないため、この2人は発言することができなかったのだ。
「申し訳ございません、アース様。こちらがケラト・グールスです。」
オルト様の紹介を受けた彼は、手のひらを左胸にあてて貴族の礼をした。
薄茶色の髪で、真面目そうな印象だ。
「ケラト・グールスと申します。騎士見習です。」
あれ、もう終わり? もともと口数が少ないのかな?
するとオルト様がケラト様の脇腹を肘で小突いて、ひそひそと小声で会話を始めた。
「おい、ケラト! もう少し、何かないのか? 自己紹介が短すぎるぞ!」
「何かと言われても困る。あまり自分のことを話すのが得意ではないし、そもそも何もないからな。」
何もないって………剣を振ること以外、特に話すようなことがないのだろうか?
騎士見習のようだし、趣味も得意なことを剣なのかもしれない。
「お2人はとても仲がいいのですね。」
俺がクスクスと笑いながらそう言うと、2人はバツの悪そうな表情を浮かべてうつむいてしまった。
すると、もう1人の淡い黄色の髪の少年が早く紹介してほしいとでも言いたげな表情で、オルト様の肩をたたいた。
「し、失礼いたしました。もう1人のこちらは、ドール・セーラスといいます。」
「ご紹介にあずかりました、ドールです! 魔導士見習です! アース様とお話してみたいと思っておりましたので、嬉しいです!」
「わ、私のことをご存じだったのですか?」
俺がそういうと、3人は微妙な表情を浮かべて視線を交わし合っていた。
たしかに同じアーキウェル王国の貴族だけど、初学院の時は階級でクラスが分けられかつ在学期間の短かった俺のことをどうして知っていたのだろうか?
「………私たちの学年で、アース様のことを知らない者はほとんどいないと思います。その、初学院のころから話題の中心でしたし、現在もその………色々な意味で目立って
おいでですから。」
「た、たしかにそうかもしれないですね………。やはり、王族の側近というのは目立つもののようですね。」
俺がそういうと、3人は再び微妙な表情を浮かべたが、すぐに貴族スマイルでうなずいてくれた。
………何か変なことを言ったかな?
「ええ、王族の側近に選ばれることは大変名誉なことですからね。そ、そういえば、正式に私の自己紹介をしていませんでしたね。改めまして、オルト・ヴィータと申します。
騎士見習です。尊敬する騎士は、キルヴェスター殿下です。」
「殿下を尊敬しているのですか! キルヴェスター殿下を尊敬している騎士見習と初めてお会いしました。参考までに、どのようなところを尊敬しているのかお伺いしてもよろ
しいでしょうか?」
キルのことを王族として尊敬している人はたくさんいるだろうけど、騎士として尊敬している人は珍しいかもしれない。
キルのかっこよさについてこれから談義できるかもしれないので、是非詳しくお話を聞きたい。
「私のような下級貴族が、キルヴェスター殿下を尊敬するのはおこがましいかもしれないのですが………。貴族院初日の朝早くに騎士棟で、キルヴェスター殿下をお見かけしました。
私は騎士棟がどのようなところか楽しみで、興奮して朝早く目覚めてしまい、騎士棟を見るために訪れたのですが………そこには、剣を無心で振っている殿下のお姿がありました。
王族である殿下が、朝早くから剣を振っている姿に心を奪われました。私も騎士となるために努力していたつもりですが、まだまだだと思い知りました。」
「全然おこがましくないすよ。王族の殿下があのように努力していると知れば、私たちももっと努力しなければならない思いますよね。………ただ、オルト様。睡眠時間や食事の時間を犠牲にして剣を振るのは
ダメですよ。殿下にも昨日、その旨を注意いたしました。成長期である私たちには、訓練とそのほかの睡眠や食事、勉強の両立は不可欠なのです。」
俺がそういうと、オルト様は神妙な面持ちでうなずいた。
前途有望な彼をオーバーワークでつぶすわけにはいかない。オルト様が理解してくれたようで、なによりである。
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