私の痛みを知るあなたになら、全てを捧げても構わない

桜城恋詠

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高校三年 三月三日

救いの手

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 三月三日、十三時三十分。

 海歌が軟禁されている部屋に、ある人物が飛び込んできた。

「どうしてここに……」

 彼の名前は、涼風楓。
 今日の十五時三十三分から、同士達と一緒に集団自殺を目論む青年だ。

『監視カメラや盗聴器があるようですので、筆談で失礼いたします。葛本くんに頼まれまして。助けに来ました』

 彼は予め、用意していたのだろう。
 カメラの死角になる場所で携帯電話に打ち込まれた文字を見せると、海歌の意志を確認してくる。

 例の時刻まで二時間と少し。
 このままここにいても、状況は改善しない。
 涼風楓の言葉が事実ならば、大嫌いな人の顔を見ながら命を落とすことになるだろう。

(それだけは、絶対に嫌だ)

 葛本に頼まれたと語る涼風楓が、嘘をついている可能性もゼロではない。
 彼には嘘をつくメリットなどないだろう。彼は海歌と葛本が、これからも生き続けることを望んだと知っている。
 例の時刻で命を落とし、来世に願いを託そうとしている彼とは違う。

『お願いします』

 海歌は携帯電話に文字を打ち込み、涼風に向かって小さく頭を下げた。
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