23 / 36
第23話 ふざけるな
しおりを挟むMPSビルに車が停まる。
1Fエントランスに横付けされると
倉田は飛び降りた。
ドアを閉めずに走る。
受付嬢に軽く手をあげエレベーターへ。
イラつきながらボタンを連打。
後ろからジェシカが走ってきた。
「クラタ、ビルが25Fで待っています」
一瞥した倉田は返事をしなかった。
こいつは何を言ってるんだ?
いつもの階だ。
マネージメントのつもりか?
今会ったばかりじゃないか?
エレベーターが来た。
ジェシカも付いてくる。
「何で乗るんだ」
㉕を押しながら尋ねた。
え?と言う顔をして倉田を見返す。
ジェシカは拒否されている事に気づいた。
25Fまではけっこう時間がかかる。
ジェシカはずっと俯いたままだった。
スゥ
ここに来ると胃が痛いな…
美しいブルーの絨毯はこのフロア専用だ。
もともと好きな色だが、嫌いになりそうだ。
心臓の鼓動が聞こえる。
イライラと恐怖でノックする。
付いてくるジェシカに尋ねた。
「どこまで付いてくる気だ?」
「……」
ドアがガチャリと開いた。
「Oh クラ、急にすまなかったね」
「ビル、彼女も呼んだのか?」
申し訳なさそうにしているジェシカを見た。
「ジェシカは君の通訳で」
「誰が決めた?オレはこんな人は知らない」
彼女はフリーズしている。
「すまないジェシカ、あとで呼ぶよ」
ビルはそういうと倉田だけを部屋に入れた。
ドアが閉まった瞬間、詰め寄る。
「ビル!ガミラは?あの女が担当?
どういう意味なんだ?」
完全にケンカ腰だった。
ビルはまあまあ落ち着けと言わんばかりに
倉田の両肩を掴みながら座れと促した。
「君に報告する事があるんだ、いいか?
落ち着いて聞いてくれ」
苦い顔をした。
やっぱり移籍か?解雇か?
「実は……」
しかたない。
目を閉じた。
「……」
苦悶のままうつむくビル。
「どうしたビル?」
「ああ、実は・・・・」
「ガミラが死んだ」
「っ?」
声にならなかった。
「ガミラが死んだんだ」
「え!何言ってんだ?おいっ?」
ガバと立ち上がった。
「座れ、クラ」
「うるせえ!」
「クラ、聞いてくれ」
「てめえ!ふざけんなっ」
すべて日本語だった。
まるで中高生のケンカのように怒鳴った。
「クラ、落ち着け」
「そんなわけねえだろうぅ!」
ガーン 椅子を蹴る。
ビルが羽交い絞めにする。
183㎝と長身の倉田だが
2m130キロのビルの前では子ども扱いだ。
怪力で机に押さえつけられた。
「クラ、頼むよ、落ち着いてくれ」
倉田は逮捕された犯人のように
机にうつぶせに押さえつけられた。
泣きながら、机を叩き怒鳴る。
「離せ、てめえ、ビルっ
この野郎 はなせえええっ」
泣き声が部屋に響いた。
******
倉田が平静を取り戻すのには
けっこうな時間が必要だった。
「すまん、ビル」
「いいんだ、オレも聞いた時は取り乱した
いいか?とにかく聞いてくれ」
ガミラは体調がすぐれないという理由から
休みがちだったのは社内でもわかっていた。
彼女は母親と2人暮らしだったし
連絡は取っていたので心配はしてなかった。
だがある朝、起きてこないガミラを心配して
母親が見に行くと部屋で亡くなっていたそうだ。
死因は薬物の摂取による心臓麻痺。
遺書は母とMPS宛に2通。
警察の調べで事件性は無く自死の判定。
「遺書には何と?」
「仕事が減ったのは私のせい。責任は私だと」
お詫びの遺書だったというのだ。
「ガミラのせいなわけないだろう?」
「FB財団のせいでオレが干されたんだよ。
ガミラには今回の件、伝えてなかったよな?
教えてなかったから自分を責めたんじゃないのか?」
「いや、彼女にもこの事は伝えたんだ」
あの会議室で郵便物の確認をした後
ガミラを呼んで FB財団の経緯は伝えた。
「なんて言ってた?」
「仕事が減った理由がわかったわ
なんとかしなきゃねって」
倉田はガミラの死がどうしても納得できなかった。
他に理由があるんじゃないか?と思った。
また倉田自身にメッセージが無いのも気になる。
「クラの言う通りだ、ガミラの死は謎だ。
なので、第三者の調査チームを立ち上げた。
人間関係や仕事内容を調べている。
マスコミに公表するのはそれからだ」
今回の件はF・B財団は関係ないはずだが
KOHEI KURATAのマネージャー謎の自殺は
あまりにスキャンダルすぎる。
公表するときはあくまでも病死としてだ。
MPS側としても慎重に対処する事となる。
「病死ってことにしてくれよ」
「あ、それから、ガミラのお母さんに
オレは会うことってできるかな?」
「お母さんにお悔みとお別れがしたいんだ。
それになにかわかるかもしれないしな」
「わかった。母親がOKしてくれたら連絡する」
「それから、ビル。言っておくぞ」
「ジェシカとか言う女。必要ないからな。
日常会話はなんとかできてるだろ。
もし困ったらアプリで話す」
「ジェシカは嫌いか?」
「嫌いもなにも、勝手に決めるなよ」
「悪かったな、こっちも慌ててしまって」
ビルはさっき押さえつけていた肩をポンと叩く。
話は済んだ。 ジェシカは廊下に立っていた。
倉田は一瞥すると無言でエレベーターに乗った。
ジェシカが一緒に乗ろうとしたが手で制した。
彼女に罪はないがお断りだ。
「オレの担当はガミラだバカ野郎」
ドアが閉まった瞬間倉田はしゃがみこんだ。
①を押す事も無く泣き出した。
誰かがボタンを押したのか?
ガクンという音と共に動き出す。
静かに堕ちていくエレベーター
倉田の運命を暗示しているようだった。
0
あなたにおすすめの小説
バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~
スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。
何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。
◇◆◇
作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。
DO NOT REPOST.
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる