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それからの俺と木製椅子(番外編)
メロディアとスピカ、服を買う
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「ほんとにいいんスか?」
事前に聖女さんの休日を把握しておいたお陰で、1時間程度ならと聖女さんの彼氏を伴わず外出が認められた。
聖女さんの彼氏…初めてあったが、かなり神経質そうだ。
聖女さんの話では「子どもの頃は少しでもうちの姿が見えなくなると心配すぎてパニックを起こしたほどなんすよ」とのこと。
過保護にも程があるが、それだけ溺愛しているのだろう。
魔樹木を肌見放さず持ち歩いている俺みたいなもんだ。
「あるじさま、スピカとおそろいの服、買ってくれるって」
「うちも一緒になんて、太っ腹ッスねえ~。でも、ほんとにうちでいいんスか?あの、公爵令嬢さん…える、えるでりんで?さん?」
「エデルだよ、メロディア」
「そうそう!エデルさんッスね!あの人の方が、スピカさんとのお揃いを喜びそうッスけど…」
「聖女さんがいいんだ」
「告白ッスか?」聖女さんが茶化す。
シャレにならないからやめてほしいんだが、スピカは全く気にしていないのかニコニコと笑顔なのが救いだった。
これでお揃いを辞めると言われたらどうしようかと思ったが。
今日のスピカは魔樹木から姿を変え、人形として顕現している。
お馴染みのロングチュールスカート姿のスピカは、聖女さんとああでもないこうでもないとブティックに置かれた服を相談して物色している。
「あのね、リディア、ピンクが好きだったの」
「リディア叔母さまが?」
「リディアの魔石。ピンクだったから。教会の人、スピカ達に白を着せたがった。でも、本当は…スピカ、お揃いの服。ピンクがいいな。リディアとメロディアの色」
「…そうッスねえ。ピンクなら、このあたりから選ぶ感じッスね!あとはサイズと…形。うちとスピカさんじゃ胸の大きさが違うんで、どっちに合わせるかッスよねえ…」
「試着する?」
「あー、着るまでもないと思うッスよ?パツパツかダボダボになっちゃうッス」
「…これは?」
スピカが指差したのはパッド付のブラトップ型のワンピースだった。
胸の大きさはある程度調節が効く。
2人で1つの試着室を使ってキャーキャー言い合いながら試着を終えた2人は、俺に感想を求めてきた。
「この胸の差…。うーん、虚しくなるッスねえ」
「あるじさま。似合う?」
「きれいだよ、スピカ」
「えへへ。メロディアとお揃い。とっても素敵」
「形が一緒なら、スカートの丈も合わせる必要はないんじゃないか?」
「そうッスよねえ。うち、ロングスカートって動きづらくて。スピカさん。短いのを選んでもいいッスか?」
「膝下くらいがすてき」
「うーん。うちは膝上がいいんスけど…あんまり短いの、外で着てるとうるさいのがいるんで…」
「彼氏さん?」
「そうッス。なんか、下着が見えそうなレベルの服を着ていいのは家の中だけって約束させられているんスよね。うちもたまにはおしゃれしたいんスけど…」
「…あるじさまのお家で、おしゃれ…する?」
「そうッスねえ、スピカさんとファッションショー!楽しそうッス!」
この二人、スピカが人間だった頃の年齢で考えれば、親子ほど年の差があるがーー。
まるで同年代の友人と見間違うほど仲の良い姿は、スピカが聖女さんを先代聖女様として見ているからか。
「今日はありがとうございました!今度スピカさんにお会いする時は、一緒にこの服着て遊びに行くッスよ!」
「いえーい」
「いえーい!祭りッス~!」
「メロディア」
紙袋を抱えてスピカとハイタッチした聖女さんは、誰かに名前を呼ばれて振り返る。
聖女さんの名前を呼んだのは、帽子を深く被った神経質そうな男だ。
不審者かと警戒すれば、聖女さんはぶんぶんと男に向かって手を振った。
「あっ。紹介するッス!うちの大事な人ッスよ!」
「…どうも」
「どうも」
「あるじさま、この人。メロディアの彼氏?」
「そうみたいだな」
「今日、お買い物に付き合ってもらったスピカさんとラクルスさんッス!スピカさんとお揃いのお洋服、奢ってもらったんスよ~!」
「…ああ」
「もしかして疑っています?大丈夫ッスよ!言ったじゃないッスか?お二人はご夫婦だって!」
「聞いた」
「もー。ご機嫌斜めッスか?ラクルスさんは、ラビユーさんとも交流があるるんスよ!」
「…姉ちゃんと?」
ああ…そういえば。スレインさんが、聖女さんの大切な人はラビユーの弟だって言っていたような。
驚いている彼に会釈すれば、ふうんと深く帽子を被り直すと、聖女さんの手を引いて去っていった。
「あるじさま、睨まれた?」
「睨まれたな…」
既婚者だって言っているのにあれだけ睨んで来るなら、聖女さんの側に控えていたマスティフは視線で何度も殺されているに違いない。
俺が独身だったら…考えたくもないな。
「魔力、足りるか?」
「ん、ちょっとお腹すいた。あるじさま。魔力、スピカにちょうだい」
タラレバを恐れても仕方ない。可愛くおねだりしてくるスピカを満足させるべく、俺はスピカの肩に触れて引き寄せ、魔力譲渡をしながら帰路についた。
事前に聖女さんの休日を把握しておいたお陰で、1時間程度ならと聖女さんの彼氏を伴わず外出が認められた。
聖女さんの彼氏…初めてあったが、かなり神経質そうだ。
聖女さんの話では「子どもの頃は少しでもうちの姿が見えなくなると心配すぎてパニックを起こしたほどなんすよ」とのこと。
過保護にも程があるが、それだけ溺愛しているのだろう。
魔樹木を肌見放さず持ち歩いている俺みたいなもんだ。
「あるじさま、スピカとおそろいの服、買ってくれるって」
「うちも一緒になんて、太っ腹ッスねえ~。でも、ほんとにうちでいいんスか?あの、公爵令嬢さん…える、えるでりんで?さん?」
「エデルだよ、メロディア」
「そうそう!エデルさんッスね!あの人の方が、スピカさんとのお揃いを喜びそうッスけど…」
「聖女さんがいいんだ」
「告白ッスか?」聖女さんが茶化す。
シャレにならないからやめてほしいんだが、スピカは全く気にしていないのかニコニコと笑顔なのが救いだった。
これでお揃いを辞めると言われたらどうしようかと思ったが。
今日のスピカは魔樹木から姿を変え、人形として顕現している。
お馴染みのロングチュールスカート姿のスピカは、聖女さんとああでもないこうでもないとブティックに置かれた服を相談して物色している。
「あのね、リディア、ピンクが好きだったの」
「リディア叔母さまが?」
「リディアの魔石。ピンクだったから。教会の人、スピカ達に白を着せたがった。でも、本当は…スピカ、お揃いの服。ピンクがいいな。リディアとメロディアの色」
「…そうッスねえ。ピンクなら、このあたりから選ぶ感じッスね!あとはサイズと…形。うちとスピカさんじゃ胸の大きさが違うんで、どっちに合わせるかッスよねえ…」
「試着する?」
「あー、着るまでもないと思うッスよ?パツパツかダボダボになっちゃうッス」
「…これは?」
スピカが指差したのはパッド付のブラトップ型のワンピースだった。
胸の大きさはある程度調節が効く。
2人で1つの試着室を使ってキャーキャー言い合いながら試着を終えた2人は、俺に感想を求めてきた。
「この胸の差…。うーん、虚しくなるッスねえ」
「あるじさま。似合う?」
「きれいだよ、スピカ」
「えへへ。メロディアとお揃い。とっても素敵」
「形が一緒なら、スカートの丈も合わせる必要はないんじゃないか?」
「そうッスよねえ。うち、ロングスカートって動きづらくて。スピカさん。短いのを選んでもいいッスか?」
「膝下くらいがすてき」
「うーん。うちは膝上がいいんスけど…あんまり短いの、外で着てるとうるさいのがいるんで…」
「彼氏さん?」
「そうッス。なんか、下着が見えそうなレベルの服を着ていいのは家の中だけって約束させられているんスよね。うちもたまにはおしゃれしたいんスけど…」
「…あるじさまのお家で、おしゃれ…する?」
「そうッスねえ、スピカさんとファッションショー!楽しそうッス!」
この二人、スピカが人間だった頃の年齢で考えれば、親子ほど年の差があるがーー。
まるで同年代の友人と見間違うほど仲の良い姿は、スピカが聖女さんを先代聖女様として見ているからか。
「今日はありがとうございました!今度スピカさんにお会いする時は、一緒にこの服着て遊びに行くッスよ!」
「いえーい」
「いえーい!祭りッス~!」
「メロディア」
紙袋を抱えてスピカとハイタッチした聖女さんは、誰かに名前を呼ばれて振り返る。
聖女さんの名前を呼んだのは、帽子を深く被った神経質そうな男だ。
不審者かと警戒すれば、聖女さんはぶんぶんと男に向かって手を振った。
「あっ。紹介するッス!うちの大事な人ッスよ!」
「…どうも」
「どうも」
「あるじさま、この人。メロディアの彼氏?」
「そうみたいだな」
「今日、お買い物に付き合ってもらったスピカさんとラクルスさんッス!スピカさんとお揃いのお洋服、奢ってもらったんスよ~!」
「…ああ」
「もしかして疑っています?大丈夫ッスよ!言ったじゃないッスか?お二人はご夫婦だって!」
「聞いた」
「もー。ご機嫌斜めッスか?ラクルスさんは、ラビユーさんとも交流があるるんスよ!」
「…姉ちゃんと?」
ああ…そういえば。スレインさんが、聖女さんの大切な人はラビユーの弟だって言っていたような。
驚いている彼に会釈すれば、ふうんと深く帽子を被り直すと、聖女さんの手を引いて去っていった。
「あるじさま、睨まれた?」
「睨まれたな…」
既婚者だって言っているのにあれだけ睨んで来るなら、聖女さんの側に控えていたマスティフは視線で何度も殺されているに違いない。
俺が独身だったら…考えたくもないな。
「魔力、足りるか?」
「ん、ちょっとお腹すいた。あるじさま。魔力、スピカにちょうだい」
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