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第4話 魔法使い登場
しおりを挟む「ハリウッドコップ2」は大成功だった。
その年の全米収益がなんと第3位。
マウンテンピクチャーズでも予想外だった。
アメリカ、ヨーロッパでもヒット。
日本では堂々の4週連続1位に輝いた。
この映画の倉田のギャラは推定20万ドル。
日本円にして約3000万円。
興行収入からすれば安い。
SNSでMPSは儲けすぎと言われた。
そんな話題も後押しして倉田の人気がアップ。
TV番組や雑誌の取材はひっきりなしに来る。
CMもスニーカーに車。ハンバーガーなど
4社との契約で推定約1億。
最初はキワモノ俳優をアジアから連れて来た。
そんな噂で見世物扱いだった。
だが、それを一蹴。
名も無き俳優は一躍有名人となった。
MPSとしても、倉田を俳優として認めよう。
スター扱いしてやってもいいだろう?
と考えを改めた。
******
そんな矢先、打ち合わせで岡元が渡米する。
ここに来るのもひさしぶりだ。
けっこうきれいに片付いているリビングに座る。
「でもほんとよかったですね」
「長年の苦労が報われたんじゃないですか?」
「みんなのおかげだよ」
映画配給会社に入社したての頃
エキストラ出演をもらうために
事務所周りをしていた倉田の姿を思い出す。
苦労人だから調子に乗る所がないのがよかった。
謙虚な倉田を尊敬している岡元だった。
「わ!」
2人の沈黙をやぶるように
急に鍵の音がしてドアが開く。
驚く岡元に倉田が言う。
「ああ、堀井ちゃんだよ」
ああ、そうだ。堀井が来たのか?
岡元は彼女の存在を忘れていた。
*****
あの面接から彼女も アメリカへ渡ったのだ。
今はKコーポレーションの社員として
倉田の傍に住んでいる。
しかし、あいかわらずダセェかっこうだなぁ
岡元はあのチューリップハットを見て思った。
「岡元さんおひさしぶりです
その節はお世話になりました」
目深にかぶったトレードマークを脱いで
ぺこりと頭をさげる。
「どう?慣れたかい?」
「はい、本当によくしていただいて
社長さんにも岡元さんにも感謝しています」
「岡、堀井ちゃんよくやってくれるよ。
ごはんさぁ、すっごい美味いんだよ。
オレいつも驚いてばかりだよ
イイ人来てくれたよ、うん」
「そんなに美味いんですか?」
「オレがこれこれこういう味って言ったらさ
その味の料理が出てくるんだよ
堀井ちゃんは魔法使いさ」
「へぇ~? そ~んなにすごいんですかぁ?」
岡元は面接で彼女の絶対味覚に驚いたものの
この同い年の田舎者をバカにしていた。
面接時にその能力を見せつけられた驚き。
それと同時に底知れぬ恐怖も感じた。
その反動からか、岡元は彼女が嫌いだった。
その言い方が気に入らなかった倉田が言う。
「なんだ?堀井ちゃんの腕を信じていないのか?
オレの大事なシェフなんだからな。
もっと尊敬の念をもって接しろよ、な?」
少し冗談のような口調だったが表情は違った。
岡元は瞬時に叱責を感じた。
「あ。いや、すいません」
「オレの命を支えてくれてるんだぞ?」
「そうですよね、すいません」
「え、いえ、そんな、気にしないでください」
堀井はうれしかった。
いろんな飲食店に就職をしたが調理場に入っても
その舌が鋭いあまり料理人に疎ましがられる。
オーナーと衝突することも多かった。
そのせいでなんども転職をし
落ち着いて才能を振るう事ができなかった。
味は求められないが、ある程度自由にできる
そんな茂本弘の劇団の食堂に転がり込んだ。
彼女自身、自分の能力を良い意味で武器にして
料理の腕を十二分に披露する場が欲しかった。
でも茂本の劇団では若い団員も多く質より量。
やっぱり自由に味を追求したかった。
倉田の元ではのびのびと料理ができる。
彼の好みを聞いて健康バランスを考えながら
アメリカで手に入る食材を駆使して
日本の料理にアレンジするのは楽しい。
倉田の好みを探りながら「美味い」と言わせる
これが最大のやりがいだった。
自分がスターを支えているという満足感もあった。
魔法使いが腕によりをかけて作った今夜の献立
炊き込みごはん。味噌汁。小松菜のおひたし。
鶏の照り焼きに焼き魚。野菜サラダ。
「やっぱり、こいつは天才だ」
岡元はあの応接室を思い出した。
何を食べても美味しい。
出汁の取り方、塩味。玄人はだし。
言うことなしだ。
めしが美味いとやる気もでるし
倉田さんも安心だな。
うれしい反面この料理の天才をみて思った。
こいつ
マンション別に用意してもらってるよな。
家財道具もすべて事務所で揃えたし。
家賃と光熱費も、食材も全部うちじゃん?
社長が留守の間はこいつも仕事は臨時休業だ。
けっして傍に張り付いているわけではない。
要所要所で社長の世話をする程度でいい。
家事全般、要領よくやれば仕事も楽。
これで60万か70くらいもらってるはずだ。
アメリカの物価を考えても悪くない待遇。
「ありえねえわ?いい気になりやがって。
でも社長のお気に入りなんだよなあ」
岡元は魔法使いに感謝しつつも忌々しく思った。
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