ショートショート始めました。

奈央

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献血

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「献血は初めてですか?」
「はい」
「それでは献血カードをお作りしますのでこちらの用紙に記入いただけますか」
申込用紙に自分の情報を書き込んでいく。
「ありがとうございます。それでは続いてこちらの端末に質問が出ますので、正直にお答えください。くれぐれも正直に、お願いいたします」

・現在薬を服用していますか?
・一年以内に大きな病気にかかったりや手術などを受けたことがありますか?
・海外から帰国して4週間以内ですか?
・6ヶ月以内に次のいずれかに該当することがありましたか?
(新たな異性との性的接触があった・男性同士の性的接触があった・麻薬、覚醒剤を使用した・HIV検査が陽性だった)
……

「ありがとうございます。それでは医師による問診の後、問題がなければ献血をお願いいたします」

待合室で天井を眺める。
実は先ほどの質問に一つだけ嘘をついた。
どうせもう長くは生きられないのだ。
ネットで調べた所によると、事前検査の結果には現れないらしい。
好都合だ。
死ぬ前に出来るだけ多く、この血を世の中にばら撒いてやる。

医師の問診が終わり、別室に連れて行かれる。促されるまま深い椅子に横たわった。
腕に太い針が刺さる。
やがて赤い液体が透明の管を伝って流れ出した。
そう、これでいい。
これでいいのだ。
そっと目を閉じた。


彼女が死んだ。
6時間の大手術の上に亡くなった。
輸血量は4リットルを超えたそうだ。
彼女のいないこの人生など、もう生きるつもりはない。
ただ、彼女がもらい受けた分は返したかった。
それまでは生きようと思った。
それまで、は。

おそらく、自分は精神を患っている。
しかし、病院などにかかるつもりはない。
血液検査では精神の病気は検知できない。
借りを返すその時までは、この血液を、この俺の生きた証を世の中にばら撒いてやる。
一つだけついた嘘。
これは人生で2回目の献血だ。
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