この手に“力”を、心に責任を――王都冒険譚

しらすの灯

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第二十八話 最後の標的

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訓練を終えた私は、アリアナに会いに騎士団本部へ向かった。

ハルートを止めるためには、まず彼の次の行動を予測しなければならない。

そのためには、事件について詳しく知る必要があった。

「セレナ!」

騎士団本部でアリアナと会うと、彼女は複雑な表情を見せた。

嬉しそうでもあり、心配そうでもある。

「元気になったのね。良かった……」

「はい。アリアナのおかげです。ありがとうございました」

私たちは人目につかない場所で話すことにした。

サラも一緒に来てくれている。

「実は、ハルートを止めるために、事件について詳しく知りたいんです」

私が言うと、アリアナの表情が厳しくなった。

「危険よ、セレナ。ハルートは……」

「分かっています。でも、このままでは他にも被害者が出てしまう」

「それは……そうだけど」

アリアナが迷っているのを見て、サラが口を開いた。

「私も一緒に行くつもりよ。セレナ一人じゃない」

「サラさんも……」

「それに、ハルートのことは私が一番よく知っている。だから、私が止めるべきなのかもしれない」

サラの言葉に、アリアナが少し考えてから頷いた。

「分かったわ。協力する」

◆ ◆ ◆

「まず、タリアンから話を聞きましょう」

アリアナが提案する。

「彼なら、被害者たちの共通点について詳しく知っているはず」

私たちはタリアンを呼び出してもらった。

でも、現れたタリアンは、以前とは全く違っていた。

顔色は青白く、目の下にクマができている。

明らかに、恐怖に怯えていた。

「何の用だ……?」

いつもの偉そうな態度は微塵もない。

震え声で、おどおどしている。

「タリアン、被害者たちの共通点について教えてほしいの」

サラが優しく話しかける。

「共通点って……そんなの、決まってるだろ」

タリアンが周りを見回してから、小声で答えた。

「俺たちのグループだよ……非公式な、5人の騎士グループ」

「そのグループで、何をしていたの?」

「その……」

タリアンが言いにくそうにする。

「不正とか、嫌がらせとか……小銭をもらったり……」

「具体的には?」

サラが詳しく聞く。

「商人から金をもらって、競合他社に嫌がらせをしたり……」

「他には?」

「貧民街で威張り散らしたり、炊き出しの邪魔をしたり……」

タリアンの証言を聞いて、私は胸が痛くなった。

あの時、貧民街で見た光景を思い出す。

ハルートがあれほど怒っていた理由が、よく分かった。

「今回の事件の被害者は、全部そのグループのメンバーなのね?」

「ああ……俺以外は、もう……」

タリアンの声が震える。

「生き残りは俺だけなんだ」

「ということは……」

私は冷たいものを感じた。

「ハルートの次の標的は、タリアンということになる」

「そういうことになるな」

アリアナが厳しい表情で頷く。

「ハルートの性格上、必ず狙ってくるでしょう」

タリアンが更に青ざめる。

「やっぱり……俺が次なんだ……」

◆ ◆ ◆

「でも、これはチャンスでもあるわ」

サラが言う。

「ハルートがタリアンを狙ってくるなら、私たちはそれを利用できる」

「どういうことですか?」

「ハルートは正体がバレたから、早く王都から離れようとするでしょう。でも、その前にタリアンを始末しようとするはず」

サラの分析に、アリアナが頷く。

「それに、今までの被害者はすべて夜の巡回中に襲われている」

「そうですね」

「タリアンは今日の夜、巡回の予定があるの」

アリアナがタリアンの勤務表を確認する。

「今日? それじゃあ……」

「ハルートが犯行を決行する可能性が高い」

私たちは顔を見合わせた。

今夜が、決戦の夜になるかもしれない。

「作戦を立てましょう」

私が提案する。

「タリアンの代わりに、私が巡回に出ます」

「え? でも、それは危険すぎる……」

「大丈夫です。今の私なら、少しは戦えます」

私は今朝習得したスキルのことを思い出す。

まだ経験は浅いけど、以前のように一方的にやられることはないだろう。

「でも、勝つのが目的じゃありません」

「どういうこと?」

「時間稼ぎをして、騎士団が到着するまで持ちこたえるんです」

「なるほど……」

サラが私の考えを理解してくれる。

「タリアンはサラさんと一緒に、ギルド近くの宿屋で待機してもらいます。仮にハルートにバレても、サラさんが対応してくれる」

「分かったわ」

「アリアナは私と一緒に行動して、合図があったら騎士団を呼んでください」

「了解したわ」

作戦が決まった。

危険な賭けだけど、これがハルートを捕まえる最大のチャンスかもしれない。

◆ ◆ ◆

「本当に大丈夫なの?」

出発前に、サラが心配そうに聞く。

「正直、怖いです」

私は素直に答えた。

「でも、誰かがやらなければならない。それに……」

私は拳を握る。

「今度こそ、守りたい人を守りたいんです」

オリヴィアは守れなかった。

でも、今度は違う。

今度こそ、大切な人たちを守り抜いてみせる。

「セレナ……」

「サラさんも気をつけてください。タリアンを守ってくださいね」

「もちろんよ」

私たちは、それぞれの持ち場に向かった。

夜が深まっていく。

王都の街に、静寂が訪れる。

でも、この静寂の中で、きっと大きな戦いが始まろうとしている。

私は制服を身にまとい、身なりを整える。

いつものように、きちんとした騎士見習いの格好で。

でも、心の中では覚悟を決めていた。

今夜、すべてが決まる。

ハルートとの最後の戦い。

私は、絶対に負けるわけにはいかない。

大切な仲間たちのために。

そして、道を踏み外してしまったハルートのために。

正義を貫き通してみせる。

深呼吸をして、私は夜の王都へと向かった。

運命の夜が、始まろうとしていた。

(つづく)
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