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ありえない
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周りの観客は感嘆の声を上げながら、その細くて綺麗な両の手の行方を見逃すまいとじっと見つめている。
その手にはあったはずのコインが手のひらを広げるたびに消えたり表れたりしている。
そして消えたコインはというと、別の様々な場所から出現するというわけだ。
今度はテーブルに伏せられていたカードの下から出てきた。
観客はまたしても感心の吐息を漏らす。
当の自分はというと周囲に悟られぬよう、こっそりとため息をついた。
なんということはない。
そのカードの下のコインは先ほどのターンで置かれたではないか。
手のひらにあったものを親指でうまく隠してポケットへと持って行き、先に置かれたカード下のコインを露出したに過ぎない。
簡単な子供騙しだ。
しかし周りの人間はそんなことも知らずに不思議そうな顔を見たせている。
マジックはタネありきだ。当たり前のことをあたかも不可解な出来事のように見せているだけに過ぎない。
マジックに限らない。
この世の全てのことは理論的に説明可能だ。
いわゆる超能力といって常人には決してできないことをやって見せている輩もいるが、あれも結局はマジックとなんら変わらない。
なんらかの仕掛けがあり、それを巧妙に隠しているだけだ。
今度は観客の一人のポケットからコインが出てきた。歓声が大きなる。
演者は始まってからその客には一度も近づいていない。
ということは客はサクラで間違いない。
倫理的に説明がつかないことなどこの世に存在しない。
どんな不可解そうに見える出来事も現代の科学をもってすれば必ず証明できるのだ。
断言できる。あり得ないことなどあり得ない。
次のマジックに移るようだ。
どうやら今度は少し大掛かりらしい。
手品師は少し距離を取って言った。
人体浮遊をするという。
馬鹿らしい。人がなんの手伝いもなく浮くことなど不可能だ。どうせ極細いテグスか何かでサクラが吊るされるのだろう。
なんとこの場にいる全員を浮かせるというではないか。
そのセリフにはさすがに驚いた。
そんなバカな。
そんなことができるはずがない。
もしや、ここにいる皆がサクラだったというのだろうか。
いや、亡くはない。
さすがに何も知らない人にバレないようにテグスを掛け、浮かせることなど不可能だろう。
少なくともこの自分は断じてサクラではない。
つまり自分が浮くことは絶対にない。
そんなことを考えていると、途端に周囲の人間が1人2人と浮き出した。まるで風船にでもなったかのようにふんわりと、確かに浮遊したのだ。
みな同様に悲鳴を上げている。演技にしてはかなり上手い。
3人4人。どんどんと浮いていく。
ずいぶんとサクラを仕込んだものだな。そう考え始めたその時。
不意に自分の身体が見えない何かに持ち上げられるように浮かび上がった。
そんな……。
意に反して身体は重力から解き放たれたようにふわふわと上昇を続ける。
そんなはずはない。
しかし、確かに現実に起きてた。
そんなバカな……。
あり得ない。
絶体にあり得ない。
そこでスマートフォンを打つ手を止めた。
時計を確認する。
時間だ。
仕事に行かないければ。
残念ながら校正する暇もなさそうだ。もう少し内容を練りたかったが仕方ない。
やむなく画面右上の保存ボタンを押して公開する。
職場まで飛んでいければもう少し余裕があるが、もちろんそんなことは不可能だ。
あり得ないことなどあり得ないのだから。
その手にはあったはずのコインが手のひらを広げるたびに消えたり表れたりしている。
そして消えたコインはというと、別の様々な場所から出現するというわけだ。
今度はテーブルに伏せられていたカードの下から出てきた。
観客はまたしても感心の吐息を漏らす。
当の自分はというと周囲に悟られぬよう、こっそりとため息をついた。
なんということはない。
そのカードの下のコインは先ほどのターンで置かれたではないか。
手のひらにあったものを親指でうまく隠してポケットへと持って行き、先に置かれたカード下のコインを露出したに過ぎない。
簡単な子供騙しだ。
しかし周りの人間はそんなことも知らずに不思議そうな顔を見たせている。
マジックはタネありきだ。当たり前のことをあたかも不可解な出来事のように見せているだけに過ぎない。
マジックに限らない。
この世の全てのことは理論的に説明可能だ。
いわゆる超能力といって常人には決してできないことをやって見せている輩もいるが、あれも結局はマジックとなんら変わらない。
なんらかの仕掛けがあり、それを巧妙に隠しているだけだ。
今度は観客の一人のポケットからコインが出てきた。歓声が大きなる。
演者は始まってからその客には一度も近づいていない。
ということは客はサクラで間違いない。
倫理的に説明がつかないことなどこの世に存在しない。
どんな不可解そうに見える出来事も現代の科学をもってすれば必ず証明できるのだ。
断言できる。あり得ないことなどあり得ない。
次のマジックに移るようだ。
どうやら今度は少し大掛かりらしい。
手品師は少し距離を取って言った。
人体浮遊をするという。
馬鹿らしい。人がなんの手伝いもなく浮くことなど不可能だ。どうせ極細いテグスか何かでサクラが吊るされるのだろう。
なんとこの場にいる全員を浮かせるというではないか。
そのセリフにはさすがに驚いた。
そんなバカな。
そんなことができるはずがない。
もしや、ここにいる皆がサクラだったというのだろうか。
いや、亡くはない。
さすがに何も知らない人にバレないようにテグスを掛け、浮かせることなど不可能だろう。
少なくともこの自分は断じてサクラではない。
つまり自分が浮くことは絶対にない。
そんなことを考えていると、途端に周囲の人間が1人2人と浮き出した。まるで風船にでもなったかのようにふんわりと、確かに浮遊したのだ。
みな同様に悲鳴を上げている。演技にしてはかなり上手い。
3人4人。どんどんと浮いていく。
ずいぶんとサクラを仕込んだものだな。そう考え始めたその時。
不意に自分の身体が見えない何かに持ち上げられるように浮かび上がった。
そんな……。
意に反して身体は重力から解き放たれたようにふわふわと上昇を続ける。
そんなはずはない。
しかし、確かに現実に起きてた。
そんなバカな……。
あり得ない。
絶体にあり得ない。
そこでスマートフォンを打つ手を止めた。
時計を確認する。
時間だ。
仕事に行かないければ。
残念ながら校正する暇もなさそうだ。もう少し内容を練りたかったが仕方ない。
やむなく画面右上の保存ボタンを押して公開する。
職場まで飛んでいければもう少し余裕があるが、もちろんそんなことは不可能だ。
あり得ないことなどあり得ないのだから。
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