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優しいね
しおりを挟む「優しいね」
「優しいな」
今日はちゃんと掃除をしている
私も
ゆうくんも
雑巾がけや
黒板を消したり
ほうきで掃いたり
教室掃除は1番大変だと思うのだ
めんどくさいなぁ‥。
でもやらなきゃ
ゆうくんも真面目にやっていた
というかゆうくんは
普段はチャラけているが
根はとても真面目だ
受け答えもしっかりしているし
親切だし
他の男子がサボっていても
ゆうくんは1人で掃除をしていた
他の男子が子供っぽくみえて
ゆうくんは大人っぽくみえた
やっと終わる
やっとじゃない
いつもなら
やっと
今は
もう
終わってしまうのだ
後は机を運ぶだけだ
こんなとき、
机の上に自分のリュックを置いている
誰だよ‥。
思わず避けるが
それは皆同じ
とうとう最後に残ってしまった
皆はまるでその机1個だけ
見えていないかのように
「ごくろうさまでした!」
と意気揚々に言って
帰り始めた
しょうがないな
運ぼうとした時
ゆうくんは
また笑った
「やったほういいよね?」
うなずいた
やってくれるのかと思って
机を運ぼうとした手を放した
そして机の左横に回った
どうぞ
手を机に向けて
ゆうくんが運ぶのを待った
でもゆうくんは
机の右横で止まり
私たちは机を挟めて
目が合った
また笑うんだ
今度は笑って何を言うのだろう
「せっかくだから」
「一緒に運ぼうか」
持てるでしょ
ゆうくん
持てるよね
1人でも
「優しいね」
運びながら呟いた
なんでゆうくんは
こういった
小さな行動だけで
人をドキドキされるのだろう
「優しいな」
「皆がやりたくないことを」
「ちゃんとやるところ」
「優しいな」
ゆうくんは
優しい人だ
きっと、きっと
とっても優しい人だ
「じゃあお疲れ」
「お疲れ様」
簡単な会話だ
あまりにも
簡単すぎる
やっぱり
距離は遠いのだ
遠くて
遠くて
また
「優しいね」
呟いた
「優しいな」
ゆうくんが振り返って
私に言った
もう十分だよ
ゆうくんに
彼女がいたことを知った
ゆうくんの
LINEを追加した
ゆうくんのLINEの一言は
英語でなにか書かれていた
それはあるアーティストの曲名だった
とても
しっとりしていて
どこか
悲しかった
英語の歌詞だったから
和訳付きでもう一度
聴いた
聴かなきゃよかった
「知られたくないよ」
「君の思い出に溺れてることなんか」
「でも思い出を手放すことなんてしたくないよ」
「したくないよ‥。」
「やっぱりまだ君が必要なんだ」
「やっぱりまだ君が恋しいよ」
「そして考えてしまうんだよ」
「空にこの身を投げ出したら」
「時が2人だけを残して過ぎてくれないかな」
「それなら千マイルだって歩いていけるさ」
「もし君に会うことが出来るならね」
「もし空へと飛び降りたなら」
「時が僕を置いて過ぎてくれやしないかな」
「千マイルだって歩いていけるんだ」
「君のもとへならさ」
「君に会えるのなら」
「もし君を抱き締めることが出来たなら‥。」
「今夜‥。」
そうか、そうか
自惚れてただけなんだ
責めないでくれ
やめてくれ
やめてくれ
もう
分かってたんだ
無理なんだって
こんな片想いの曲を聞いて
聞いて
ただ
ゆうくんの想っている人と
私が想っている人
バラバラで
そして、どこか悲しい
ああ。
こんな報われない恋など
したくはなかった
きっと、私は
音楽のサイトの画面を消して
携帯の電源を切るだろう
もうこんな曲聞かなくていいやと思うだろう
でも、
画面に
落ちた
一粒の滴に、
自分が泣いてるなどと
恋ごときに泣いた日を
私は忘れないだろう
「優しいくせに」
「私には」
「厳しいのね」
「まったくひどい人」
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