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27.優柔不断
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これは、どういう状況なんだ。
シエルキューテと戦ってるってことは、こいつらも僕と同じシーリスの…?
「何しているのカリム。早くその女を取り押さえなさい!」
「貴方! まさか、あの魔物の仲間なの!」
取り押さえる…。そんな事したら、シエルキューテ達はこの人達を殺すんじゃ…。
「あー焦れったい!! あたしが殺るよ!!」
メデューサが女の人へと差し迫る。
咄嗟に、メデューサから女の人を庇い。鍔迫り合いの状態に持ち込んだ。
『カリム君、何をしているんだ? その行動の意味は理解しているんだろうな。』
「いや…、でも殺す必要は無いと思うんだ。」
目の前のメデューサは鬼の形相で僕を睨んできた。
「シエルキューテ!! あんたの眷属殺してもいいよなぁ!! 完全に敵対してんだからさぁ!!」
「ダメよ。カリムは私が説得するわ。」
説得? 人を殺す手伝いをしろって事か。そんなのは毛頭から無理な話だよ。
「《氷刃》。」
後ろの女の人が魔術を放ってきた。僕はギリギリでその魔術を回避したが、メデューサにはその魔術がもろに直撃した。だが、かすり傷程度の傷しか受けていないようだ。
「ミーネ姉ちゃん! あの人は庇ってくれた人だよ。」
「うっさい。とにかく、今はあいつを囮にして逃げるわよ。」
そう言い、あの三人組はダンジョンの入口に向かって走り去って行った。
「逃がすかぁあああ!!」
そう叫ぶメデューサの前に僕は立ち塞がる。
「邪魔だ!! 退け!!」
「すみません。退けません。」
そう言った直後、問答無用で殴り飛ばされる。
殴ったのはメデューサではなくシエルキューテだった。
「バーラ、ここは私が。」
メデューサは僕を尻目に逃げた三人を追いかけて行く。
「カリム、大人しくしていなさい。」
「大人しくする気なんて無いよ。あの三人をどうする気なんだ?」
「追いかけてでも仕留めるわ。…というか、何故そこまでしてあの三人組を庇うのかしら。意味が分からないわ。」
「やっぱり人殺しも、それを見過ごすのも僕には無理なんだよ。」
「…人を殺せたから安心したのだけれど、少し見ない内に随分と情けなくなったのね。
お喋りはもう良いわ。レミィ、カリムを拘束しなさい。」
そう言われた瞬間、首に微かな電流のような刺激が走る。意識はそのままで身体の感覚が無くなり、ほんの微塵も動かせなくなった。
「カリムさん。奥の部屋で一緒に休むのですよ。」
腕を持たれ、引き摺られ、何も抵抗出来ずになすがまま何処かの部屋まで運ばれた。
◇□◇□◇□◇
とあるダンジョンの道中。
『戻ったか、バーラ。』
「おう、だが三人は逃がしちまった。氷の壁で道が塞がれてたんだ。」
『そんな事は言われなくても分かる。それよりも小僧についてだ。』
シエルキューテが口を開く。
「カリムは私が何とかするわ。」
『もういい。あの小僧は使い物にならない。あわよくば器にとでも思っていたが、結局はまともに人も殺せない半端な餓鬼だった。あれじゃ器にすらなれない。』
「それも含めて私が何とかするわ。」
『妄言も大概にしろシエルキューテ。あの木偶の坊を具体的にどうする気だ? それとも、カリムに情でも芽生えたか?』
「い、いえ、情なんか湧いていないわ。」
『ならそれを証明しろ。お前がカリムの魔力を回収しろ。』
「…器にするのでは無かったのかしら。」
『さっき言っただろ。あの餓鬼は器にすらなれない。もう不要なんだよ。あのまま放置するのは勿体ない。だからせめて魔力だけは回収しろ。』
「…分かったわ。」
そう言い残し、シエルキューテはカリムの元へと向かった。
『バーラ。』
「おう。なんだ魔王様。」
『裏切り者はお前が殺せ。』
◇□◇□◇□◇
まだ少し痺れるが身体の感覚が少しは戻ってきた。だが、猿轡をつけられ目隠しもされ手足も拘束され、身動ぎ一つ取れない状態で拘束されている。
目の前には何かの気配を感じる。恐らくはレミィだろう。これから僕はどうなってしまうんだろう…。
レミィの気配とは別の足音が此方に近付いてくる。
「あ! シエルキューテ様です。どうしたのです?」
レミィの声がそう反応する。
「レミィ。あなたはもう帰っていいわよ。」
「断るのです。カリムさんを見張る命令を受けているのです。」
「だから、その命令を解除するのよ。貴方はもう帰っていいの。」
「断るのです。魔王様からの命令なのです。」
「魔王様の…そう。もう隠せないのね。」
何か岩のような硬いものが砕けたかのような音が響いた。
その後に僕の目隠しが外される。
目の前にはシエルキューテが居て、その後ろではレミィが壁にめり込み気絶していた。
「カリム。逃げるわよ。」
そう言い、僕に付けられていた拘束具を乱暴に破壊し取り除いた。
「一体、何が?」
「いいから今は地上に逃げるのよ。着いて来なさい。」
そのまま手を引かれてダンジョンの入口へと向かって走らされた。
シエルキューテと戦ってるってことは、こいつらも僕と同じシーリスの…?
「何しているのカリム。早くその女を取り押さえなさい!」
「貴方! まさか、あの魔物の仲間なの!」
取り押さえる…。そんな事したら、シエルキューテ達はこの人達を殺すんじゃ…。
「あー焦れったい!! あたしが殺るよ!!」
メデューサが女の人へと差し迫る。
咄嗟に、メデューサから女の人を庇い。鍔迫り合いの状態に持ち込んだ。
『カリム君、何をしているんだ? その行動の意味は理解しているんだろうな。』
「いや…、でも殺す必要は無いと思うんだ。」
目の前のメデューサは鬼の形相で僕を睨んできた。
「シエルキューテ!! あんたの眷属殺してもいいよなぁ!! 完全に敵対してんだからさぁ!!」
「ダメよ。カリムは私が説得するわ。」
説得? 人を殺す手伝いをしろって事か。そんなのは毛頭から無理な話だよ。
「《氷刃》。」
後ろの女の人が魔術を放ってきた。僕はギリギリでその魔術を回避したが、メデューサにはその魔術がもろに直撃した。だが、かすり傷程度の傷しか受けていないようだ。
「ミーネ姉ちゃん! あの人は庇ってくれた人だよ。」
「うっさい。とにかく、今はあいつを囮にして逃げるわよ。」
そう言い、あの三人組はダンジョンの入口に向かって走り去って行った。
「逃がすかぁあああ!!」
そう叫ぶメデューサの前に僕は立ち塞がる。
「邪魔だ!! 退け!!」
「すみません。退けません。」
そう言った直後、問答無用で殴り飛ばされる。
殴ったのはメデューサではなくシエルキューテだった。
「バーラ、ここは私が。」
メデューサは僕を尻目に逃げた三人を追いかけて行く。
「カリム、大人しくしていなさい。」
「大人しくする気なんて無いよ。あの三人をどうする気なんだ?」
「追いかけてでも仕留めるわ。…というか、何故そこまでしてあの三人組を庇うのかしら。意味が分からないわ。」
「やっぱり人殺しも、それを見過ごすのも僕には無理なんだよ。」
「…人を殺せたから安心したのだけれど、少し見ない内に随分と情けなくなったのね。
お喋りはもう良いわ。レミィ、カリムを拘束しなさい。」
そう言われた瞬間、首に微かな電流のような刺激が走る。意識はそのままで身体の感覚が無くなり、ほんの微塵も動かせなくなった。
「カリムさん。奥の部屋で一緒に休むのですよ。」
腕を持たれ、引き摺られ、何も抵抗出来ずになすがまま何処かの部屋まで運ばれた。
◇□◇□◇□◇
とあるダンジョンの道中。
『戻ったか、バーラ。』
「おう、だが三人は逃がしちまった。氷の壁で道が塞がれてたんだ。」
『そんな事は言われなくても分かる。それよりも小僧についてだ。』
シエルキューテが口を開く。
「カリムは私が何とかするわ。」
『もういい。あの小僧は使い物にならない。あわよくば器にとでも思っていたが、結局はまともに人も殺せない半端な餓鬼だった。あれじゃ器にすらなれない。』
「それも含めて私が何とかするわ。」
『妄言も大概にしろシエルキューテ。あの木偶の坊を具体的にどうする気だ? それとも、カリムに情でも芽生えたか?』
「い、いえ、情なんか湧いていないわ。」
『ならそれを証明しろ。お前がカリムの魔力を回収しろ。』
「…器にするのでは無かったのかしら。」
『さっき言っただろ。あの餓鬼は器にすらなれない。もう不要なんだよ。あのまま放置するのは勿体ない。だからせめて魔力だけは回収しろ。』
「…分かったわ。」
そう言い残し、シエルキューテはカリムの元へと向かった。
『バーラ。』
「おう。なんだ魔王様。」
『裏切り者はお前が殺せ。』
◇□◇□◇□◇
まだ少し痺れるが身体の感覚が少しは戻ってきた。だが、猿轡をつけられ目隠しもされ手足も拘束され、身動ぎ一つ取れない状態で拘束されている。
目の前には何かの気配を感じる。恐らくはレミィだろう。これから僕はどうなってしまうんだろう…。
レミィの気配とは別の足音が此方に近付いてくる。
「あ! シエルキューテ様です。どうしたのです?」
レミィの声がそう反応する。
「レミィ。あなたはもう帰っていいわよ。」
「断るのです。カリムさんを見張る命令を受けているのです。」
「だから、その命令を解除するのよ。貴方はもう帰っていいの。」
「断るのです。魔王様からの命令なのです。」
「魔王様の…そう。もう隠せないのね。」
何か岩のような硬いものが砕けたかのような音が響いた。
その後に僕の目隠しが外される。
目の前にはシエルキューテが居て、その後ろではレミィが壁にめり込み気絶していた。
「カリム。逃げるわよ。」
そう言い、僕に付けられていた拘束具を乱暴に破壊し取り除いた。
「一体、何が?」
「いいから今は地上に逃げるのよ。着いて来なさい。」
そのまま手を引かれてダンジョンの入口へと向かって走らされた。
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