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第5章『悪魔の王様を探す事にした』

突拍子な提案とノンストップ交渉

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「ユートさん、私達をこの館に置いてくれませんかぁ?」
「……………は?」

 館に帰還し応接間に通した瞬間、フェーリが言った言葉の意味がわからず間抜けな声を発してしまう。
 いや、それも仕方ないだろう。挨拶云々の前の開口一番が居候宣言なのだ。

 今現在応接間にいるのは五人、ユートフェーリミルシィは言わずもがなだが、他にも何か大切な案件があった場合にユート一人では決めきれないのでイリーナ、ヴィクトリアに関することならばまだまだ国事に二人は疎いので、一応国を納めていた経験があるリンカを同席させれている。

「いや…俺の耳が急激に悪くなったのかもしれない…もう一度お願いできるか?」
「ですからぁ、私をここに置いてくれませんかぁ?家事全般はミルシィも手伝いますのでぇ」

 それを聞いたお茶を飲んでいたミルシィはブフォッとお茶を吹き出しユートの顔をびちゃびちゃに濡らす。
 隣のイリーナがどこから出したのかよくわからないタオルでユートの顔を拭き始める。

「はぁ……一応理由を聞いといてやるよ…なぜだ?」
「えぇ?だってユートさんのお家って誰でも住めるのではないのですかぁ?」

「いや、別に開放的にウェルカムでシェアなハウスはしてないよ?!一応家族しか住まわせてないからな?一部例外はいるけど普通に給仕やお付って理由だぞ」

 奴隷ちゃんやオウミのことを言っているのだろうか奴隷ちゃんは貴族間のつながり、オウミはアルカの部下だと言うので地下施設でせっせと馬車馬のように働いてもらっている。

「という訳で…だ。あの件は俺が撒いた種だからに片付けるとして…」
「俺は既に2児の父親、更にいえば今月には出産予定の子どももいる!これ以上厄介事を持ち込まれてたまるか!」

 今更すぎる発言ではあると自分でも分かってるユートだが、言っていることに間違いはほぼ無いために反論されないだろうと高をくくっていたのがユートの運の尽きであった。

「ユートさんってぇ…ヴィクトリアで指名手配にされた時ありましたよねぇ?」
「え?…まぁ確かに過去にそんな事もあったような、無かったような…」

 その件に関してはユートの霞がかった記憶によれば、★Ⅸのクエストをこなす事でディオニスに指名手配を解除してもらったのだ。

「本当にぃ…指名手配をディオニスの一存で解けるとお思いでしたかぁ?だとすればユートさんにはがっかりなのですよぉ…あれは私とミルシィが裏で手をアレコレ回したお陰なのですよぉ?」
「…………は?」

 ユートは《真実か虚偽かライ・ディレクション》を発動してフェーリの額に手を当てて先程の発言が嘘ではなく真実だと理解する。
 だが、そうなのならばおかしな点が出てきてしまう。

「なんでディオニスはそれを俺に言わない?そもそも何故俺を嫌っているミルシィが俺の手配を消そうとするんだ?」
「……アナタが処刑されそうになった時…私はあの場にいたのですよ…」

 そう言われてユートはあの場の記憶を思い出す。


■■■■■■


「幸せそうな顔してんな」
 ブラッドという名の初敗北した相手を作ったばかりの鏡花水月で幻影を見せながら殺したのを思い出した。

 そこからトリスタンとブルータスの両名がリーザスを人質にして追い詰めようとしたが、既にリーザスは回収済みでありそこから宿屋に転移ワープしたのだった。

 転移ワープする寸前の広場の中に、確かにフードを深く被って分かりにくかったがミルシィがいたのだった。

「……あのクソ野郎は…何をしているのですか」


■■■■■■

「あぁ~うん、確かにいましたね、はい」
「あの時は驚きましたよぉ~、ミルシィが突然慌てた様子で帰ってきたらユートを助けろなんて言うんですからぁ」
「な、ちょ…フェーリ様!?その話は……」

 まさかの新たな属性、男嫌い男の娘系受付嬢で更にツンデレと多いのか少ないのか分からない程度の量の属性が現在進行形で盛られていくミルシィ。

「いやぁ~あの時は大変でしたねぇ~、とぉぉっても苦労したのですよぉ?」
「それをネタに脅してると?片腹痛いぜ、そんなのもはや過去の話だ、それでこの家に住もうって言うならまだ要素が足りねぇなぁ」

 ユートとフェーリの表情が険しくなる、ここから始まるのは結末が決まった単なるふっかけ合い、少しでも自分にとって良条件になるように差し向けようとする。
 言うなれば商人通しの脅し合いとも言える。だが、ここ相対するのはヴィクトリア王国のギルドを支えてきた『ギルドマスター/フェーリ』、片や一つの街を統治し始めたばかりだがあらゆる交渉スキルで追い上げる『フヴェズルングの長/ユート』

「金貨でもご所望ですかぁ?」
「金はいらねぇ、既に街のヤツら全員に配布したり捨てたりしても有り余るほどに持っている」

「では私の体ですかぁ?」
「その事について言及するのはやめておこう…それは俺が語るべき物語ではない…という訳で全面的にノーだ」

「それではぁ…ソロモンさんの居場所知りたくないですかぁ?」

 かれこれ30分以上の時をノンストップで問答していたが、この一言によりユートの動きがピタリと止む。
 ユートはソロモンの名前など一言もフェーリには言ってもいないし、そもそも何故フェーリがソロモンのことを知っているのか。

「何故お前がソロモンを知っている?と言うよりもなぜソロモンの居場所を知っている…」
「さぁ?なんででしょ~?知りたかったらぁ~…ね?」

 先程《真実か虚偽かライ・ディレクション》を見ているのでフェーリが嘘の情報を言うことは無い、つまりはことを早めに済ませたいユートにとっては喉から手が出るほどに欲しい情報の掲示。

「先に何故ソロモンのことを知っているのかだけ教えろ、内容によってはお前の要求を飲んでやる」

 あくまで自分が上だというスタンスは崩さない、いや崩せないのだ。
 ここで下手に出るのは下策中の下策である。

「…ぅ~~ん…良いですよぉ、実は私ぃ…ヘルヘイムで派閥争いで負けてソロモンに吸収されかけた一人なんですぅ」
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