とある最強盗賊の苦悩

水色の山葵

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第一章 記憶

7話 能力

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 俺が洞窟から目覚めてから二週間が経過していた。
 それで分かった今の俺の肉体の能力だが、まず、そこら辺の魔獣を一撃で破裂させるほどの威力を放つ事が出来る。
 攻撃力25000は伊達では無い。
 強度に関しても同じ事が言えた。
 イノシシの魔獣から突進を受けても後退りする事も無い。
 シアの攻撃魔法が事故って俺に直撃したとしてもノーダメージの自信がある。

 魔法についても分かったことがある。
 どうやら俺の魔法適正って奴はそこそこ高いらしい。
 魔法について書かれた本を読むだけで簡単な魔法が使えるようになった。
 イメージさえ出来てしまえばそこまで難しい物でも無い。
 オリジナルで魔法を作れるくらいには理解出来ている。

 拠点に有り余るほど貯蔵された金貨はこの世界の共通金貨だったらしく、問題無く使用出来た。



「それで今日はどうするんだ?」

 何時もやる事が同じだから、待ち合わせ場所は街の出口付近になっていたんだが、今日はシアが組合に集合しようと言いだしたのだ。
 街の外での魔獣掃除以外の仕事を受けるんだと俺は思っている。

「今日からは迷宮に行きましょう」

 ほら。

「迷宮?」

 この街が、冒険者が集まる街と呼ばれる主な理由は街の中心にある迷宮にある。
 迷宮は、人知を超える魔道具や素材を手に入れる事の出来る場所らしい。
 冒険者には夢のある、一攫千金を狙えると言われる所以がこの迷宮の魔道具だ。
 金貨数千枚で取引される事もあるような高級品なんだと。
 だが、迷宮は外敵を拒む機能を幾つか持っている。
 魔獣を作り出す事が出来るのだ。
 といっても自然現象の一環のような物のようだが。
 原理と言っていいのか分からないが、魔力が多く集まる事で様々な神秘が発生しやすくなった空間。
 それを迷宮を総称するのだ。

「どうしてまた?」

「いえ、もともと私は迷宮に籠ってたんだけど、貴方が加わったから技量を見る為に今までは比較的安全な依頼を選んでたの」

「って事は俺は認められたって事か」

「一応は。前衛としての能力はかなり高いし、速度が有るから私の戦い方とも相性がいい。でも調子に乗らないでよね。迷宮は油断しては入れるような場所じゃ無いんだから」

「了解。これからも精進致しますよ」

「賢い貴方は好きよ」

「ツンデレシアさんめっ」

「何かしら?」

「何もないっす」




 シアは魔法使いだった、風属性の魔法はエルフと言う種族も合わさって幻想的に見える。

 この世界の魔法使いの比率はそこまで高くない。
 別に魔法を使用する事に特別な適性が必要なんて事は無いが、それを使って魔獣と戦える人は少ない。
 それが出来る威力を持つ魔法が使える一握りを魔法使いと呼ぶようだった。

「それじゃあまずは私が魔法で索敵をするから」

 迷宮に入って少し進むと彼女はそう言って両手を顔の前で突き出す。
 この街の迷宮は迷路のような構造で、迷ったら最悪出られない。
 マッピングは必須だ。
 まあ俺のプレイヤースキルを使用すればクリアなのだが、シアの魔法の索敵範囲は俺の『マッピング』を軽く越えている。
 数秒の集中でそのフロア全てを索敵するんだから、本だけの知識しか持たない俺からすれば彼女は伝説級な気がする。

「終わったわ」

 そう言った瞬間、俺の身体を追い風が包んだ。
 俺のステータス上の速度は20m/s、秒間20mである。
 この追い風は俺の速度を更に加速させる。
 体感、50%向上と言ったところか。

「それじゃあ行くぜお嬢様」

 シアを持ち上げる。
 最高速の移動方法だからだ。

「な、アンタが速いのは知ってるけど持ち上げろなんて言ってない!!」

「それじゃあ魔法のコントロールミスんなよ!」

 全速力で走る。
 シアの魔法によって温度の調節や負担も限りなく少なくなっている。
 方向は風が示してくれる。
 なんていうか、シアの負担が大変な事になっているが、それが出来る天才さんだと俺が理解しているので問題など何もない。

 駆け抜ける。
 速度は30m/s。
 時速に直すと108km/hである。
 この迷宮が幾らデカいと言っても三時間も走ればゴールだろう。
 魔獣? ぶつかっただけで死亡確定コースなんでそのまま弾き殺している。
 多少グロいが知らん。
 二週間なめんな。
 精神耐性も鍛えられたわ。

 風の指示に従って走る事数十分。
 大きな部屋に出た。
 なんとなく立ち止まる。
 雰囲気ってか威圧感みたいな物が俺を襲う。
 昔の俺なら逃げていただろう。
 だけど、俺が信じるたった二つの要因が背中を押す。
 絶対に負ける訳が無いと。

「ボス部屋ね……」

「それで、勝てると思うか?」

「愚問。私達が負ける訳がない」

 風が俺に纏わりつく。
 決して苦しい訳では無く、心地よくさえ思える風。
 温もりだ。

 目の前に現れたのは骨の王。
 巨人のように大きく、手に持った巨大な鈍器は俺を殺すのに十分な殺傷力を秘めている。

「グアアアア……」

 うめき声をあげる巨大な人の骨。
 こん棒を振り上げる。
 普通、上段からの叩きつけってのは人が出せる最速の攻撃だ。
 それはこの骨にも例外ではない。
 けれど……所詮はその程度……

「おせえんだよ!」

 スケルトンの顔面に向けて飛び上がる。
 目の前で一回転することで推進力を消す。
 一瞬、空中で停止しているような感覚を覚えた。
 手の中にはシアの温もりがある。
 拳は使えない。

「しゃらくせえ!」

 縦に一回転して脳天に踵を叩き込む。
 こん棒による攻撃は中断され、敵の顔面が地面に叩きつけられる。
 あまりの衝撃に地面が揺れ、蜘蛛の巣状に亀裂が走った。
 頭は完全に砕けている。

 勝ったと思ったのもつかの間。
 スケルトンは再生を開始した。
 ゲーム時代もスケルトンって奴は死亡時に効果を持つ奴が多かった。
 どうやら、コイツは通常の方法では倒せないらしい。

「ユニークね。それもボスクラス」

「それで倒し方知ってる?」

「聖属性の魔法なら倒せるんじゃないかしら」

「使えないのか?」

「使えないわ。どうにかしてちょうだい」

 家のお嬢様は本当に我儘だ。
 ゲーム時代、スケルトンに死亡時効果を発動させずに倒す方法は幾つも存在した。
 勿論俺のデッキにはそんなカードも入っている。
 けど。
 腰につけたられたケースを開く。
 カードは一枚も入っていない。

「来いよ!」

 拠点から金貨が送られてきた時と同じだ。
 奪神の溺愛にも書かれていた。
 俺の願いを叶えると。

 スケルトンが立ち上がる。
 巨大な骨の王、今度は魔法の詠唱を開始した。

「闇系統の魔法。効果は範囲内の影の支配」

 シアのクラスは『魔術学者』そのスキルは『魔法分析』効果は使用されようとしている魔法の完全看破。
 魔法を発動されたら勝ち目が薄くなる。
 さあ、信じる時間だ。
 俺の青春を捧げたゲームと俺の相棒を。

「来い!!」

 信じるように叫ぶ。
 何もなかったはずのケースに一枚のカードの感触を覚えた。

「ああ、やっぱりそうだ」

「何よ?」

「いや。シア、頼むぜ俺に合わせてくれ!」

「言われるまでも無いわ」

 シアを抱えたまま、俺は飛び上がった。
 奴の、骨の王の真上。

 左手でカードを相手に向ける。
 カード全体が輝いた。
 その光は一瞬の内に収束する。
 カードの名前は、

「シルバーバレット!!」

 この魔法の威力は300しかない。
 とてもじゃないがこのスケルトンは倒せないだろう。
 だから、頼むぜシア。

「任せなさい」

 『魔術学者』第二のスキル。

「『魔力増幅』!!」

 ペンライト程度だった光の線は、シアの言葉に応えるように増長していく。
 光が骨の王を完全に包んだ。

 完全に蒸発する。
 魔法『シルバーバレット』の効果はたった1つ。
 ・この魔法によって死亡したユニット・プレイヤーは復活出来ない。
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