見捨てられて死にかけたけど、美少女吸血鬼に眷属にして貰えて吸血鬼として生き延びた?ので見捨てた奴らに復讐します。

Kooily

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44.当事者じゃない修羅場ってワクワクする

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 私は急いでカリムの元へと向かった。しかし、カリムは消えていた。争った形跡と共に姿を眩ませていた。

「一足遅かった…。」

 やっぱり、魔王様はレミィを捨ててビスクに直接カリムを狙わせた。私への人質にする為に。

 カリムの思想が読めない。…気絶か寝ているか遠すぎるか。どちらにせよ、ここに居ないなら誰かに連れ去られたのは明白よ。急いで探さなくちゃ。
 ……これは?


◇□◇□◇□◇


 ただただ苦しく…辛かった…。まるで体の中を食い破られているみたいな、そんな風な痛みも感じていた。しかし、今となってはそういう苦痛に慣れてきたのか。はたまた、感覚が麻痺してきたのか。定かでは無いが、なぜかちょっと暇とすら思えている。
 もしや、治りかけているのか……?

 壁を背に足を伸ばして立ち上がろうと試みた。が、ほんの少ししゃがみ姿勢になっただけなのに、上が下に、天井が地面にと、頭の中がぐちゃぐちゃになる。まるで袋の中に閉じ込められて振り回されたかのような気持ち悪い気分になり、そのまま転倒してしまった。
 ついでに吐きそうにもなる。

 まだまだ病人みたいだな。

 …足音が近付いて来ている。シエルキューテか? 違う…、複数人居る。シエルキューテじゃないぞ、誰だ?

「吸血鬼が見つからなければお金にならないし、もう諦めようよ。」

 知らない声、それらがじわじわと近付いてくる。気付かれないよう、意味もなく身を縮めて息を殺す。そして耳を研ぎ澄ませた。

「いや待て、さっきから何かの気配を感じるんだ。」

 気配…って、まさか僕の事か? 今、ここに来られたら嫌だな。為す術ないんだが。

「ほら、あの木の影に何か感じるだろ。」

 木の影…。ってことは、少なくとも僕じゃないな。ちょっと安心。

「さっきからこそこそ尾けている奴、出て来いよ。」

 暫く、木々のざわめきが研ぎ澄まされた耳へと入ってくる。なんだか不穏な空気が漂ってる。

「はぁ…ったく、別に尾けてた訳じゃないぞ。君達がたまたま俺の行く先々に居ただけだ。」

「それを尾けるって言うんだよ! さては、獲物の横取りでも狙ってるんじゃないだろうな!」

 なんか、当事者じゃない修羅場ってちょっとワクワクするな。

「あーはいはい、めんどいな…。ちなみに、いつ頃から尾けられていると感じたのかなぁ。別に尾けていた訳じゃないんだけどさ。」

「ほんの少し前からだな、捜索中に妙な気配を感じたんだ。それがどうした。」

「ほーん、索敵はそんなもんか。もう一つ聞くけど、君達って冒険者だよね。ランクはいくつくらいなのかな。」

 ランク、冒険者協会で実力に応じて付けられるあれか。あれ、入会とか登録とかしてないから、あんまし詳しくないんだよな…。

 というのも昔、魔王討伐による魔物減少の影響を受けて、対魔物として設立された協会の需要が無くなったんだよな。昔は金持ちの寄付を資金源に魔物退治メインで活動してたらしいけど、今では魔物の脅威が消え去ってか金持ちからの寄付が断たれた。資金源が無くなった協会は甘んじて舵を切り、今での役回りを言うなれば、冒険者という傭兵団の派遣仲介役だ。
 高額な退会料が怖かったから避けてたけど、ちょっと日銭を稼ぐだけなら手数料があるから入会しない方がいいんだよな。現に、入会してない人の方が多かったし。

 というか、皆が皆冒険者登録してる訳じゃないだろうに、なぜわざわざランクを聞いたんだ?

「まさか、こいつらはともかく俺を知らないのか? なら教えてやる。聞いて驚くな、俺はSランクのアダルベルトだ。」

 ふーん、冒険者だったらしい。しかもアダルベルト、有名人だ。イケメンだかなんだか知らないが、女関係で悪評しか立ってない。羨まけしからん奴だ。

「ほーん、Sって意外と高いなぁ。索敵も装備もゴミだからもっと底辺だと思ったんだけど。」

「…ふっ。俺を知らないなんて、ただの頭のおかしな世間知らずらしいな。あーもしかして、俺の連れに一目惚れでもしたのかい? こいつら三人全員、俺の女だから諦めな。」

 なんだこいつ、羨ま死ね。

「ねぇねぇアダルベルトさん。私襲われそうであの人こわぁい。」

 なんだ、この耳に障るぶりっ子の猫なで声。きっしょ。

「そーだね。ちょっと懲らしめてくるから、少し待っててね。」

 女の前だからってカッコつけるな。恥かいて終われ。石に躓け。

「という訳なんだ、ストーカー君。立ち去らないなら容赦しないよ。」

「ほーん。まぁ、今のSがどのくらい強いのかも知りたいし、時間無いけど少しだけつつこうかな。」

 足を踏み込み、剣を振り回す風切音がする。あ今、木を斬ったな。……本当に戦ってるっぽいけど、不思議だ。
 数秒経っても未だに接触がないみたいだ。

「へ、へぇ。そこそこだね。ストーカー君は避けるので精一杯なのかい、手加減してる俺相手にさ。まぁ、一撃も食らわなかった所だけは評価しとくよ。」

「Eでお荷物、Dで荷物運び、Cで未熟者、Bが半人前、Aでやっと一人前、Sは一流だろ。……アダルなんとか君をどう過大評価してもBが限界なんだよな。」

 …考えたこともなかったけど、俺ってED辺りなのかもしれない。なんか持ち運ばれてばっかだし…。

「ストーカー君は…挑発が好きだね。しっかし、その基準は間違ってるよ。Sの実力は一流なんかじゃなく、人の枠に収まりきらない神の領域に足を踏み入れた俺のような者を指すんだ。」

 自称神、痛くないのかな。多分、僕より年上だろ? ……なんというか、本物って凄いな。

「アダなんとか君程度で神なら、俺は神殺しになっちゃうな。……そろそろ反撃していいか?」
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