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7・公爵家の愛娘、仲直り大作戦 ぱーとつー
おかあしゃまとおにいしゃま
「おにいしゃま! 手と足が同時に出てるよ!」
――それから1週間後。
ハリスドロア公爵家の兄妹は、母親の寝室に繋がる扉の前に肩を並べて立っていた。
2人の後方には、護衛騎士の姿がある。
彼は子ども達の会話を、微笑ましそうに見守っていた。
「ロルティのお母さんが、悪い人ではないとわかってはいるんだ。でも……。僕はルティアーナさんにとっては、異物でしか……」
「もう! おにいしゃま! また暗い顔した!」
妹は憤慨した様子でぷんすかと怒りを露わにし、ノックもなしにドアを勢いよく開け放ってから兄を室内へ引きずり込んだ。
「うわぁっ」
「おかあしゃま! おにいしゃま、連れてきたよ!」
「まぁ……。いらっしゃい。ロルティ。それから……。こうして面と向かってお話するのは初めてね。ジュロドくん」
「こ、こんにちは……」
ルティアーナに声をかけられたジュロドはいつでも妹に優しく接し、カイブルと言い合いをする時以外は冷静沈着な姿はどこへやら。
硬い表情でペコリと頭を下げた。
「ごめんなさいね。ロルティが、無理を言ったのでしょう……?」
「いえ……。僕も、ずっとお会いしたいと思っていました。ご挨拶が遅れ、申し訳ございません」
「いえいえ……。私のほうこそ……」
その様子を目にしたロルティは、不満そうに口をへの字に曲げた。
(2人は家族なのに、なんだか他人行儀みたい……。顔を合わせただけじゃ、意味ないよ。もっと仲良しになるには、どうしたらいいんだろう……?)
幼子はたくさん頭を悩ませ、そうしてある答えを導き出す。
(そうだ! わたしがお互いのいいところを、教えてあげよう!)
そうと決まれば、さっそく実行に移すべきだ。
そう考えたロルティは、まずは母親に兄のいいところを話し始めた。
「あのね! おにいしゃまは、とっても優しいの!」
「そう……。いつもロルティと一緒にいてくれて、ありがとう」
「いえ……」
しかし、ジュロドの反応は思わしくない。
(諦めるのは、まだ早いよ! おかあしゃまのいいところを、伝えきれてないもん!)
ロルティは次に、兄に向かって母親のいいところを口にする。
「おかあしゃまは、とっても綺麗なんだよ!」
「翡翠の瞳を持つ2人の聖女とこうして話せて、光栄です」
「そんな……。公爵令息に畏まっていただくような身分ではないのよ? もっと、楽にしてくれると嬉しいわ」
「そういうわけにはいきません。僕の母が……。あなたを……」
「いいのよ。ジュロドくんは、気にしなくても。親の罪を子に償えなんて、言えないもの……。それに、私のせいで奥様は……」
どうやらこの2人には、ロルティが知らない確執が隠されているようだ。
(わたしは子どもだから……。教えてほしいってお願いしても、答えてもらえないよね……)
顔を合わせてからも不穏な空気を醸し出す2人を、どうやって仲良くできるのだろうか?
(今の私にできることは、限られている。でも……。無理を言って、こうして集まってもらったんだもん。このままなんて、絶対に嫌だよ……!)
ロルティはドレスの裾を握りしめると、勢いよく2人の会話へ割って入るように声を吐き出した。
「おかあしゃま! わたしとおにいしゃまに、手芸を教えてほしいの!」
「ロルティ……?」
「あのね。この間、うさぎしゃんの毛を糸にしたんだ! それを、おとうしゃまがリボンにしてくれたんだけど……。わたしも、何か作りたい!」
ルティアーナは不思議そうに首を傾げていたが、やがて娘の願いを受け入れるために、隣で目を丸くするジュロドに問いかけた。
「ジュロドくんも一緒に、やってみる?」
「僕は、ロルティを手伝います」
「そう……。わかったわ。それじゃあ、みんなで作業をしましょうか」
「うん!」
ロルティが頷けば、壁際に控えていた使用人達の動きが慌ただしくなる。
彼らは驚くほど速い動きでかぎ針と毛糸を持ってくると、母親に手渡した。
「まだ小さな2人には、難しいかもしれないけれど……。毎日少しづつやっていけば、いつかはきっと完成するわ」
「おにいしゃま! 頑張ろうね!」
「うん……」
こうして子ども達は母親と交流を深める一環として、アンゴラウサギの毛糸で作ったコットンハンカチを編むことになったのだった。
――それから1週間後。
ハリスドロア公爵家の兄妹は、母親の寝室に繋がる扉の前に肩を並べて立っていた。
2人の後方には、護衛騎士の姿がある。
彼は子ども達の会話を、微笑ましそうに見守っていた。
「ロルティのお母さんが、悪い人ではないとわかってはいるんだ。でも……。僕はルティアーナさんにとっては、異物でしか……」
「もう! おにいしゃま! また暗い顔した!」
妹は憤慨した様子でぷんすかと怒りを露わにし、ノックもなしにドアを勢いよく開け放ってから兄を室内へ引きずり込んだ。
「うわぁっ」
「おかあしゃま! おにいしゃま、連れてきたよ!」
「まぁ……。いらっしゃい。ロルティ。それから……。こうして面と向かってお話するのは初めてね。ジュロドくん」
「こ、こんにちは……」
ルティアーナに声をかけられたジュロドはいつでも妹に優しく接し、カイブルと言い合いをする時以外は冷静沈着な姿はどこへやら。
硬い表情でペコリと頭を下げた。
「ごめんなさいね。ロルティが、無理を言ったのでしょう……?」
「いえ……。僕も、ずっとお会いしたいと思っていました。ご挨拶が遅れ、申し訳ございません」
「いえいえ……。私のほうこそ……」
その様子を目にしたロルティは、不満そうに口をへの字に曲げた。
(2人は家族なのに、なんだか他人行儀みたい……。顔を合わせただけじゃ、意味ないよ。もっと仲良しになるには、どうしたらいいんだろう……?)
幼子はたくさん頭を悩ませ、そうしてある答えを導き出す。
(そうだ! わたしがお互いのいいところを、教えてあげよう!)
そうと決まれば、さっそく実行に移すべきだ。
そう考えたロルティは、まずは母親に兄のいいところを話し始めた。
「あのね! おにいしゃまは、とっても優しいの!」
「そう……。いつもロルティと一緒にいてくれて、ありがとう」
「いえ……」
しかし、ジュロドの反応は思わしくない。
(諦めるのは、まだ早いよ! おかあしゃまのいいところを、伝えきれてないもん!)
ロルティは次に、兄に向かって母親のいいところを口にする。
「おかあしゃまは、とっても綺麗なんだよ!」
「翡翠の瞳を持つ2人の聖女とこうして話せて、光栄です」
「そんな……。公爵令息に畏まっていただくような身分ではないのよ? もっと、楽にしてくれると嬉しいわ」
「そういうわけにはいきません。僕の母が……。あなたを……」
「いいのよ。ジュロドくんは、気にしなくても。親の罪を子に償えなんて、言えないもの……。それに、私のせいで奥様は……」
どうやらこの2人には、ロルティが知らない確執が隠されているようだ。
(わたしは子どもだから……。教えてほしいってお願いしても、答えてもらえないよね……)
顔を合わせてからも不穏な空気を醸し出す2人を、どうやって仲良くできるのだろうか?
(今の私にできることは、限られている。でも……。無理を言って、こうして集まってもらったんだもん。このままなんて、絶対に嫌だよ……!)
ロルティはドレスの裾を握りしめると、勢いよく2人の会話へ割って入るように声を吐き出した。
「おかあしゃま! わたしとおにいしゃまに、手芸を教えてほしいの!」
「ロルティ……?」
「あのね。この間、うさぎしゃんの毛を糸にしたんだ! それを、おとうしゃまがリボンにしてくれたんだけど……。わたしも、何か作りたい!」
ルティアーナは不思議そうに首を傾げていたが、やがて娘の願いを受け入れるために、隣で目を丸くするジュロドに問いかけた。
「ジュロドくんも一緒に、やってみる?」
「僕は、ロルティを手伝います」
「そう……。わかったわ。それじゃあ、みんなで作業をしましょうか」
「うん!」
ロルティが頷けば、壁際に控えていた使用人達の動きが慌ただしくなる。
彼らは驚くほど速い動きでかぎ針と毛糸を持ってくると、母親に手渡した。
「まだ小さな2人には、難しいかもしれないけれど……。毎日少しづつやっていけば、いつかはきっと完成するわ」
「おにいしゃま! 頑張ろうね!」
「うん……」
こうして子ども達は母親と交流を深める一環として、アンゴラウサギの毛糸で作ったコットンハンカチを編むことになったのだった。
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23/01/08 表紙画像を変更しました