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7・公爵家の愛娘、仲直り大作戦 ぱーとつー
2匹の神獣みたいに
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「ただいまー!」
「お帰り、ロルティ」
元気いっぱいな様子でカイブルとともに自室へ戻ってきたロルティは、室内で本を読んで待っていた兄と笑い合う。
そんな中「初めまして!」と挨拶をするように、純白の毛並みを持つ大型犬が勢いよく飛び出して行く。
「わふっ!」
「む、むきゅう……?」
部屋の隅で小さくなっていたアンゴラウサギは、突如現れた種族違いの仲間を不思議そうに見つめる。
犬はウサギの小さな身体を口で加えると、背中に乗せて「一緒に遊ぼう」と語りかけた。
「んきゅ……!」
「わふーん!」
アンゴラウサギは一目散に犬の背から飛び降り部屋の隅に挟まって逃げたが、犬は何度もじゃれ合いを繰り返す。
「きゅ……う……」
「わふ?」
小動物は最初こそ嫌がっていたものの、執拗に大型犬に迫られて観念したらしい。
やがて鳴き声を上げることなく、大人しくなる。
(よかった……。2匹は、仲良しになれたみたい……)
その様子を目にした幼子は、ほっと胸を撫で下ろす。
(このままおかあしゃまとおにいしゃまも、手を取り合えたらいいんだけど……)
ロルティが物憂げな表情をしていると、それを見かねたカイブルが声をかける。
「ロルティ様。ジュロド様に、お渡しするべきものがあるのではないでしょうか」
「あ! そうだった!」
ロルティは胸元に抱きしめていた小さな王冠を兄へ手渡した。
「はい! おにいしゃま!」
「僕にくれるのかい?」
「うん! 家族みんなで、おそろいなの!」
「そうか……」
ジュロドはそれを受け取ると、どこか寂しそうに目を伏せる。
さきほどルティアーナが見せた表情と全く同じだと気づき、ロルティは不安そうに俯いた。
「おにいしゃまも、おかあしゃまと同じお顔をしてる……」
「僕はルティアーナさんとは、似てないよ?」
「うんん。そっくり!」
兄の不思議そうな声とともに顔を上げた妹は、勢いよく声を吐き出した。
「あのね。2人とも、寂しそうにするの。でも、もう心配いらないよ!」
「どうして?」
「次はおにいしゃまと会いに来るって言ったら、おかあしゃまは待ってるって! わたしに微笑んでくれたの!」
ロルティは必死に、浮かない顔をしているジュロドの説得に走る。
「だからね、おにいしゃま! 今度は、わたしと一緒におかあしゃまへ会いに行こう!」
「でも、僕は……」
「ジュロド様。今すぐにお決めになる必要はないかと。ゆっくり時間をかけて、気持ちの整理がついた時に……」
「う、うるさい! わかってる! 僕とロルティの会話に、口を挟むな!」
「ひっ」
そんな兄妹の会話を見かねて護衛騎士が声を上げたのは、どうやら逆効果であったらしい。
苛立ちを募らせたジュロドの怒声に帯びたロルティは、悲鳴を上げて翡翠の瞳に涙を浮かべる。
その後、カイブルに引っついた。
「ひ、ひっく……。お、おにいしゃま、怖い……」
「なんで僕じゃなくて、こんな奴を頼るんだ!」
「大声を出すのは、お控えください。ロルティ様が、怯えていらっしゃいます」
「ぐ……っ。ロルティにとって一番の理解者は、僕でなければいけないのに……!」
いくら仲直りとしたとも言えども、最愛の妹に頼られるのが自分ではなく護衛騎士だったことに苛立ちを隠せなかったのだろう。
カイブルから静かに諭された兄は、歯ぎしりをしながら苦痛に耐える。
「お前とルティアーナさんが戻ってきてから、散々だ!」
ジュロドはそう怒鳴り声を上げると、妹から受け取った小さな王冠を大切そうに抱き上げ? 寝台の上に寝転がってふて寝をしてしまった。
(おやすみしているおにいしゃまを起こそうとするのは、よくないことだってわかっているよ? でも……)
ロルティはいてもたってもいられず、カイブルから身体を離す。
そうして小さな足を動かし、自らもベッドの上によじ登って問いかける。
「おにいしゃま、怒ってる……?」
「ロルティに対しては、なんとも思っていないよ」
「でも……。わたしがおかあしゃまに、会ってほしいって言ったから……」
「それは違う。僕が苛立っているのは、あいつに対してだ。本当に、忌々しい……」
妹が悲しそうにしている原因が自分だと思えば、いつまで経っても怒っている気にはならなかったのかもしれない。
ジュロドは申し訳なさそうに表情を歪めると、ロルティに謝罪をした。
「驚かせて、ごめんね」
「うんん。わたしのほうこそ! ごめんなさい……」
こうして仲直りを終えた兄妹は優しく口元を綻ばせて笑い合う。
「ルティアーナさんへ会いに行くかどうかは、もう少しだけ考えさせてほしい」
「うん。わかった!」
ロルティは満面の笑みを浮かべ、こてりと兄の隣に転がった。
それを添い寝の合図だと悟ったジュロドに小さな身体を抱き寄せられ、兄妹はほぼ同時に瞑る。
その後、眠りの国へと誘われた。
「お帰り、ロルティ」
元気いっぱいな様子でカイブルとともに自室へ戻ってきたロルティは、室内で本を読んで待っていた兄と笑い合う。
そんな中「初めまして!」と挨拶をするように、純白の毛並みを持つ大型犬が勢いよく飛び出して行く。
「わふっ!」
「む、むきゅう……?」
部屋の隅で小さくなっていたアンゴラウサギは、突如現れた種族違いの仲間を不思議そうに見つめる。
犬はウサギの小さな身体を口で加えると、背中に乗せて「一緒に遊ぼう」と語りかけた。
「んきゅ……!」
「わふーん!」
アンゴラウサギは一目散に犬の背から飛び降り部屋の隅に挟まって逃げたが、犬は何度もじゃれ合いを繰り返す。
「きゅ……う……」
「わふ?」
小動物は最初こそ嫌がっていたものの、執拗に大型犬に迫られて観念したらしい。
やがて鳴き声を上げることなく、大人しくなる。
(よかった……。2匹は、仲良しになれたみたい……)
その様子を目にした幼子は、ほっと胸を撫で下ろす。
(このままおかあしゃまとおにいしゃまも、手を取り合えたらいいんだけど……)
ロルティが物憂げな表情をしていると、それを見かねたカイブルが声をかける。
「ロルティ様。ジュロド様に、お渡しするべきものがあるのではないでしょうか」
「あ! そうだった!」
ロルティは胸元に抱きしめていた小さな王冠を兄へ手渡した。
「はい! おにいしゃま!」
「僕にくれるのかい?」
「うん! 家族みんなで、おそろいなの!」
「そうか……」
ジュロドはそれを受け取ると、どこか寂しそうに目を伏せる。
さきほどルティアーナが見せた表情と全く同じだと気づき、ロルティは不安そうに俯いた。
「おにいしゃまも、おかあしゃまと同じお顔をしてる……」
「僕はルティアーナさんとは、似てないよ?」
「うんん。そっくり!」
兄の不思議そうな声とともに顔を上げた妹は、勢いよく声を吐き出した。
「あのね。2人とも、寂しそうにするの。でも、もう心配いらないよ!」
「どうして?」
「次はおにいしゃまと会いに来るって言ったら、おかあしゃまは待ってるって! わたしに微笑んでくれたの!」
ロルティは必死に、浮かない顔をしているジュロドの説得に走る。
「だからね、おにいしゃま! 今度は、わたしと一緒におかあしゃまへ会いに行こう!」
「でも、僕は……」
「ジュロド様。今すぐにお決めになる必要はないかと。ゆっくり時間をかけて、気持ちの整理がついた時に……」
「う、うるさい! わかってる! 僕とロルティの会話に、口を挟むな!」
「ひっ」
そんな兄妹の会話を見かねて護衛騎士が声を上げたのは、どうやら逆効果であったらしい。
苛立ちを募らせたジュロドの怒声に帯びたロルティは、悲鳴を上げて翡翠の瞳に涙を浮かべる。
その後、カイブルに引っついた。
「ひ、ひっく……。お、おにいしゃま、怖い……」
「なんで僕じゃなくて、こんな奴を頼るんだ!」
「大声を出すのは、お控えください。ロルティ様が、怯えていらっしゃいます」
「ぐ……っ。ロルティにとって一番の理解者は、僕でなければいけないのに……!」
いくら仲直りとしたとも言えども、最愛の妹に頼られるのが自分ではなく護衛騎士だったことに苛立ちを隠せなかったのだろう。
カイブルから静かに諭された兄は、歯ぎしりをしながら苦痛に耐える。
「お前とルティアーナさんが戻ってきてから、散々だ!」
ジュロドはそう怒鳴り声を上げると、妹から受け取った小さな王冠を大切そうに抱き上げ? 寝台の上に寝転がってふて寝をしてしまった。
(おやすみしているおにいしゃまを起こそうとするのは、よくないことだってわかっているよ? でも……)
ロルティはいてもたってもいられず、カイブルから身体を離す。
そうして小さな足を動かし、自らもベッドの上によじ登って問いかける。
「おにいしゃま、怒ってる……?」
「ロルティに対しては、なんとも思っていないよ」
「でも……。わたしがおかあしゃまに、会ってほしいって言ったから……」
「それは違う。僕が苛立っているのは、あいつに対してだ。本当に、忌々しい……」
妹が悲しそうにしている原因が自分だと思えば、いつまで経っても怒っている気にはならなかったのかもしれない。
ジュロドは申し訳なさそうに表情を歪めると、ロルティに謝罪をした。
「驚かせて、ごめんね」
「うんん。わたしのほうこそ! ごめんなさい……」
こうして仲直りを終えた兄妹は優しく口元を綻ばせて笑い合う。
「ルティアーナさんへ会いに行くかどうかは、もう少しだけ考えさせてほしい」
「うん。わかった!」
ロルティは満面の笑みを浮かべ、こてりと兄の隣に転がった。
それを添い寝の合図だと悟ったジュロドに小さな身体を抱き寄せられ、兄妹はほぼ同時に瞑る。
その後、眠りの国へと誘われた。
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