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優しき兄
しおりを挟む「まだ休んでいなさい」
起き上がろうとした美琴の側に、恒興がどかりと腰を下ろす。
牢で襲われそうになり、光秀に助けられ、気がつくとこの部屋で布団に寝かされていた。
無性に身体がだるい。
暗く冷たい牢での生活に身体が耐えられず、風邪を引いて熱が出たのだろう。喉も痛むが、渇きも酷く水が飲みたい。
掠れた声で恒興に乞うと、支えられながら美琴は身体を起こした。
茶碗を受け取り満たされた水を一気に飲み干せば、水の通った場所が冷たく感じる。さっきまでの渇きがすっと癒えていくのが心地いい。
恒興に礼を言って、美琴は再び横になった。
(熱が出て仕方なく連れて来てくれたのかな。回復したらまた牢に戻されるのか)
美琴の不安に気づいたかどうかは分からないが、恒興が優しく言葉をかけた。
「案ずるな。お前はここでゆっくり休むといい。信長様のご意向で、これからはここで暮らせる事になった。ここは俺の館だ。狭いが、牢よりは良いだろう?」
恒興の優しい笑顔が、美琴を不安の底から救った。
こんなに親切で優しい人がいるなんて、現代よりよほどいい所かもしれない。
「ありがとう、恒興さん」
光秀にも礼を言わなくてはと思ったが、ここにはいないようだった。
恒興の優しい眼差しに見守られ、美琴は再び目を閉じた。
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