35 / 40
真実
しおりを挟む凱旋門はそれ自体がダンジョンとしての空間を保有している訳ではなく、凱旋門を通り抜ける事でダンジョン内へと転移するタイプのダンジョンだった。
ダンジョン内は、日本のダンジョンである天の塔と同じような石造りの迷宮型。そして出現するモンスターはゴブリンだ。しかも、階層を上がっても上がってもゴブリンと来た。
通常ゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンソーサラー、ゴブリンプリースト、キングゴブリン、ゴブリンジェネラル。十階層までに出てきたモンスターはこんな感じ。一纏めにゴブリンと言ってもスキルは様々、武術系、属性魔法、回復魔法と様々だ。更にジェネラルは怪力を持っていて、キングは【餓鬼王】という周りのゴブリンの持つスキルを全て使えるという反則級のスキルを持っていた。
まあ、ゴブリンが幾ら集まったとしてもたかが知れているし今のところ無傷で到達できている。
更に言えば、フランス騎士は今のところ手を出していない。全て僕一人で倒しきっている。
10階層のセーフティーエリアで僕達は休憩していた。天の塔と同じで幾つもの家々があり、その全てが冒険者がダンジョンを攻略するために必要なサービスを提供する場所となっている。武器の生産や強化、ダンジョンで手に入れたアイテムをスキルスクロールと交換してくれる場所まで存在しているのだから驚きだ。宿泊施設や居住区も存在し、その階層自体が異世界になっているのか果てが見える事はない。
フランスもダンジョン探索はそれなりに行っているようで、マッピングは殆ど完了していた。だからここまで来るのにかかった時間は凡そ10時間ほどしかかからなかった。
「いやぁ本当にすごいね。君が居るだけで日本はダンジョンに関して困る事はなさそうだ」
「それで? 九階層のボスモンスターも討伐したが魔物があふれ出てきた原因と言える物は何もありませんでした。何階層まで進む予定で?」
「僕達が目指しているのは49階層だよ。そこに全てを解決する手段があると思っている」
「なるほど、そこまで言うからには何か根拠があるという事でしょう。ここまで来たんです。もう隠さなくてもいいんじゃないですか?」
「え? でも……」
寧さんが困惑という表情を浮かべている。そう、日本に来た時にそんな話は全くしていなかった。つまり、隠していたのだ。魔物の暴走の理由を知りつつ意図的にそれを伝えなかった。そもそも、ダンジョンの調査なら日本に手伝いを頼む必要もない。それをしたのはフランスだけでは解決できないと考えているからだ。
「謝罪が必要なら僕が幾らでも頭を下げる。報酬が必要なら、日本にこの凱旋門ダンジョンへの侵入権限を上げてもいい」
そこまでするのか。今やダンジョンとはその国が持つ宝だ。そこから得られるアイテムは人々の生活を豊かにすることや滅ぼす能力も持っている。
更に、人間の能力を飛躍的に高める効果すらも持っている。それはつまり、戦力としてこれ以上の物はどこの国も持っていない程の宝である事実を示す。
それを他国に解放する。通常なら考えられない事だ。
「それほどまでに切羽詰まっていると」
ペンディアスは頭を下げ、黛さんは俯く。何だろう喪失感? みたいな物を感じる。
「何があったのか話てもらえませんか。それを聞かなければ判断のしようもない」
「確かに、その通りだね。話そう、フランスに起きた厄災を
それは突然起こった。七日ほど前の事だ。王宮で一つの事件が起きた。王女が攫われれたんだ。女王の命令によって王女発見のためにあらゆる国家機関が捜査を開始した。僕達騎士団もそれに参加していたんだ。しかし、手掛かりは何一つ……いや、たった一つを除いて何も見つからなかった。王女が攫われたと思われる場所に一通の手紙が落ちていた。それは王女の身柄が欲しければダンジョン49階層にある品物を持って来いと書かれていたんだ」
「品物?」
ペンディアスの言葉を切って寧さんが疑問を口にする。
「国宝、乙女の軍旗」
そに答えたのは黛さんだった。この二人妙に仲がいいのはなんなんだろう。
「話を続けるよ。その乙女の軍旗と王女の身代金として用意しろとその手紙には書かれていた。しかし、そんな要求を呑めるわけもなく時間が過ぎていくばかりだった。そして、その手紙にはもう一つ大事な事が書かれていたんだよ。もしも二週間以内にその要求が果たされない場合、フランスは滅びる事になると。そして一週間後に当たる今、フランスは魔物がダンジョンからあふれ出てくるという異常事態に見舞われている。それは止まる事なく溢れ続け、数も増える一方だ。確かにこのまま行けば手紙の内容通りになる事が予想できてしまう」
「要求を呑むつもりなのでしょうか?」
「いいえ、一応軍旗は私が持っているけど、それを渡すつもりはないわ。犯人を拘束又は殺害してでもこの事件を解決するのが私たちの務めよ」
と、黛さんは自分のポシェットを叩く。軍旗など入るとは思えないが、おそらくゴブリンのレアドロップである無限収納のバックなのだろう。
「どうだろう協力して貰えるだろうか、不明」
アーサス・ペンディアスは僕を見つめる。
「タイムリミットは一週間。成功条件は49階層へ到達し、この事件の犯人を捕まえる。失敗すればフランスが滅ぶ。そんな重大な事を僕に任せると?」
「ああ、フランスが今頼れるのは他にない」
確かに、ダンジョンのレコードを見る限り49階層に到達できる可能性を持つのは僕を置いて他にいない。ならば、その判断も必然なのかもしれない。
「分かりました。ただし、僕がこの事件にかかわった事は内密にしてくださいね」
「ああ、その程度は当然だ」
「そうと決まれば時間がありません。本気で行きます」
「「「??」」」
フランス騎士三人がキョトンとした表情を浮かべる。今まで一言も発しなかったケイオス・リクルまで驚いている。まさか、この程度が僕の、いや俺の限界だとでも思っていたのか?
「寧、全員に加速の付与魔法を」
「分かりました。『風脚』」
俺以外の全員に緑色の風を纏うのを確認し、俺は黄金のオーラを発動させる。
「それじゃあ引き離されない程度について来いよ」
11階層以降のモンスターはコボルトだ。ゴブリンに比べて体格も良く、全体的に能力が高い種族だがゴブリンに比べてスキルの豊富さはない。
「ははっ、毛が生えた程度で勝てると本気で思ってやがんのか!?」
スキルの連続発動。アクセル、スラッシュ、ドライブ、ドリフト、リキャストが最速のスキル群を使いまわす。進化したAスキルは進化前の物も同じ性能で使用できる。威力では劣る進化前のスキルも連続使用間隔だけを考えれば進化後のスキルの比ではないほどに速い。
切り殺し進んでいく。
「彼は魔法主体の戦闘が得意なのだと思っていましたが、これは……」
「徹さんはそうですが、徹君は違います。あの人は一人に見えて二人いるんです。今のあの人はそうですね、彼の本能の部分を司る人格です」
「彼は多重人格なのかい?」
「ええ、その認識で間違いありません」
「まあ、予感はあったけど、あれほどとはね」
「あれが日本一位。いや世界一位の冒険者です。そして同時に、私が追い付きたい場所……」
夜が更けても、その迷宮から聞こえる愉悦の声が止まる事はない。
ただ一人、その少年は頂へと昇る。世界最高、世界最速、世界一位。彼は自分がその位置にいる事を自覚しているのだろうか。
「ああ、君には僕の演算も通用しないかもしれないね」
黄金の髪をなびかせる少年は、一人心中で笑う。最強を前にして。
0
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる