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第一章
あなたは誰ですか?
ベンジャミンはエドモンド達を応接間に通す様、家令に指示した。そして、ベアトリーチェと部屋着姿のリリエンヌには着替えをしてこいと、冷たく言い放った。あまり帰宅することがないのに、帰ってくると決まって二人に威圧的な態度をとる。誰から見ても妻と娘にするような態度ではない。
二人は自室に戻ると新しいドレスに着替える。暫くすると、家令のモーリスが入ってきて、ベアトリーチェは呼ばれるまで部屋で待つように伝えられた。恐らく大人同士の話し合いがあるのだろうが、ベアトリーチェは納得がいかなかった。回帰したベアトリーチェの精神年齢は31才。両親達とさほど変わらない。同席しても十分に彼らの話を理解できるのだから。
仕方なくベアトリーチェは、呼ばれるまでの時間、隣国フロンティア帝国についての本を読むことにした。本には、フロンティアとこの国アルカイド王国の事が記されていた。
昔から二つの国は切磋琢磨して、国を発展させてきた。中でも精霊師と呼ばれる魔術師の存在が大きい。だが、残念なことに今、どの国にも精霊を呼べる能力のある者は殆ど存在しないのだ。しかし、魔石を填め込んだ魔道具は今も健在で、その魔石の再利用方法を一番最初に発見したのはフロンティア帝国だった。その為、先代までは王国だったのに、近隣の小国を飲みこんで、今は帝国にまで発展させたのは、初代皇帝となったウルフガンの政治的手腕が優れているのだとベアトリーチェは考えた。
回帰前にリリエンヌの手紙に書いてあった名前は『レオンハルト』。
自分を助けてくれた人物も『レオン』と呼ばれていた。
きっとあの人がそうなのだとベアトリーチェは確信している。
何故、今回は死なずにすんだのかはわからないがきっと、何が起きたのだ。それも特別な何かが…。だとすれば、母や自分の未来も変えられる。ベアトリーチェは、僅かな期待に胸を踊らせた。
応接間の扉を開くと、顰め面をしているベンジャミンと違って、リリエンヌの表情は明るい。ベアトリーチェは違和感を覚えた。それぞれが座っている場所がおかしいのだ。
あからさまに不機嫌なベンジャミンの前に来客者である『レオン』と呼ばれる男性とその隣にはリリエンヌが座っている。そして、一人掛け用の椅子に叔父エドモンドが鎮座していた。
何処に腰かければいいのか迷っているベアトリーチェを『レオン』が抱き上げて膝の上に乗せた。
…これはどういうこと?
「狡いぞ!レオン。私がベアトリーチェを膝に乗せたかったのに!!」
伯父がプンスカと子供の様に怒っている。『レオン』の隣でリリエンヌは兄エドモンドを「まあまあ、お兄様。あとでいくらでもベアトリーチェを抱き上げることが出来ますから」と宥めている。
呆気にとられているベアトリーチェだけが状況を把握できないでいた。
やっぱり似ている。
ベアトリーチェは、『レオン』の目を再度確認した。使用人からは目の色以外は、リリエンヌに似ていると言われたが、よく見ると父とは色が違って見える。何より一番違う所は、光の加減で色が変化する所。父の持つ碧よりも『レオン』の持つ翠の方がずっと美しかった。そう思うとベアトリーチェの中に温かいものが流れ込んできた。
この世に母以外に自分と似た色を持つ男性に興味が湧いたのだ。
「どうだ。羨ましいだろう。俺の可愛い娘だからな」
「ぐぬぬぬぬ──っ」
伯父が悔しそうに口を結んでいるが、それよりもさっきの言葉が気になる。確かに『娘』と聞こえた。
ベアトリーチェはトクンと小さな胸が鳴る音を聞いた気がした。じっと、『レオン』の方を見つめて、彼の発する次の言葉を待っていた。
悪戯が成功した子供の様な不敵な笑みを浮かべる『レオン』に対して、隣に座っているリリエンヌは眉根を顰めて「困った人ね」と溢していた。
応接間は彼の爆弾発言によって水を打ったように静かになってしまった。
二人は自室に戻ると新しいドレスに着替える。暫くすると、家令のモーリスが入ってきて、ベアトリーチェは呼ばれるまで部屋で待つように伝えられた。恐らく大人同士の話し合いがあるのだろうが、ベアトリーチェは納得がいかなかった。回帰したベアトリーチェの精神年齢は31才。両親達とさほど変わらない。同席しても十分に彼らの話を理解できるのだから。
仕方なくベアトリーチェは、呼ばれるまでの時間、隣国フロンティア帝国についての本を読むことにした。本には、フロンティアとこの国アルカイド王国の事が記されていた。
昔から二つの国は切磋琢磨して、国を発展させてきた。中でも精霊師と呼ばれる魔術師の存在が大きい。だが、残念なことに今、どの国にも精霊を呼べる能力のある者は殆ど存在しないのだ。しかし、魔石を填め込んだ魔道具は今も健在で、その魔石の再利用方法を一番最初に発見したのはフロンティア帝国だった。その為、先代までは王国だったのに、近隣の小国を飲みこんで、今は帝国にまで発展させたのは、初代皇帝となったウルフガンの政治的手腕が優れているのだとベアトリーチェは考えた。
回帰前にリリエンヌの手紙に書いてあった名前は『レオンハルト』。
自分を助けてくれた人物も『レオン』と呼ばれていた。
きっとあの人がそうなのだとベアトリーチェは確信している。
何故、今回は死なずにすんだのかはわからないがきっと、何が起きたのだ。それも特別な何かが…。だとすれば、母や自分の未来も変えられる。ベアトリーチェは、僅かな期待に胸を踊らせた。
応接間の扉を開くと、顰め面をしているベンジャミンと違って、リリエンヌの表情は明るい。ベアトリーチェは違和感を覚えた。それぞれが座っている場所がおかしいのだ。
あからさまに不機嫌なベンジャミンの前に来客者である『レオン』と呼ばれる男性とその隣にはリリエンヌが座っている。そして、一人掛け用の椅子に叔父エドモンドが鎮座していた。
何処に腰かければいいのか迷っているベアトリーチェを『レオン』が抱き上げて膝の上に乗せた。
…これはどういうこと?
「狡いぞ!レオン。私がベアトリーチェを膝に乗せたかったのに!!」
伯父がプンスカと子供の様に怒っている。『レオン』の隣でリリエンヌは兄エドモンドを「まあまあ、お兄様。あとでいくらでもベアトリーチェを抱き上げることが出来ますから」と宥めている。
呆気にとられているベアトリーチェだけが状況を把握できないでいた。
やっぱり似ている。
ベアトリーチェは、『レオン』の目を再度確認した。使用人からは目の色以外は、リリエンヌに似ていると言われたが、よく見ると父とは色が違って見える。何より一番違う所は、光の加減で色が変化する所。父の持つ碧よりも『レオン』の持つ翠の方がずっと美しかった。そう思うとベアトリーチェの中に温かいものが流れ込んできた。
この世に母以外に自分と似た色を持つ男性に興味が湧いたのだ。
「どうだ。羨ましいだろう。俺の可愛い娘だからな」
「ぐぬぬぬぬ──っ」
伯父が悔しそうに口を結んでいるが、それよりもさっきの言葉が気になる。確かに『娘』と聞こえた。
ベアトリーチェはトクンと小さな胸が鳴る音を聞いた気がした。じっと、『レオン』の方を見つめて、彼の発する次の言葉を待っていた。
悪戯が成功した子供の様な不敵な笑みを浮かべる『レオン』に対して、隣に座っているリリエンヌは眉根を顰めて「困った人ね」と溢していた。
応接間は彼の爆弾発言によって水を打ったように静かになってしまった。
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