表裏世界

学校の国＃３

 あれ、痛くない？
  
 恐る恐る目を開けると、最初の白い部屋にいた。どういうことだ？

｢おかえり。お疲れ様。｣
と例のショートヘアの女の子、ユキナが微笑む。
｢全然、わけわかんねぇんだけど。｣
｢訳わかんないのは仕方ないよ。｣

 俺はすこしムッとした。助けたりしてくれないわけ？

｢わたしは助けたり、助言したりできないの。｣
｢なんで。｣
｢あなたが自分で乗り越えなくちゃ意味ないの。｣
｢意味ってなんなの。｣
｢秘密。｣
｢乗り越えたら何があるんだよ。｣
｢秘密。｣
｢もし乗り越えれなかったら？｣
｢それはないよ。ナルミだもん。｣
｢あんたは俺の事知ってるのか？俺のなんなの？｣
｢秘密。でもね、これだけは言える。ナルミはわたしのとっても大切な、かけがえの無い存在。｣

 え、なに、彼女とか？いや、見た目がタイプじゃない。俺のタイプはさらさらロングヘアーの年上がタイプ。
 

｢落ち着いた？｣
｢え？まあ？｣
｢さあ、次よ！次！｣

 え、まだあるの。

｢あなたは行かなきゃ行けないところ沢山あるし、また危ない目に遭うことだってあるかもだし覚悟しててね。｣

 覚悟ねぇ。
 生き抜く覚悟？生き抜く覚悟なんて、持ってる人いるの？
 気付いたら生まれてて、
 気付いたら大きくなってて、
 気付いたら大人になろうとしてる。

 気付いたら死んでるのかな？

 死ぬ時、俺は何を思ってるんだろう。悲しんでくれる人はいるのだろうか。なんてふと考えてた。

 そんなの死ぬ時にならないと、分からないか。
 未来なんてどうとでもなるし、なるようにしかならない。今の俺がどーこー出来るものじゃない。生きるのがだるく感じてくる。

｢さあ、出発よ。｣
｢うん。｣

 目を閉じようとした。
すると、

｢絶対帰ってきてね。｣


 か細い声と、切ない顔が目を閉じる間際に見えた。
 そんな顔するなよ。そう言いたかった。

 
 ぱちり。