戦闘狂の迷宮攻略 〜早熟と器用さでお前のスキルは俺のもの〜

水色の山葵

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真実

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 凱旋門はそれ自体がダンジョンとしての空間を保有している訳ではなく、凱旋門を通り抜ける事でダンジョン内へと転移するタイプのダンジョンだった。
 ダンジョン内は、日本のダンジョンである天の塔と同じような石造りの迷宮型。そして出現するモンスターはゴブリンだ。しかも、階層を上がっても上がってもゴブリンと来た。
 通常ゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンソーサラー、ゴブリンプリースト、キングゴブリン、ゴブリンジェネラル。十階層までに出てきたモンスターはこんな感じ。一纏めにゴブリンと言ってもスキルは様々、武術系、属性魔法、回復魔法と様々だ。更にジェネラルは怪力を持っていて、キングは【餓鬼王】という周りのゴブリンの持つスキルを全て使えるという反則級のスキルを持っていた。

 まあ、ゴブリンが幾ら集まったとしてもたかが知れているし今のところ無傷で到達できている。
 更に言えば、フランス騎士は今のところ手を出していない。全て僕一人で倒しきっている。
 10階層のセーフティーエリアで僕達は休憩していた。天の塔と同じで幾つもの家々があり、その全てが冒険者がダンジョンを攻略するために必要なサービスを提供する場所となっている。武器の生産や強化、ダンジョンで手に入れたアイテムをスキルスクロールと交換してくれる場所まで存在しているのだから驚きだ。宿泊施設や居住区も存在し、その階層自体が異世界になっているのか果てが見える事はない。
 フランスもダンジョン探索はそれなりに行っているようで、マッピングは殆ど完了していた。だからここまで来るのにかかった時間は凡そ10時間ほどしかかからなかった。

「いやぁ本当にすごいね。君が居るだけで日本はダンジョンに関して困る事はなさそうだ」

「それで? 九階層のボスモンスターも討伐したが魔物があふれ出てきた原因と言える物は何もありませんでした。何階層まで進む予定で?」

「僕達が目指しているのは49階層だよ。そこに全てを解決する手段があると思っている」

「なるほど、そこまで言うからには何か根拠があるという事でしょう。ここまで来たんです。もう隠さなくてもいいんじゃないですか?」

「え? でも……」

 寧さんが困惑という表情を浮かべている。そう、日本に来た時にそんな話は全くしていなかった。つまり、隠していたのだ。魔物の暴走の理由を知りつつ意図的にそれを伝えなかった。そもそも、ダンジョンの調査なら日本に手伝いを頼む必要もない。それをしたのはフランスだけでは解決できないと考えているからだ。

「謝罪が必要なら僕が幾らでも頭を下げる。報酬が必要なら、日本にこの凱旋門ダンジョンへの侵入権限を上げてもいい」

 そこまでするのか。今やダンジョンとはその国が持つ宝だ。そこから得られるアイテムは人々の生活を豊かにすることや滅ぼす能力も持っている。
 更に、人間の能力を飛躍的に高める効果すらも持っている。それはつまり、戦力としてこれ以上の物はどこの国も持っていない程の宝である事実を示す。
 それを他国に解放する。通常なら考えられない事だ。

「それほどまでに切羽詰まっていると」

 ペンディアスは頭を下げ、黛さんは俯く。何だろう喪失感? みたいな物を感じる。

「何があったのか話てもらえませんか。それを聞かなければ判断のしようもない」

「確かに、その通りだね。話そう、フランスに起きた厄災を

 それは突然起こった。七日ほど前の事だ。王宮で一つの事件が起きた。王女が攫われれたんだ。女王の命令によって王女発見のためにあらゆる国家機関が捜査を開始した。僕達騎士団もそれに参加していたんだ。しかし、手掛かりは何一つ……いや、たった一つを除いて何も見つからなかった。王女が攫われたと思われる場所に一通の手紙が落ちていた。それは王女の身柄が欲しければダンジョン49階層にある品物を持って来いと書かれていたんだ」

「品物?」

 ペンディアスの言葉を切って寧さんが疑問を口にする。

「国宝、乙女の軍旗」

 そに答えたのは黛さんだった。この二人妙に仲がいいのはなんなんだろう。

「話を続けるよ。その乙女の軍旗と王女の身代金として用意しろとその手紙には書かれていた。しかし、そんな要求を呑めるわけもなく時間が過ぎていくばかりだった。そして、その手紙にはもう一つ大事な事が書かれていたんだよ。もしも二週間以内にその要求が果たされない場合、フランスは滅びる事になると。そして一週間後に当たる今、フランスは魔物がダンジョンからあふれ出てくるという異常事態に見舞われている。それは止まる事なく溢れ続け、数も増える一方だ。確かにこのまま行けば手紙の内容通りになる事が予想できてしまう」

「要求を呑むつもりなのでしょうか?」

「いいえ、一応軍旗は私が持っているけど、それを渡すつもりはないわ。犯人を拘束又は殺害してでもこの事件を解決するのが私たちの務めよ」

 と、黛さんは自分のポシェットを叩く。軍旗など入るとは思えないが、おそらくゴブリンのレアドロップである無限収納のバックなのだろう。

「どうだろう協力して貰えるだろうか、不明アンノウン

 アーサス・ペンディアスは僕を見つめる。

「タイムリミットは一週間。成功条件は49階層へ到達し、この事件の犯人を捕まえる。失敗すればフランスが滅ぶ。そんな重大な事を僕に任せると?」

「ああ、フランスが今頼れるのは他にない」

 確かに、ダンジョンのレコードを見る限り49階層に到達できる可能性を持つのは僕を置いて他にいない。ならば、その判断も必然なのかもしれない。

「分かりました。ただし、僕がこの事件にかかわった事は内密にしてくださいね」

「ああ、その程度は当然だ」

「そうと決まれば時間がありません。本気で行きます」

「「「??」」」

 フランス騎士三人がキョトンとした表情を浮かべる。今まで一言も発しなかったケイオス・リクルまで驚いている。まさか、この程度が僕の、いやの限界だとでも思っていたのか?

「寧、全員に加速の付与魔法を」

「分かりました。『風脚』」

 俺以外の全員に緑色の風を纏うのを確認し、俺は黄金のオーラを発動させる。

「それじゃあ引き離されない程度について来いよ」

 11階層以降のモンスターはコボルトだ。ゴブリンに比べて体格も良く、全体的に能力が高い種族だがゴブリンに比べてスキルの豊富さはない。

「ははっ、毛が生えた程度で勝てると本気で思ってやがんのか!?」

 スキルの連続発動。アクセル、スラッシュ、ドライブ、ドリフト、リキャストが最速のスキル群を使いまわす。進化したAスキルは進化前の物も同じ性能で使用できる。威力では劣る進化前のスキルも連続使用間隔リキャストタイムだけを考えれば進化後のスキルの比ではないほどに速い。

 切り殺し進んでいく。

「彼は魔法主体の戦闘が得意なのだと思っていましたが、これは……」

「徹さんはそうですが、徹君は違います。あの人は一人に見えて二人いるんです。今のあの人はそうですね、彼の本能の部分を司る人格です」

「彼は多重人格なのかい?」

「ええ、その認識で間違いありません」

「まあ、予感はあったけど、あれほどとはね」

「あれが日本一位。いや世界一位の冒険者です。そして同時に、私が追い付きたい場所……」


 夜が更けても、その迷宮から聞こえる愉悦の声が止まる事はない。
 ただ一人、その少年は頂へと昇る。世界最高、世界最速、世界一位。彼は自分がその位置にいる事を自覚しているのだろうか。

「ああ、君には僕の演算も通用しないかもしれないね」

 黄金の髪をなびかせる少年は、一人心中で笑う。最強を前にして。
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