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26.対峙
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あのガキ共、意外と足速いんだな…。全然追い付けない…。
「ハァハァ…ちょ待って…。」
「早く逃げるぞルビ! 捕まったら毒漬けにされるぜ。」
「ベル兄、待ってよー。毒女に捕まっちゃうよー。」
誰が毒女だ! あーもう許さん。無理やりでも連れ帰ってやる!
「待ちなさい! 二人と…」
…? なんか地響きがするな。
違う。これは足音…? だんだん大きくなってるような…。
何かが走って来てるみたい。明らかに空気も変わったわ。
「二人とも。」
「分かってるよ。なんかヤバいのが来てる。」
おちゃらけてた二人の顔が引き締まってる。流石にこの圧には気が付くのね。
「見つけたあぁぁぁぁ!!」
何あれ…。
頭から蛇が生えたオバサン? それに、足の代わりに蛇のしっぽみたいなのが…。しかもかなり大きな両手斧を片手で持ってるのね。
ちょっと怖いわ。
「「《瞬速》。」」
もうそういう技が使えるのね。なら…。
「射線に入らないでよ。《氷弾/五連》。」
二人の邪魔にならない程度に少なめでいいかな。
あの魔物、真っ直ぐ止まらない…。まさか避けないつもり?
「どりゃぁ!!」
斧を振り回して、私の《氷弾》を全部落としたのね。五発だけとは言え、結構魔力込めたんだけど。あの魔物、なかなかやるなぁ。
「ベル兄、俺が合わせる。」
「分かった。《一閃》。」
「《足払い》。」
上段にベルくん、下段にルビくん。寸分違わず二箇所への同時攻撃。流石に一撃は入るかな。
「ハハッ!! 面白いなぁ!!」
え、また正面から迎え撃つ気なの? 単純に馬鹿なのかも知れないわね。
上段のベルくんに斧を振りかざしたわ、これで馬鹿確定ね。それじゃ下段のルビくんから攻撃を受けるし、ベルくんはそんな単調な攻撃じゃやられない。
「あ、っべ。」
パキンと二つの音が響く。
え? 二人とも剣が壊れたの? なんとか攻撃は避けたみたいだけど、どんななまくら持ってきたらそうなるのよ。
「ちょっと、二人とも戻って来なさい。《風撃》。」
風を使って蛇頭だけを仰け反らせ、二人はこっちに引き寄せる。
「「ごめんなさい。」」
「なんであんな弱い武器を持ってきたの!」
「えっと…その、あれは学園の備品なんだ。」
学園の備品って…、確か模擬戦用だから刃は叩いて潰されてるのよね。
「よくそんなので斬ってたわね。《召喚/剣》。」
《召喚/剣》、座学専門のガリ勉魔術師だから一応幅広く勉強しといたんだけど、私剣は使わないから適当に覚えただけで、あんまし強いのは創れないのよね。
「二人とも、これ使いなさい。」
「両刃は苦手なんだよなぁ。」
「俺らにはちょっと大きいよー。」
サイズ調整が難しいんだよ! 片刃の曲線の作りもよく知らないしさ!
何? 両刃は片刃の上位互換じゃないの?
「相談事は済んだかい!!」
やっぱり待ってくんないか、あの蛇頭。
この二人はもう戦えないと思った方が良さそうね。
「二人とも下がってて。《氷獄蝶》。」
無数もの氷の蝶を創り出し、敵に特攻させて凍結させる魔術。また正面から受けるみたいだけど、流石にこの技なら…。
「ぐっ!!」
寒いし霧が出るから嫌なのよねこの技。でも今度は効いてる感じがするわ。もう何発か放てば倒せそうね。
「バーラ、何を手こずっているのかしら。」
人…? いえ、新しい魔物。吸血鬼かな?
でも今更増えたところで同じ事よ。この距離を保って遠距離から仕留める。
近付いたのならまた風を使って吹っ飛ばせばいいわ。
「シエルキューテかい。あの女相当強いけど崩せるのかい?」
「魔術師なんてどれも同じよ。距離さえ詰めてしまえばあとは簡単でしょう。」
距離を詰める? あの魔物も馬鹿確定かな。
この射線を切れない直線でどうやって距離を詰めるのか。
否、答えは詰められない。そのまま一方的に殺されるだけなのよ。
「《氷獄蝶》!」
「《操血》。」
あの馬鹿な魔物も正面から…。
あれ、無傷…? 赤黒い何かを盾にしてるのね。
「バーラはこんなのに苦戦したの? こんな単調で馬鹿な攻撃に。」
なっ! ば、馬鹿ですって!
学園の成績468人中396位のこの私を馬鹿ですって!
でも確かに、このままだと決定打に欠けるわね…。攻め方を変えるべきね。
「《召喚/守護者》あの魔物達を殺しなさい!」
私の魔力をたっぷり込めた特別製の守護者。私の趣味で騎士みたいな見た目の全身重装備をさせてるの。防御力にも攻撃力にも優れている量産型の捨て駒よ。
「バーラ。あれは任せてもいいかしら。」
吸血鬼が後ろに下がり、蛇女が斧を構えながら前へと出る。
ふっ、あんな安っぽい斧じゃあ傷一つ付かない所か、逆に斧が砕け散るわ。
「ハハッ!! そっちからわざわざ盾を召喚してくれるなんてありがたいねえ!! 《石化》。」
なっ! 私の守護者が石にされた? …解除も出来ないわ。これじゃまるで即落ち二コマじゃない…。
「ミーネ姉ちゃん。後ろから人が来てるよ。」
人…なのね。なら少し安心だわ。全身黒なのはちょっとダサいけど、手を貸してもらいましょう。
「そこの黒い人。今強い魔物と交戦しているの、苦戦しているから手を貸して貰えない?」
「あら、カリムじゃない。丁度いいわね。その女を取り押さえなさい。」
「ハァハァ…ちょ待って…。」
「早く逃げるぞルビ! 捕まったら毒漬けにされるぜ。」
「ベル兄、待ってよー。毒女に捕まっちゃうよー。」
誰が毒女だ! あーもう許さん。無理やりでも連れ帰ってやる!
「待ちなさい! 二人と…」
…? なんか地響きがするな。
違う。これは足音…? だんだん大きくなってるような…。
何かが走って来てるみたい。明らかに空気も変わったわ。
「二人とも。」
「分かってるよ。なんかヤバいのが来てる。」
おちゃらけてた二人の顔が引き締まってる。流石にこの圧には気が付くのね。
「見つけたあぁぁぁぁ!!」
何あれ…。
頭から蛇が生えたオバサン? それに、足の代わりに蛇のしっぽみたいなのが…。しかもかなり大きな両手斧を片手で持ってるのね。
ちょっと怖いわ。
「「《瞬速》。」」
もうそういう技が使えるのね。なら…。
「射線に入らないでよ。《氷弾/五連》。」
二人の邪魔にならない程度に少なめでいいかな。
あの魔物、真っ直ぐ止まらない…。まさか避けないつもり?
「どりゃぁ!!」
斧を振り回して、私の《氷弾》を全部落としたのね。五発だけとは言え、結構魔力込めたんだけど。あの魔物、なかなかやるなぁ。
「ベル兄、俺が合わせる。」
「分かった。《一閃》。」
「《足払い》。」
上段にベルくん、下段にルビくん。寸分違わず二箇所への同時攻撃。流石に一撃は入るかな。
「ハハッ!! 面白いなぁ!!」
え、また正面から迎え撃つ気なの? 単純に馬鹿なのかも知れないわね。
上段のベルくんに斧を振りかざしたわ、これで馬鹿確定ね。それじゃ下段のルビくんから攻撃を受けるし、ベルくんはそんな単調な攻撃じゃやられない。
「あ、っべ。」
パキンと二つの音が響く。
え? 二人とも剣が壊れたの? なんとか攻撃は避けたみたいだけど、どんななまくら持ってきたらそうなるのよ。
「ちょっと、二人とも戻って来なさい。《風撃》。」
風を使って蛇頭だけを仰け反らせ、二人はこっちに引き寄せる。
「「ごめんなさい。」」
「なんであんな弱い武器を持ってきたの!」
「えっと…その、あれは学園の備品なんだ。」
学園の備品って…、確か模擬戦用だから刃は叩いて潰されてるのよね。
「よくそんなので斬ってたわね。《召喚/剣》。」
《召喚/剣》、座学専門のガリ勉魔術師だから一応幅広く勉強しといたんだけど、私剣は使わないから適当に覚えただけで、あんまし強いのは創れないのよね。
「二人とも、これ使いなさい。」
「両刃は苦手なんだよなぁ。」
「俺らにはちょっと大きいよー。」
サイズ調整が難しいんだよ! 片刃の曲線の作りもよく知らないしさ!
何? 両刃は片刃の上位互換じゃないの?
「相談事は済んだかい!!」
やっぱり待ってくんないか、あの蛇頭。
この二人はもう戦えないと思った方が良さそうね。
「二人とも下がってて。《氷獄蝶》。」
無数もの氷の蝶を創り出し、敵に特攻させて凍結させる魔術。また正面から受けるみたいだけど、流石にこの技なら…。
「ぐっ!!」
寒いし霧が出るから嫌なのよねこの技。でも今度は効いてる感じがするわ。もう何発か放てば倒せそうね。
「バーラ、何を手こずっているのかしら。」
人…? いえ、新しい魔物。吸血鬼かな?
でも今更増えたところで同じ事よ。この距離を保って遠距離から仕留める。
近付いたのならまた風を使って吹っ飛ばせばいいわ。
「シエルキューテかい。あの女相当強いけど崩せるのかい?」
「魔術師なんてどれも同じよ。距離さえ詰めてしまえばあとは簡単でしょう。」
距離を詰める? あの魔物も馬鹿確定かな。
この射線を切れない直線でどうやって距離を詰めるのか。
否、答えは詰められない。そのまま一方的に殺されるだけなのよ。
「《氷獄蝶》!」
「《操血》。」
あの馬鹿な魔物も正面から…。
あれ、無傷…? 赤黒い何かを盾にしてるのね。
「バーラはこんなのに苦戦したの? こんな単調で馬鹿な攻撃に。」
なっ! ば、馬鹿ですって!
学園の成績468人中396位のこの私を馬鹿ですって!
でも確かに、このままだと決定打に欠けるわね…。攻め方を変えるべきね。
「《召喚/守護者》あの魔物達を殺しなさい!」
私の魔力をたっぷり込めた特別製の守護者。私の趣味で騎士みたいな見た目の全身重装備をさせてるの。防御力にも攻撃力にも優れている量産型の捨て駒よ。
「バーラ。あれは任せてもいいかしら。」
吸血鬼が後ろに下がり、蛇女が斧を構えながら前へと出る。
ふっ、あんな安っぽい斧じゃあ傷一つ付かない所か、逆に斧が砕け散るわ。
「ハハッ!! そっちからわざわざ盾を召喚してくれるなんてありがたいねえ!! 《石化》。」
なっ! 私の守護者が石にされた? …解除も出来ないわ。これじゃまるで即落ち二コマじゃない…。
「ミーネ姉ちゃん。後ろから人が来てるよ。」
人…なのね。なら少し安心だわ。全身黒なのはちょっとダサいけど、手を貸してもらいましょう。
「そこの黒い人。今強い魔物と交戦しているの、苦戦しているから手を貸して貰えない?」
「あら、カリムじゃない。丁度いいわね。その女を取り押さえなさい。」
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