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プロローグ
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近藤在過35歳。
5年前に小森言葉と出会い、現在は娘も授かって幸せな日々を過していた。
3歳年下の言葉は、聖母マリアのように優しく在過は恥ずかしながらも、遠慮なく甘えてしまうほど美しい女性だ。
今後、娘の為にと戸建てを購入した近藤家は、荷造りの業務に追われていた。
「パパ? そろそろ荷造りしませんと、明後日には業者が来てしまいますよ」
「あぁ、ちょうど段ボールに分けて準備してるよ」
「ふふ、ごめんなさい。言われなくてもやってるなんて、えらいえらい」
「おいおい、もう35歳だぞ?」
「いいえ、パパはまだまだ子供なんです。洗濯物は裏表反対で干しちゃうし。洗った食器も、ちゃんとタオルで拭いてくださいっ」
「パパとママは喧嘩してるの?」
自分より大きなぬいぐるみを抱きかかえて来たのは、5歳になったばかりの娘、近藤希心。真っ白なロング丈フリルドレスで纏ったお姫さんが、こっそりと扉からパパの部屋を覗き込んでいた。
「喧嘩なんかしていないぞっ。パパとママはラブラブなんだ」
「そっか! よかったぁ。いつも夜になるとパパがママを泣かせてるから、嫌いだと思った」
「「え!?」」
在過と言葉は二人そろって言葉がハモってしまう。
顔を赤くしながら、娘を抱きかかえて部屋を出ていく妻が可愛く見えてしまっていたのは、在過だけの宝物になった。
その後、在過は一人で部屋の荷物を段ボールに仕分けしている最中に、休憩しようとコレクションBOXを開けた。
「なんで……あるんだよ。全部、捨てたはずなのに」
銀貨コレクションしていた箱の中から4枚の写真と2通の手紙を見つける。
それは、10年前に付き合っていた元恋人との思い出の写真と、誕生日と記念日に貰った手紙だった。
過去の自分が笑って彼女と写ってる姿に、同棲していたころの夕食を食べている彼女の姿を撮った写真。
両手が痺れている感覚を感じ、心臓がギュっ締め付けられる苦しさが在過を襲う。恐る恐る手紙を開いて、内容が頭に流れ込んでくる。
「近藤君へ。えへへ、手紙なんて恥ずかしいけど私の気持ちを伝えたくて書きます。近藤君と出会えて、すごく幸せです。告白してくれて、公園で軽いキスをしたことが今でもドキドキしちゃってます。これからもずっと好きだよ。神鳴より」
付き合い始めて、最初の誕生日に貰った手紙だ。
人生で初めて手紙と言うプレゼントをもらった在過は、嬉しくてずっと持ち歩いていた記憶が蘇る。
フラッシュバック。
昨日まで一緒に過ごしていたかのような記憶が、鮮明に在過の記憶を侵食していく。
素敵な妻や娘がいる今が幸せな在過だが、過去の呪縛から逃れようと試行錯誤してここまで来た在過は、彼女の思い出と言う記憶が毒となって襲い掛かってくる。
握りしめた手紙に涙が零れ落ちる。涙の落ちる感覚が短くなっていき、手紙に書かれた文字のインクが滲んでいく。
心臓の鼓動が早い。
うるさい。
やめてくれ……止まってくれ。
耐えろ、もう過去の出来事なんだ、なんで涙がでるんだよ。そんな言葉を自分に言い聞かせても、感情のコントロールが上手くいかない。
握りしめた手紙を、涙で溢れかえっている視界で眺めつづけ、嗚咽が止まらない在過は過去に彼女と過ごした思い出が勢いよく襲い掛かってくる。
「パパ!? 」
洗濯物を干すため、在過の部屋を通り過ぎようとしたとき、むせび泣く在過の姿を見て洗濯物を放り投げるほど不安が言葉を襲い、すぐに駆け寄った。
背中に手を添える言葉が、在過の手に何か握りしめていることに気づく。さらに、近くに写真が落ちており、昔の在過と別の女性が笑って写っている写真を見てしまう。
「思い出してしまったのね」
優しく語りかける言葉に、在過は泣き叫んだ。
「あぁぁ、うぅぅうぅあ」
「大丈夫、大丈夫ですよ。過去に何があっても、私は貴方とずっと一緒です」
妻に抱きしめられながら、過去の失恋で泣き叫ぶことに情けなさを感じながらも、涙が止まらず、心の痛みが癒えず、ずっと誰にも言えなった苦しさを妻が受け止めてくれていた。
「あーー、パパが泣いてる!」
パパがママに抱きしめられて泣いている姿を目撃した希心は、指をさしながら小走りで近寄る。
「パパ、ケガしちゃったの?」
「そうね。心の怪我は簡単に癒すことができないけれど、ママとキコちゃんでパパをいい子いい子してあげようね」
「うん!」
「痛いの痛いの~パパに飛んでけぇ~」
在過は、自分の娘が頭を撫でてくれている恥ずかしさに、少しずつ冷静を取り戻し始めていた。妻や娘にも心配させてしまった僕は、旦那も父親も失格ではないだろうか?
そんなことを考えられるほど、落ち着きを取り戻した。
「ごめんな二人とも」
「パパ? どこかケガしちゃったのぉ?」
「怪我はしていないよ。パパはちょっとだけ悲しいことがあったんだ。でも、もう大丈夫!」
満面の笑みで、娘が自分より大きなぬいぐるみを抱きかかえて言った。
「パパ? 悲しいことは全部言わないといけないんだよ。 先生が言ってたのよ!」
目の前には、5歳の女の子とは思えないほど神々しく、優しく微笑むように……子供のような満面の笑みで、力強い言葉を言った。
「そうね。ママと一緒にキコちゃんも一緒に聞いてあげようね」
「うん! 聞いてあげる。キコね、お話し聞くの得意なのよ」
「あらあら」
言葉は娘を膝の上に抱きかかえると、娘の持っていたぬいぐるみを隣に置いて在過を見つめた。
「パパ、もう一人で苦しまないでください。私も一緒にお供します」
にっこりと笑う妻の姿を見た在過は、また涙がゆっくり零れ落ちる。
「あぁ、頼むよ。これは僕が10年前経験した大失恋のお話しだ」
5年前に小森言葉と出会い、現在は娘も授かって幸せな日々を過していた。
3歳年下の言葉は、聖母マリアのように優しく在過は恥ずかしながらも、遠慮なく甘えてしまうほど美しい女性だ。
今後、娘の為にと戸建てを購入した近藤家は、荷造りの業務に追われていた。
「パパ? そろそろ荷造りしませんと、明後日には業者が来てしまいますよ」
「あぁ、ちょうど段ボールに分けて準備してるよ」
「ふふ、ごめんなさい。言われなくてもやってるなんて、えらいえらい」
「おいおい、もう35歳だぞ?」
「いいえ、パパはまだまだ子供なんです。洗濯物は裏表反対で干しちゃうし。洗った食器も、ちゃんとタオルで拭いてくださいっ」
「パパとママは喧嘩してるの?」
自分より大きなぬいぐるみを抱きかかえて来たのは、5歳になったばかりの娘、近藤希心。真っ白なロング丈フリルドレスで纏ったお姫さんが、こっそりと扉からパパの部屋を覗き込んでいた。
「喧嘩なんかしていないぞっ。パパとママはラブラブなんだ」
「そっか! よかったぁ。いつも夜になるとパパがママを泣かせてるから、嫌いだと思った」
「「え!?」」
在過と言葉は二人そろって言葉がハモってしまう。
顔を赤くしながら、娘を抱きかかえて部屋を出ていく妻が可愛く見えてしまっていたのは、在過だけの宝物になった。
その後、在過は一人で部屋の荷物を段ボールに仕分けしている最中に、休憩しようとコレクションBOXを開けた。
「なんで……あるんだよ。全部、捨てたはずなのに」
銀貨コレクションしていた箱の中から4枚の写真と2通の手紙を見つける。
それは、10年前に付き合っていた元恋人との思い出の写真と、誕生日と記念日に貰った手紙だった。
過去の自分が笑って彼女と写ってる姿に、同棲していたころの夕食を食べている彼女の姿を撮った写真。
両手が痺れている感覚を感じ、心臓がギュっ締め付けられる苦しさが在過を襲う。恐る恐る手紙を開いて、内容が頭に流れ込んでくる。
「近藤君へ。えへへ、手紙なんて恥ずかしいけど私の気持ちを伝えたくて書きます。近藤君と出会えて、すごく幸せです。告白してくれて、公園で軽いキスをしたことが今でもドキドキしちゃってます。これからもずっと好きだよ。神鳴より」
付き合い始めて、最初の誕生日に貰った手紙だ。
人生で初めて手紙と言うプレゼントをもらった在過は、嬉しくてずっと持ち歩いていた記憶が蘇る。
フラッシュバック。
昨日まで一緒に過ごしていたかのような記憶が、鮮明に在過の記憶を侵食していく。
素敵な妻や娘がいる今が幸せな在過だが、過去の呪縛から逃れようと試行錯誤してここまで来た在過は、彼女の思い出と言う記憶が毒となって襲い掛かってくる。
握りしめた手紙に涙が零れ落ちる。涙の落ちる感覚が短くなっていき、手紙に書かれた文字のインクが滲んでいく。
心臓の鼓動が早い。
うるさい。
やめてくれ……止まってくれ。
耐えろ、もう過去の出来事なんだ、なんで涙がでるんだよ。そんな言葉を自分に言い聞かせても、感情のコントロールが上手くいかない。
握りしめた手紙を、涙で溢れかえっている視界で眺めつづけ、嗚咽が止まらない在過は過去に彼女と過ごした思い出が勢いよく襲い掛かってくる。
「パパ!? 」
洗濯物を干すため、在過の部屋を通り過ぎようとしたとき、むせび泣く在過の姿を見て洗濯物を放り投げるほど不安が言葉を襲い、すぐに駆け寄った。
背中に手を添える言葉が、在過の手に何か握りしめていることに気づく。さらに、近くに写真が落ちており、昔の在過と別の女性が笑って写っている写真を見てしまう。
「思い出してしまったのね」
優しく語りかける言葉に、在過は泣き叫んだ。
「あぁぁ、うぅぅうぅあ」
「大丈夫、大丈夫ですよ。過去に何があっても、私は貴方とずっと一緒です」
妻に抱きしめられながら、過去の失恋で泣き叫ぶことに情けなさを感じながらも、涙が止まらず、心の痛みが癒えず、ずっと誰にも言えなった苦しさを妻が受け止めてくれていた。
「あーー、パパが泣いてる!」
パパがママに抱きしめられて泣いている姿を目撃した希心は、指をさしながら小走りで近寄る。
「パパ、ケガしちゃったの?」
「そうね。心の怪我は簡単に癒すことができないけれど、ママとキコちゃんでパパをいい子いい子してあげようね」
「うん!」
「痛いの痛いの~パパに飛んでけぇ~」
在過は、自分の娘が頭を撫でてくれている恥ずかしさに、少しずつ冷静を取り戻し始めていた。妻や娘にも心配させてしまった僕は、旦那も父親も失格ではないだろうか?
そんなことを考えられるほど、落ち着きを取り戻した。
「ごめんな二人とも」
「パパ? どこかケガしちゃったのぉ?」
「怪我はしていないよ。パパはちょっとだけ悲しいことがあったんだ。でも、もう大丈夫!」
満面の笑みで、娘が自分より大きなぬいぐるみを抱きかかえて言った。
「パパ? 悲しいことは全部言わないといけないんだよ。 先生が言ってたのよ!」
目の前には、5歳の女の子とは思えないほど神々しく、優しく微笑むように……子供のような満面の笑みで、力強い言葉を言った。
「そうね。ママと一緒にキコちゃんも一緒に聞いてあげようね」
「うん! 聞いてあげる。キコね、お話し聞くの得意なのよ」
「あらあら」
言葉は娘を膝の上に抱きかかえると、娘の持っていたぬいぐるみを隣に置いて在過を見つめた。
「パパ、もう一人で苦しまないでください。私も一緒にお供します」
にっこりと笑う妻の姿を見た在過は、また涙がゆっくり零れ落ちる。
「あぁ、頼むよ。これは僕が10年前経験した大失恋のお話しだ」
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