転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠

文字の大きさ
46 / 93
7・公爵家の愛娘、仲直り大作戦 ぱーとつー

おかあしゃまとおにいしゃま

「おにいしゃま! 手と足が同時に出てるよ!」

 ――それから1週間後。
 ハリスドロア公爵家の兄妹は、母親の寝室に繋がる扉の前に肩を並べて立っていた。
 2人の後方には、護衛騎士の姿がある。
 彼は子ども達の会話を、微笑ましそうに見守っていた。

「ロルティのお母さんが、悪い人ではないとわかってはいるんだ。でも……。僕はルティアーナさんにとっては、異物でしか……」
「もう! おにいしゃま! また暗い顔した!」

 妹は憤慨した様子でぷんすかと怒りを露わにし、ノックもなしにドアを勢いよく開け放ってから兄を室内へ引きずり込んだ。

「うわぁっ」
「おかあしゃま! おにいしゃま、連れてきたよ!」
「まぁ……。いらっしゃい。ロルティ。それから……。こうして面と向かってお話するのは初めてね。ジュロドくん」
「こ、こんにちは……」

 ルティアーナに声をかけられたジュロドはいつでも妹に優しく接し、カイブルと言い合いをする時以外は冷静沈着な姿はどこへやら。
 硬い表情でペコリと頭を下げた。

「ごめんなさいね。ロルティが、無理を言ったのでしょう……?」
「いえ……。僕も、ずっとお会いしたいと思っていました。ご挨拶が遅れ、申し訳ございません」
「いえいえ……。私のほうこそ……」

 その様子を目にしたロルティは、不満そうに口をへの字に曲げた。

  (2人は家族なのに、なんだか他人行儀みたい……。顔を合わせただけじゃ、意味ないよ。もっと仲良しになるには、どうしたらいいんだろう……?)

 幼子はたくさん頭を悩ませ、そうしてある答えを導き出す。

  (そうだ! わたしがお互いのいいところを、教えてあげよう!)

 そうと決まれば、さっそく実行に移すべきだ。
 そう考えたロルティは、まずは母親に兄のいいところを話し始めた。

「あのね! おにいしゃまは、とっても優しいの!」
「そう……。いつもロルティと一緒にいてくれて、ありがとう」
「いえ……」

 しかし、ジュロドの反応は思わしくない。

  (諦めるのは、まだ早いよ! おかあしゃまのいいところを、伝えきれてないもん!)

 ロルティは次に、兄に向かって母親のいいところを口にする。

「おかあしゃまは、とっても綺麗なんだよ!」
「翡翠の瞳を持つ2人の聖女とこうして話せて、光栄です」
「そんな……。公爵令息に畏まっていただくような身分ではないのよ? もっと、楽にしてくれると嬉しいわ」
「そういうわけにはいきません。僕の母が……。あなたを……」
「いいのよ。ジュロドくんは、気にしなくても。親の罪を子に償えなんて、言えないもの……。それに、私のせいで奥様は……」

 どうやらこの2人には、ロルティが知らない確執が隠されているようだ。

  (わたしは子どもだから……。教えてほしいってお願いしても、答えてもらえないよね……)

 顔を合わせてからも不穏な空気を醸し出す2人を、どうやって仲良くできるのだろうか?

  (今の私にできることは、限られている。でも……。無理を言って、こうして集まってもらったんだもん。このままなんて、絶対に嫌だよ……!)

 ロルティはドレスの裾を握りしめると、勢いよく2人の会話へ割って入るように声を吐き出した。

「おかあしゃま! わたしとおにいしゃまに、手芸を教えてほしいの!」
「ロルティ……?」
「あのね。この間、うさぎしゃんの毛を糸にしたんだ! それを、おとうしゃまがリボンにしてくれたんだけど……。わたしも、何か作りたい!」

 ルティアーナは不思議そうに首を傾げていたが、やがて娘の願いを受け入れるために、隣で目を丸くするジュロドに問いかけた。

「ジュロドくんも一緒に、やってみる?」
「僕は、ロルティを手伝います」
「そう……。わかったわ。それじゃあ、みんなで作業をしましょうか」
「うん!」

 ロルティが頷けば、壁際に控えていた使用人達の動きが慌ただしくなる。
 彼らは驚くほど速い動きでかぎ針と毛糸を持ってくると、母親に手渡した。

「まだ小さな2人には、難しいかもしれないけれど……。毎日少しづつやっていけば、いつかはきっと完成するわ」
「おにいしゃま! 頑張ろうね!」
「うん……」

 こうして子ども達は母親と交流を深める一環として、アンゴラウサギの毛糸で作ったコットンハンカチを編むことになったのだった。

あなたにおすすめの小説

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される

黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」 無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!? 自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。 窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!

【完結】帳簿令嬢の答え合わせ ~その不正、すべて帳簿が覚えています~

Lihito
ファンタジー
公爵令嬢アイリスは、身に覚えのない罪で婚約破棄され、辺境へ追放された。 だが彼女には秘密がある。 前世は経理OL。そして今世では、物や土地の「価値」が数字で見える能力を持っていた。 公爵家の帳簿を一手に管理していたのは、実は彼女。 追い出した側は、それを知らない。 「三ヶ月で破産すると思うけど……まあ、私には関係ないわね」 荒れ果てた辺境領。誰も気づかなかった資源。無口な護衛騎士。 アイリスは数字を武器に、この土地を立て直すことを決意する。 ——追い出したこと、後悔させてあげる。 ※毎日18時更新 ※表紙画像はAIにて作成しています ※ 旧題:婚約破棄された令嬢ですが、帳簿があれば辺境でも無双できます

婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。 「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」 周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。 アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。 ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。 その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。 そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました