この手に“力”を、心に責任を――王都冒険譚

しらすの灯

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第二十七話 新たな力

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スキルが一つ使えるようになった私は、急いで訓練場に向かった。

ギルドの受付を通り過ぎるとき、胸が痛んだ。

オリヴィアがいない受付カウンター。

もう彼女の優しい笑顔を見ることはできない。

でも、立ち止まってはいられない。

私は足を止めずに、訓練場へと向かった。

◆ ◆ ◆

訓練場に着くと、バランとサラがいた。

当然、ハルートの姿はない。

もう、彼がここに戻ってくることはないんだ。

「あ、セレナ」

サラが私に気づいて、心配そうに駆け寄ってくる。

「大丈夫? 一人で出歩いて……」

「はい、大丈夫です」

私の表情を見て、サラが少し驚いたような顔をした。

「なんだか、雰囲気が変わったわね」

「実は……」

私は今朝の出来事を話した。

アランとの会話のこと。

そして、スキルが使えるようになったこと。

「本当? スキルが使えるようになったの?」

サラの目が輝く。

一方、バランは私の顔をじっと見つめていた。

「ほう、コツを掴んだみたいだな」

「はい。でも、バランさんがもう少し分かりやすく教えてくれていたら、こんなに遠回りしなくて済んだのに」

私は少し皮肉を込めて言った。

バランがその分かりにくい指導のせいで、だいぶ苦労したのは事実だ。

「はっはっは! そんなもんだ。苦労した方が身につくからな」

バランが豪快に笑う。

相変わらず、自分の指導方法に問題があるとは思っていないようだ。

「とりあえず、試してみましょうか」

サラが提案してくれる。

「模擬戦闘をして、どれくらい使えるようになったか確認してみない?」

「はい、お願いします」

◆ ◆ ◆

サラと向かい合って、木剣を構える。

「それじゃあ、始めましょうか。お互い、身体強化スキルを使って」

「はい」

私は集中して、身体強化スキルを発動させる。

今朝覚えたばかりだけど、一度覚悟が決まったスキルは使いやすかった。

体に力が満ちていくのを感じる。

「来ますよ」

サラも同じスキルを発動させて、私に向かってくる。

今までなら、サラの方が圧倒的に有利だった。

でも――

私の剣が、サラの剣と互角に打ち合う。

スピードも、力も、反応速度も、以前とは全く違う。

「すごい! 本当にスキルが使えるようになってる!」

サラが嬉しそうに言いながら、攻撃を続ける。

私も負けじと応戦する。

接戦が続いて、最終的には私がサラの木剣を弾き飛ばすことに成功した。

「やったあ!」

「超えられちゃったね」

サラが少し寂しそうに、でも嬉しそうに笑う。

「今まで指導してきた甲斐があったわ」

私たちは息を切らしながら、お互いの健闘を称え合った。

◆ ◆ ◆

「今度は俺と戦ってみるか?」

一息ついていると、バランが申し出てきた。

「え? バランさんと?」

サラが慌てて止めに入る。

「バランさん、セレナはまだスキルを覚えたばかりよ。無茶よ」

「大丈夫だ。手加減してやる」

でも、私は気にしなかった。

むしろ、強い相手と戦ってみたかった。

「お願いします」

「セレナ……」

サラが心配そうに見ているけど、私は構わずバランと向かい合った。

「それじゃあ、お互い身体強化を使って戦うか」

「はい」

バランと私、両方がスキルを発動させる。

でも、一太刀受けるたびに、バランとの実力差を思い知らされた。

手加減をしていることは分かるけど、それでも一撃一撃の重さが全然違う。

手が痺れる。

まだまだ、経験値が足りない。

「攻防はこの辺にしておこう」

しばらく戦ったところで、バランが言った。

そして――

「今度は、これを避けてみろ」

バランが攻撃スキルを発動した。

光の刃が私に向かって飛んでくる。

その瞬間、私の頭にハルートとの戦いが蘇った。

あの恐怖が、再び襲ってくる。

でも――

今度は、目をそらさなかった。

恐怖を感じながらも、しっかりとその攻撃を見つめる。

そして、体が勝手に動いた。

横に飛んで、攻撃スキルを避けることができた。

「おお!」

バランが驚きの声を上げる。

「回避スキルが発動したな」

「回避スキル?」

「恐怖に立ち向かう覚悟ができたから、使えるようになったんだ」

バランが説明してくれる。

「回避スキルは、危険を回避したいという強い意志と、それに立ち向かう勇気が必要なスキルだ」

「そうなんですか」

確かに、ハルートとの戦いで感じた恐怖。

それを乗り越えたいという気持ちが、新しいスキルを使えるようにしてくれたのかもしれない。

「もっと早く教えてくださいよ」

私がまた文句を言うと、バランが得意げに笑った。

「この時に言うと、カッコいいからな」

「……」

相変わらず、バランの考えることは理解できなかった。

でも、おかげで二つのスキルを身につけることができた。

身体強化スキルと、回避スキル。

まだ他にも覚えなければならないスキルはあるけど、大きな進歩だ。

◆ ◆ ◆

訓練を終えて、私たちは訓練場の端で休憩していた。

「二つもスキルが使えるようになるなんて、すごいじゃない」

サラが感心したように言う。

「でも、まだまだ経験不足ですね。バランさんとの戦いで、よく分かりました」

「当たり前だ。俺は長年やってるからな」

バランが胸を張る。

「でも、センスはいいと思うぞ。このまま訓練を続ければ、きっと強くなれる」

バランの言葉に、少し自信が持てた。

「ありがとうございます」

「それで、これからどうするつもりだ?」

バランが聞く。

「ハルートを止めなければならないと思っています」

私の答えに、サラとバランの表情が複雑になった。

「危険よ、セレナ。ハルートは私たちよりもずっと経験を積んでいるし、上級スキルも使える」

「分かっています。でも、誰かがやらなければ」

私は拳を握る。

「オリヴィアの仇を討ちたいというわけではありません。ただ、これ以上被害者を出したくないんです」

「セレナ……」

「それに、ハルート自身のためでもあります。このまま罪を重ね続けるより、ちゃんと罪を償ってもらった方がいい」

私の決意を聞いて、サラが小さく頷いた。

「分かったわ。でも、一人では行かせない。私も一緒に行く」

「サラさん……」

「バランさんはどうします?」

「俺は遠慮しておく」

バランが手を振る。

「若い者同士で解決した方がいいだろう」

そう言って、バランは立ち上がった。

「頑張れよ、セレナ。お前なら、きっとやれる」

バランが訓練場を去っていく。

私とサラは、しばらく無言で座っていた。

これから待ち受ける戦いのことを、それぞれ考えながら。

ハルートとの再戦。

今度は、負けるわけにはいかない。

オリヴィアのためにも、ハルートのためにも、そして私自身のためにも。

必ず、決着をつけなければならない。

私は空を見上げて、深く息を吸った。

戦いの準備は、もう始まっていた。

(つづく)
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