元勇者と元魔王の夫婦が異世界召喚されました。

水色の山葵

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2話 世界崩壊の危機

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「解っておるではないか、お主は中々見る目があるのう。しかし、もしも妾の旦那様に手を出そうという腹積もりであるならば、妾はお主を永遠の冥界へと送り届けなければならぬ」

「そ、そんな事滅相もございません! お二人だからこそお似合いなのです。お二人がご一緒にいるからこそ、その魅力も一層上がるというものでしょう」

「ふむ、であるか。ならば、お主の賞賛は素直に受け取っておこうかと思う」

 儂の愛娘であり、この国一番の大魔法使いであるセリカ・ミリオンが狼狽える姿が、玉座の間に目立つ。

 その空間を支配しているのは、我が国の実行した召喚魔法で呼び出された勇者の内の二人、自分達を夫婦と言った二人は圧倒的な強さを見せつけこの場にいる国の重鎮を黙らせた。

 剣技、魔法、共に最高峰の実力者が揃うこの空間を完全に支配した、それは正しく儂を超える王の資質。

 どうやら、とんでもない逸材を我が愛娘は召喚してしまったようだ。

「ふっざけんじゃねえええええ!! 勝手に召喚しといて、腕までぶった切られて、それが何で普通みたいな顔して全員当たり前みたいにそいつらと喋ってやがる!!」

 広間に響き渡る大きな声でそう叫んだのは、セブンと呼ばれていたあの夫婦の夫の方に腕を切り飛ばされた少年だった。

「テメェらが何の制裁も与えないなら俺がやってやる!」

 勇者の一人の少年はそう言って右腕の手首を左手でつかみ、前へ、夫婦に向けて掌を突き出した。

「鑑定スキルで理解したぜ、これが俺の力だあああああ!! 能力強奪スキルスティール!」

 召喚されて間もない状態でスキルを発動させるか。
 聞いたこともないスキルだが、名称から察するに他者の能力を奪うスキルなのだろう。
 そんな力はどんな文献にも出てこないが、もしもそのような力があるのであれば、魔王のスキルを奪い取り、世界を救う勇者になり得る人材だ。

「貴様、我がセブンに何をしようとしておる?」

 夫婦の女性の方、ニエルと呼ばれていた女性はそう言い、腕を上げようとした。

「待てよニエル、こいつは俺に用があるらしいぜ」

 セブン殿がニエル殿の手を掴み、下ろさせた。

「ははは、奪ってやったぜ!! これがお前の勇者としての力か!! 精霊召喚、いい力だ!」

 少年の足元に赤色の魔法陣が出現する。
 その魔法陣から生物が姿を現す。真っ赤に燃える炎の精霊。あれは私も知っているものだ。
 炎の大精霊、イフリート。人間が使役できる精霊の中では最高位に位置する精霊の一体だ。

「行け! イフリート、あのクソ野郎を燃やし尽くせ!」

「GIAGIIIII!!」

 遠吠えを上げ、イフリート命令の通り炎を己の手に平に集約していく。
 なるほど、これがセブン殿の勇者としての力。確かに強力無比であることは間違いないが、あの少年の方がスキルだけを見れば格上か。

「死にやがれ!!」

 炎の塊が、夫婦に迫る。
 しかし、どちらも動かない。
 兵士や我らも動けない。

 熟練の英雄には解るからだ。目の前にいる存在の強さ、密度とでも表現するべき力の存在が。

 たかが最高位の精霊を使役しただけで、それに勝つ事ができる訳がない。我が国の英雄の中にはその精霊を召喚できる物も居る。
 だから解るのだ。その程度の術であの怪物を倒す事など出来ないのだと。

「ふざけてんのか?」

 イフリートの身体がズレた。
 上半身と下半身が斜めにずれたのだ。

 この場にいる何人が気がついただろう。
 彼が、剣を抜き、剣を振り、10歩は離れているはずのイフリートを動くことなく二つに切り裂いたのだ。

 精霊が形を保つ事がでいるのは、その魔力調和能力にある。だからこそ、精霊に物理的な攻撃は意味のない物だ、しかし、当たり前のように彼の攻撃は対象の身体を魔力事切断していた。

「全く、いや、最初から期待してたわけじゃねえけどな。その程度の上澄みを奪ったのがそんなにうれしいか? 召喚魔法ってのはな、こうやって使うんだよ。【#闇双龍__ウロボロス__#】」

 セブン殿がそう唱えると、昼間だったはずの空が黒く染まった。

 誰もが、窓から空の景色を見る。
 そうすれば、天空の暗黒の雲の中から二匹の龍がこの王宮を目指して降りてくるのが解るだろう。

「まさか、古の破壊の龍!?」

 セリカと儂の意見は一致しただろう。
 それは王族だけに受け継がれた、古の文書。創作の神話と思っていたが、まさか実在するというのか。
 世界を亡ぼせるだけの力を持った最強のドラゴン。二対一体のその姿は完全を意味し、おのが二体以外の全てを亡ぼせる能力を持つと言い伝えられている。

「ゆ、勇者様、おやめください!」

「ほう、貴様、我がセブンのする事に意見するというのか?」

「そ、それは……」

 だめだ、我が愛娘の言葉をニエル殿が止める。それを突破できるだけの言葉を我が愛娘は持っていないようだ。
 だからこそ、ここは儂が命を賭けよう。

「セブン殿、どうか怒りを鎮めてはくださらぬか?」

 儂は玉座から立ち上がり、彼らに歩み寄りながらそう言った。

「まず、お前は誰だ?」

「儂はこの国の王を務めている。エルベレム・ミリオン」

「貴様も、我がセブンに意見するのか?」

「とんでもない。しかし、我が王宮のスイートルームを勇者様方の私室としてご用意しております。防音ですし、部屋には温泉なども取り付けられています。この国のどんな宿よりも快適でしょう。それを壊すのはお二方の夜に支障が出るのではないでしょうか?」

「夜? 貴様なんの話をしておる?」

 どうやら、ニエル殿には伝わらなかったようだ。
 見た目から歳は十代後半だと思われるしそういう事もあるかもしれないか。

 しかし、セブン殿の方はそうでもないようで、何やらニエル殿に耳打ちをし始めた。
 それを見るとどうやら、私の意図するところに気が付いたのかもしれない

 ニエル殿の耳が真っ赤に染まる。
 そして何やらそわそわし始めた。

「いいよ。実演はまた今度にしとく。早速案内してくれるか?」

「畏まりました」

 メイドの一人に指示したタイミングでまたもや広間に大声が響く。

「お、お前! 精霊一体倒したくらいで図に乗るなよ!」

「うるせえよ。黙ってろ」

 その声の瞬間、ある程度の強さを持つ者以外、全員が気絶した。
 それはれっきとした殺意。今まで、魔王すらもこのような濃密な殺気を放つ者は存在していなかっただろう。

 末恐ろしい。
 彼等に魔王討伐を依頼する時は、慎重にせねばなるまいと儂は心に刻んだ。
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