85 / 95
皇女に言えない隠し事
目指せ、最強人魚
しおりを挟む
「あんなのと血が繋がってるなんて、おぞましくて口に出すのもやだなぁ。あのね、第一皇子とかもすっごいクソ野郎なんだよ!お姉ちゃん、会ったことある?」
「いえ、わたしは……。何人か兄がいることしか……知りません……」
「ええー、そーなんだ……。ドレス破られたり、髪の毛引っ張られたり、食事に毒を混入させられたのって、私だけなの?お姉ちゃんも、王家でひどい扱いを受けたんだとばっかり……」
「……わたしは、魔界に落とされるまでは……幽閉されてたから……」
ララーシャはキサネがあっけらかんと話した内容を耳にして絶句していた。
明るく元気、太陽みたいに振る舞ってるキサネがひどい扱いを受けているなど、思いもしなかったんだろう。
ひどい扱いを受けてなきゃ、魔界になんざいるはずねぇのに。
ララーシャはキサネを、なんだと思ってんだ?
「幽閉放置プレイは私もやられたけど、お姉ちゃんは運がよかったんだね。あの人たちはサウンドバックにする為、私達をキープしてたんだよ!クッションでも買って、タコ殴りにしてればいいのに!」
「こら、キサネ。殺意が隠しきれてねぇぞ。ララーシャが怯えてる」
姉妹の会話に参加するのはどうかと思ったが、ララーシャが怯えているようだったので声をかけた。
ララーシャは俺が声をかけると怯えるのをやめ、引き攣った笑みを浮かべる。
キサネは妹として信頼しているけど、俺は男だから怖いってやつか?
その逆だったら色々面倒なことになりそうだけど、そりゃねぇだろ。
二人きりにして、キサネの狂気が目覚めても困るんだよな……。どうすっか……。
「ご心配いただき……ありがとう、ございます。わたしは、大丈夫です……」
「お姉ちゃん。ハレルヤは私のだからね?気がある素振りを見せたら、お姉ちゃんだって容赦しないから」
「そ、そんなんじゃ、ない、よ……!」
ララーシャはビニールプールの上でパタパタと尾ひれを焦ったように動かし、水しぶきを飛ばした。
それを可愛らしい反応と取るか、部屋が汚れると取るかはまぁ……考え方によるだろうな。
「怪しい……」
「キサネちゃん!?」
「すごく、怪しい。ハレルヤのこと好きになったら、追い出すからね」
姉を脅す妹って、どうなんだよ。
俺は瞳から光が薄れたキサネを抑え、ララーシャを攻撃しないように宥めた。
「……わたし……。キサネちゃんに……恩返しがしたい……」
「お姉ちゃんが、私に?」
「うん……。キサネちゃんは、魔王様と一緒に……わたしを助けてくれた……。今度は、わたしが……キサネちゃんの力になりたいの……」
この流れなら、押せば思い通りの展開になるかもしれねぇ。
問題は、キサネと事前打ち合わせがうまくできてねぇことか。
人間界に攻め入る話はしたし、自分からついてきたいと立候補してくれたら、早いんだけどな……。
「ハレルヤは私が守って、私をお姉ちゃんが守ってくれるの?」
「……キサネちゃんを守れるくらい……。強く、なりたいです……。魔王様。わたしが強くなるまで……人間界の侵略は待って貰えないでしょうか……」
「おう。いいぜ」
「ありがとう、ございます……。わたし、キサネちゃんを守れるくらい……強くなるから……」
一体どんな心境の変化だ?
俺にはよくわかんねぇけど。ララーシャはキサネを守りたいから、強くなって人間界侵略の瞬間に立ち会うと宣言した。
あんまり精神面の強くないララーシャが強くなるまで最低でも数年は掛かるだろう。
そんなに長くは待ってられねぇけど、やらせてみるか。
「俺は18歳の誕生日を迎えたら、キサネと婚姻する。それまでには人間界の侵略を終わらせたい。そんなに時間は掛けらんねぇから、才能がないと判断したら留守番だ。それでもいいか?」
「は、はい……っ。が、頑張ります……!」
意気込みだけは一人前だな。
俺は魔力の才能もねぇし、教えられることがあるとしたら剣術くらいだ。
ただ、ララーシャは下半身が魚だからな。
2本の足で踏ん張って、剣を振り回すのは難しいとなれば──魔力適性の高いやつが指導に当たるべきだ。
ハムチーズは今、魔族街の監視で手一杯。ムースは本業の針子仕事があるし、暇なのは……キサネ、か……?
「よし。じゃあ、キサネ。ララーシャに魔力の使い方を教えてやってくれ」
「私が教えるの?」
「おう。魔力量は姉妹だし、似たようなもんだろ」
「そうかなぁ……。ハレルヤといちゃつく時間が少なくなるのは、嫌だよ?」
「わかってる。俺も一緒に居るから」
「ほんと?やったー!」
キサネも現金な奴だな。
俺がいるのといないのとじゃモチベーションが違うらしく、ララーシャを鍛える為やる気は充分だ。
「目指せ、最強人魚!」
前世のじぶんそっくりな顔をしたララーシャを苦手に思っているキサネは、そんなこともすっかり忘れて意気込んだ。
「いえ、わたしは……。何人か兄がいることしか……知りません……」
「ええー、そーなんだ……。ドレス破られたり、髪の毛引っ張られたり、食事に毒を混入させられたのって、私だけなの?お姉ちゃんも、王家でひどい扱いを受けたんだとばっかり……」
「……わたしは、魔界に落とされるまでは……幽閉されてたから……」
ララーシャはキサネがあっけらかんと話した内容を耳にして絶句していた。
明るく元気、太陽みたいに振る舞ってるキサネがひどい扱いを受けているなど、思いもしなかったんだろう。
ひどい扱いを受けてなきゃ、魔界になんざいるはずねぇのに。
ララーシャはキサネを、なんだと思ってんだ?
「幽閉放置プレイは私もやられたけど、お姉ちゃんは運がよかったんだね。あの人たちはサウンドバックにする為、私達をキープしてたんだよ!クッションでも買って、タコ殴りにしてればいいのに!」
「こら、キサネ。殺意が隠しきれてねぇぞ。ララーシャが怯えてる」
姉妹の会話に参加するのはどうかと思ったが、ララーシャが怯えているようだったので声をかけた。
ララーシャは俺が声をかけると怯えるのをやめ、引き攣った笑みを浮かべる。
キサネは妹として信頼しているけど、俺は男だから怖いってやつか?
その逆だったら色々面倒なことになりそうだけど、そりゃねぇだろ。
二人きりにして、キサネの狂気が目覚めても困るんだよな……。どうすっか……。
「ご心配いただき……ありがとう、ございます。わたしは、大丈夫です……」
「お姉ちゃん。ハレルヤは私のだからね?気がある素振りを見せたら、お姉ちゃんだって容赦しないから」
「そ、そんなんじゃ、ない、よ……!」
ララーシャはビニールプールの上でパタパタと尾ひれを焦ったように動かし、水しぶきを飛ばした。
それを可愛らしい反応と取るか、部屋が汚れると取るかはまぁ……考え方によるだろうな。
「怪しい……」
「キサネちゃん!?」
「すごく、怪しい。ハレルヤのこと好きになったら、追い出すからね」
姉を脅す妹って、どうなんだよ。
俺は瞳から光が薄れたキサネを抑え、ララーシャを攻撃しないように宥めた。
「……わたし……。キサネちゃんに……恩返しがしたい……」
「お姉ちゃんが、私に?」
「うん……。キサネちゃんは、魔王様と一緒に……わたしを助けてくれた……。今度は、わたしが……キサネちゃんの力になりたいの……」
この流れなら、押せば思い通りの展開になるかもしれねぇ。
問題は、キサネと事前打ち合わせがうまくできてねぇことか。
人間界に攻め入る話はしたし、自分からついてきたいと立候補してくれたら、早いんだけどな……。
「ハレルヤは私が守って、私をお姉ちゃんが守ってくれるの?」
「……キサネちゃんを守れるくらい……。強く、なりたいです……。魔王様。わたしが強くなるまで……人間界の侵略は待って貰えないでしょうか……」
「おう。いいぜ」
「ありがとう、ございます……。わたし、キサネちゃんを守れるくらい……強くなるから……」
一体どんな心境の変化だ?
俺にはよくわかんねぇけど。ララーシャはキサネを守りたいから、強くなって人間界侵略の瞬間に立ち会うと宣言した。
あんまり精神面の強くないララーシャが強くなるまで最低でも数年は掛かるだろう。
そんなに長くは待ってられねぇけど、やらせてみるか。
「俺は18歳の誕生日を迎えたら、キサネと婚姻する。それまでには人間界の侵略を終わらせたい。そんなに時間は掛けらんねぇから、才能がないと判断したら留守番だ。それでもいいか?」
「は、はい……っ。が、頑張ります……!」
意気込みだけは一人前だな。
俺は魔力の才能もねぇし、教えられることがあるとしたら剣術くらいだ。
ただ、ララーシャは下半身が魚だからな。
2本の足で踏ん張って、剣を振り回すのは難しいとなれば──魔力適性の高いやつが指導に当たるべきだ。
ハムチーズは今、魔族街の監視で手一杯。ムースは本業の針子仕事があるし、暇なのは……キサネ、か……?
「よし。じゃあ、キサネ。ララーシャに魔力の使い方を教えてやってくれ」
「私が教えるの?」
「おう。魔力量は姉妹だし、似たようなもんだろ」
「そうかなぁ……。ハレルヤといちゃつく時間が少なくなるのは、嫌だよ?」
「わかってる。俺も一緒に居るから」
「ほんと?やったー!」
キサネも現金な奴だな。
俺がいるのといないのとじゃモチベーションが違うらしく、ララーシャを鍛える為やる気は充分だ。
「目指せ、最強人魚!」
前世のじぶんそっくりな顔をしたララーシャを苦手に思っているキサネは、そんなこともすっかり忘れて意気込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~
渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。
彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。
剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。
アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。
転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった!
剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。
※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる