59 / 95
2章<人魚とロリコン>
皇女様と約束
しおりを挟む
「僕たちは待兼さんを愛しています。僕たちの女神。僕たちの運命を狂わせた、運命の女──」
「お前が捕えてる奴は、待兼じゃねぇ。そいつは待兼によく似た顔達で生まれただけの他人だ」
「いいえ。彼女は待兼さんです。忘れているだけなのですよ。僕たちだって、日本で暮らしていた記憶を思い出したのは、大人になってからです。僕たちが愛を囁き続ければ、彼女はきっと思い出してくれる……」
「いや……っ。しらない!知りません……!」
宙に浮かぶそっくりさんの身体に触れたロリコン野郎の手が、嫌がる彼女の意思など一切気にせず怪しく蠢いている。
皇女様はゴミを見るような目でロリコン野郎を見つめ、あいつはそんな皇女様を見下して興奮しているようだった。変態かよ……。
「キサネ皇女殿下も、待兼さんをとても羨ましそうに見つめていますね。あなたが望むのでしたら、僕が──」
「気持ち悪い。嫌がるお姉ちゃんの自由を奪って、身体に触れるゲス野郎……!」
「もっと蔑んでください……!僕は待兼さんの怯えた表情と、罵倒が大好きなんです……!待兼さんとよく似た顔達のキサネ皇女殿下でしたら、彼女が使い物にならなくなった後、たくさん愛してあげられますよ。魔王様よりも、ずっと……」
皇女様は、気が立っている。
そっくりさんなんかどうでもよかったはずなのに、姉と称するくらいには。
血の繋がりがあっても姉と呼びたくないなんて言われてたそっくりさんは、ショックを受けていたんだろう。
皇女様が姉と称した瞬間に、嬉し涙を流し始めている。
「うぅ……っ。キサネちゃん……っ。不出来なお姉ちゃんで、ごめんね……!もう、魔城で暮らしたくないなんて、わがまま言わないから……っ。助けて……!」
皇女様をちゃん付けで呼んだそっくりさんは、本当の意味で、皇女様を妹として認めたのだろう。
姉妹の絆を確認した俺ができることは、一つしかねぇだろ。
「皇女様は、そっくりさんを助けることだけに集中しろ」
「ハレルヤは?」
「あいつを魔界から追放する。因縁があるんでな。状況によっては、お前らだけ先に魔城へ転移させる。そん時は、ムースと一緒にいろよ」
「それは、やだ!私とハレルヤは、ずっと一緒だもん……!」
皇女様の耳元で囁いた俺に、彼女は縋りついてきた。イチャついてる場合じゃねぇのに、まったく……。
危機感ねぇな。ロリコン野郎が嫌がるそっくりさんの身体を弄んで、相思相愛アピールしてんじゃねぇか。セクハラ変態野郎は、今すぐくたばれ。
「おう。俺達は、何があってもずっと一緒だ」
「約束してね」
「おう」
俺は皇女様を地面へ降ろしてやると、魔剣を呼び寄せる。5年前に、皇帝が魔力で生み出した10本の剣を借りパクして生み出した──雷撃を纏う魔剣は、今では俺の相棒だ。
皇女様もストーカー野郎からパクった魔剣を未だに愛用しているので、俺達はそのうち借りパク魔剣夫婦と呼ばれることになるかもしれねぇな。嬉しくねぇけど。
じゃあ、いっちょやりますか。
「キサネを、俺以上に愛せる奴は居ねぇよ」
「なぜ、言い切れるのですか」
「俺が魔王だからに決まってんだろ?」
皇女様の悲しみを癒やし、愛を注ぎ、慈しめるのは俺だけだ。
魔王以外の根拠なんかねぇ。
俺はドヤ顔で宣言すると、宙に浮かぶ魔剣を手に取り、軽やかに地を蹴った。
「おらよ……っと!」
皇女様が紋章を浮かび上がらせ、唐草模様を足元に展開してくれる。
俺は皇女様が生み出した唐草模様を踏み台に使うと、勢いよく空中へ駆け上がっていく。
「お前が捕えてる奴は、待兼じゃねぇ。そいつは待兼によく似た顔達で生まれただけの他人だ」
「いいえ。彼女は待兼さんです。忘れているだけなのですよ。僕たちだって、日本で暮らしていた記憶を思い出したのは、大人になってからです。僕たちが愛を囁き続ければ、彼女はきっと思い出してくれる……」
「いや……っ。しらない!知りません……!」
宙に浮かぶそっくりさんの身体に触れたロリコン野郎の手が、嫌がる彼女の意思など一切気にせず怪しく蠢いている。
皇女様はゴミを見るような目でロリコン野郎を見つめ、あいつはそんな皇女様を見下して興奮しているようだった。変態かよ……。
「キサネ皇女殿下も、待兼さんをとても羨ましそうに見つめていますね。あなたが望むのでしたら、僕が──」
「気持ち悪い。嫌がるお姉ちゃんの自由を奪って、身体に触れるゲス野郎……!」
「もっと蔑んでください……!僕は待兼さんの怯えた表情と、罵倒が大好きなんです……!待兼さんとよく似た顔達のキサネ皇女殿下でしたら、彼女が使い物にならなくなった後、たくさん愛してあげられますよ。魔王様よりも、ずっと……」
皇女様は、気が立っている。
そっくりさんなんかどうでもよかったはずなのに、姉と称するくらいには。
血の繋がりがあっても姉と呼びたくないなんて言われてたそっくりさんは、ショックを受けていたんだろう。
皇女様が姉と称した瞬間に、嬉し涙を流し始めている。
「うぅ……っ。キサネちゃん……っ。不出来なお姉ちゃんで、ごめんね……!もう、魔城で暮らしたくないなんて、わがまま言わないから……っ。助けて……!」
皇女様をちゃん付けで呼んだそっくりさんは、本当の意味で、皇女様を妹として認めたのだろう。
姉妹の絆を確認した俺ができることは、一つしかねぇだろ。
「皇女様は、そっくりさんを助けることだけに集中しろ」
「ハレルヤは?」
「あいつを魔界から追放する。因縁があるんでな。状況によっては、お前らだけ先に魔城へ転移させる。そん時は、ムースと一緒にいろよ」
「それは、やだ!私とハレルヤは、ずっと一緒だもん……!」
皇女様の耳元で囁いた俺に、彼女は縋りついてきた。イチャついてる場合じゃねぇのに、まったく……。
危機感ねぇな。ロリコン野郎が嫌がるそっくりさんの身体を弄んで、相思相愛アピールしてんじゃねぇか。セクハラ変態野郎は、今すぐくたばれ。
「おう。俺達は、何があってもずっと一緒だ」
「約束してね」
「おう」
俺は皇女様を地面へ降ろしてやると、魔剣を呼び寄せる。5年前に、皇帝が魔力で生み出した10本の剣を借りパクして生み出した──雷撃を纏う魔剣は、今では俺の相棒だ。
皇女様もストーカー野郎からパクった魔剣を未だに愛用しているので、俺達はそのうち借りパク魔剣夫婦と呼ばれることになるかもしれねぇな。嬉しくねぇけど。
じゃあ、いっちょやりますか。
「キサネを、俺以上に愛せる奴は居ねぇよ」
「なぜ、言い切れるのですか」
「俺が魔王だからに決まってんだろ?」
皇女様の悲しみを癒やし、愛を注ぎ、慈しめるのは俺だけだ。
魔王以外の根拠なんかねぇ。
俺はドヤ顔で宣言すると、宙に浮かぶ魔剣を手に取り、軽やかに地を蹴った。
「おらよ……っと!」
皇女様が紋章を浮かび上がらせ、唐草模様を足元に展開してくれる。
俺は皇女様が生み出した唐草模様を踏み台に使うと、勢いよく空中へ駆け上がっていく。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる