スクリーンより愛をこめて

CAROL

文字の大きさ
24 / 36

第24話 ガミラからの贈り物

しおりを挟む


10日ほどしてビルから連絡があった。
ガミラの母が会ってくれるという。 

ナビを頼りに教えられた住所に向かう。
ガミラの家に行くのは始めてだった。

 LA郊外の住宅地。
かわいい一戸建てだった。 
緊張しつつベルを押す。 

「Oh クラ、ザラ・トンプソンよ」 

ガミラは母親似だったんだ?そっくりだ。
彼女が年を取ればこんな感じだろうと思った。 

「あなたに会えてうれしいわ」 

泣きながら話が始まる。 
ガミラは大学卒業後、日本のMPS支社で就職。
26歳で同級生と結婚したが5年で離婚。 
主人が嫉妬深い男で、ガミラの美しさを 
心配するあまり束縛が酷かった。
仕事を辞めろ、家から出るな。
ガミラはこの状況に耐え切れずに別れた。

33歳の時にMPS本社に戻りマネージャーとなる。 
だが、受け持つ俳優と悉く馬が合わない。 
ケンカやクレームが多くトラブル続き。 
マネージメント能力が無いなら勤まらない。

次、ダメだったら辞めてもらうよ。 

最後の試金石が倉田のマネージメントだった。 
日本に居たんだしこいつの面倒は見られるだろ? 
社内ではキワモノ俳優と
トラブルメーカーのコンビだと笑われた。

倉田は引退も視野に入れた崖っぷちの状態で渡米。 
ガミラも倉田の担当にすべてを賭けていた。 
同じような境遇だった2人は相性がぴったり。 
トラブルはガミラのせいではなく
俳優個人の問題? そんな評価に変わっていった。 

「あの子が残れたのはクラのおかげよ」 

「いや、私も彼女に支えられたんですよ」 

英語ができなかった頃
ガミラは母のような存在だった。 
彼女は倉田のマイナスになる通訳は一切しなかった。
通訳の齟齬で立場が悪くなることはいくらでもある。 
その事を倉田は感謝していた。 

話も一段落した。倉田はガミラが
どういう状況なのか気になった。 
日本ならお通夜、葬儀などがあるが? 
お墓にいるならお参りがしたい。 

「あの子はA国に送るの。
安置所でエンバーミングできれいなままよ」

葬儀はせずに埋葬を母国でやるという。
倉田はあえてガミラと対面したくはなかった。 
実際に顔を見ればその死は認める事となる。 
ただ、会っていないだけだと思いたかった。 

また倉田は形見分けが欲しいと言った。
なにか彼女の持ち物をもらえないか? 
ザラは喜んでOKした。 
彼女の部屋を見てやって欲しいという。
そこから何か選んで持って帰れと言う。

 ******** 

部屋に案内される。 

ドアには漫画のネームプレート。
ひらがなで「がみらのおへや」と書いてある。
日本で使っていた物のようだ。
 
ザラはドアを開けながら言った。 

「あなたと15年前に会いたかったわ」 

「15年前?」 

「あの子がまだ独身だったからよ。
クラとチャンスがあったかもしれないでしょ?」

笑いながらドアを開ける。

花の香りがする部屋だった。 
大きな白い百合が花瓶に。

 「なんとなくあの子みたいでしょ?」 

そうだ、彼女は百合のようだったな。
トレードマークの白いジャケットを思い出す。
漫画のキャラのぬいぐるみがベッドに。 
きれいに整理された本棚には日本の漫画やCD。 
クールだったが、素はかわいい子だったんだ。

部屋の一角。

壁にたくさんの写真が貼ってある。
子どもの頃のガミラはかわいいな。
彼女を抱くザラは女優のような美しさだ。
その隣は父親か?ご存命なのかな? 
ザラが説明してくれた。

ガミラの故郷 A国は内戦を繰り返していた。 
彼女の祖父は戦火を避けてアメリカに渡った。
その子アメルがアメリカで生まれた。
19歳の時同じ中東出身のザラと出会う。
2人の間に生まれた美しい花がガミラだった。

アメルが41歳帰国した際
たまたま空爆に遭い死亡。 
彼はそのままA国で埋葬された。 

「ガミラはアメルと天国で暮らすために帰るの。  
私も死んだらA国へ帰るつもりなの」 

そうか、ガミラは父と再会するんだ? 
故郷へ…良いことだ。 
日本を離れている倉田はしみじみ思った。

 「アメルが死んだ時、あの子は高校生。
ぬけがらのような日々を送っていたの。
環境を変えるためにも日本に留学したの」 

大学、たしか常置大学だっけ?
友人との楽しそうな写真。 
父の死を振り切るためだったんだ。
結婚の写真は……無い?。
残したくないメモリーだったんだな。

お!これはMPSだ。 
写真の枚数が1番多い。 

ビル、その他のスタッフと。
撮影中、現場を見守る厳しい眼差し。 
しかしキレイだなぁ… 
女優をやればよかったのに。

お!これはフランスだ、堀井ちゃんとだ。 
あ、これ2人で買い物に行った時か? 
楽しそうだな。
あ!マリーとだ… いつの間に?
仲良かったのかな? 
マリーを見てちょっと複雑な気になる。 

そのタイミングでザラが言った。 

「このベッドで寝てたのよ…  
本当に寝たままだったの…  
何度も何度も起こしたけど…」

「私、壊れるほど叩いたのよ・・・」 

倉田は我慢できずにザラの前で泣いた。 
ザラも倉田の背にしがみついて泣いた。 

******* 

一通り話をして形見分けはTシャツになった。 

彼女は身体の線が出るのを嫌って
メンズのMを 着ていたため、
倉田にぴったりだった。 

「ガミラを想って着ます」 

「あの子もよろこぶわ、あ、それから」

 そういうと隣の部屋へ。

 「これは?」

 「クラに渡して欲しいと、メモがあったの。
 だからこれは警察に出さなかったの。  
 没収されるかもしれないでしょ?」  

 ザラは小さな箱を倉田に渡す。 
 タバコほどの小さな箱だ。 
 何が入っているんだろう? 
 空っぽかな?と思うほど軽い。 

 だが、その中身はあまりにも重いものだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

婚約破棄後のお話

Nau
恋愛
これは婚約破棄された令嬢のその後の物語 皆さん、令嬢として18年生きてきた私が平民となり大変な思いをしているとお思いでしょうね? 残念。私、愛されてますから…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...