ショートショート始めました。

奈央

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隣の席

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「ちょっと聞いてよ! 昨日の帰り、すごい電車空いててさ。車両に私1人だったの」
「へえ。それはすごい。結構遅かったもんね」
「うん。12時回っちゃってた」
「それでも滅多にないわよねそんなこと。ゆっくり座れてよかったでしょ」
「うん、私もそう思ってたんだけどさ、次の駅で乗ってきた人がさ、急に隣に座ってきたの」
「え、何それ、怖い。他の席も空いてたんでしょ?」
「もちろん。私だけだもの」
「えー。どんな人?」
「うーんよく見てなかったんだけど、おじさんって感じかな。でもそんな嫌な感じはしなかった」
「うわー。その状況で嫌じゃない、ってどんな感覚してんのよ。で、どうしたの?」
「でもさすがに怖くなっちゃってさ、思い切って立ち上がって隣の車両に移動したの」
「そうだね。それが正解だよ」
「でもさ、それだけじゃ終わらなくて。その人、同じように車両移ってきたの」
「えーやだ……。それで?」
「うん、もう怖くなっちゃって、つぎの駅で降りて、走って駅員さんのとこに行っちゃった」
「大丈夫だった?」
「うん。それからは大丈夫だった。でもなんで追いかけてきたんだろう、って」
「まあでもいるよね。何考えてるかわかんない人って」
「……」
「ん? どうしたの?」
「いや、なんだか落ち着いて思い返してみたら、知ってる顔だったかもな、って……」
「やだ、知り合いだから声かけようとしたんしゃない?」
「そうなのかも……。悪いことしたな。でも誰だろう。思い出せないな」
「あ……」
「どうしたの?」
「今日何日だっけ?」
「どうしたの急に。✳︎月✳︎日でしょ?」
「思い出しちゃった……」
「あら、よかったじゃない。で誰なの?」
「おじさん」
「うん、それはわかってるって」
「いや、違うの。叔父なの」
「あ、そういうこと。でもわかってよかったじゃない。ちゃんと謝っておきなよ?」
「いや、できない」
「なんでよ」
「だって。今日、その人の命日なんだもん」
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