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48.絶望を照らす光
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「ここがゴールだよご苦労さん。」
いや、嘘だ……。
『嘘じゃないさ。嘘のような現実か、嘘なら良かった現実のどちらかだよ。おつかいありがとねビスクさん。』
やばい……ここで……こんな所で……殺されるのか。
『殺さないさ、君は高待遇で歓迎するよ。シエルと違って換えが効かないからね。』
「……お前らの目的はなんなんだよ。僕を攫って何する気だよ。」
『察しが悪いなぁ。前にも言ったと思うけど器が欲しいんだよね。で、君の体は互換性がいい。端的に言うと君が欲しいんだよね。』
……だろうな。なんだろう、推理するまでもなく予測出来ていた答えが、なんの驚きもなくそのまま来たよ。
「アハハ、ってことはさ。必要なのは身体であって、人格は要らないってこと? ちょっと拷問していいかな、趣味の方の。」
それは、拷問ではなく加虐じゃないのか? いやそんな揚げ足取り言ってる場合じゃない。
『ダメだ、人格が弱ると身体の質が悪くなる。もちろん器の乗り換え時には要らないけどね。このままじっくり育てるさ。主導権はこっちにある。』
加虐は無いのか……。
だが、何一つ安心出来ない状況なのは変わらない。
「こ、これ以上追い詰められたら自害する。何企んでるかは知らないけど、お前らの計画もこれで白紙に戻る。」
流石に今は覚悟固まってないけど。いざとなれば道連れにする。どうせ死ぬなら相手の思い通りにさせるつもりは無い。
『私の得意技は蘇生だよ。死亡時から一年以内なら完璧に治せるさ。例え、腐ったハンバーグになってもね。』
「そゆこと、主導権あるって言ったでしょ? もう無駄だから大人しくしなさい。あーそうだ、試しに一回蘇生してあげるよ。君は聞き分けが悪いからね。」
『虐めはやめてって言ってんじゃん……。』
……蘇生? 死んでも無駄なのか?
なら別の手を……別の手……何か無いのか……何か……思い付かないと。……もう、詰んだのか?
いや、まだだ。ここで諦めたら、全てが終わる。とっくに腕は完治してるんだ! こうなればとことん戦ってやる!
「うぁぁあ! 《操血》!」
「剣でどうにかなると思ってんのか?
毒に犯された身体で無理するな。どうせ無駄なんだから。」
ぐっ、少し血を使おうとしただけで意識が持ってかれる。だが、ここで倒れる訳にはッ!
グサッ
『ほう。自分の足を刺し、痛みで気付けか。』
痛っい……が、これでいい。これで頭が回る。
それを見ていたビスクのやつが口を挟む。
「奮い立たせるために自分を鼓舞して……合理性の欠けらも無いな。君がここから助かるプロセスを説明してやろう。
一、俺を倒し、ダンジョンを脱出
二、冒険者を撃退し、街を脱出
三、シエルキューテと合流し解毒
自分でも無理だって──」
「う、うるせぇ!」
ぐっ、啖呵をきったが、足に力が入らない。長期戦じゃ身体が持たない、やるなら短期で、一瞬で、一撃で決めてやる……。
あの噂に名高いアダルベルトですら相手にならなかった相手に……? いや、今更迷うな! やるしか無いんだ!
「あらら、ブチ切れちゃって、やる気満々って目つきだなぁ。魔王よ、ちょっと傷付けてもいいか?」
『しょうがないか。……良いけど、殺すなよ?』
目の前で敵対してるのは僕なんだぞ。よそ見したがって、敵とすら見られてない……。ちくしょう、隙だらけのそのニヤけた横面ぶった斬ってやる!
「うおあああ!」
『ほう?』
なんだ、《操血》で作った剣が光って……? だが丁度いい! この光であいつを!
「喰らえ! うああ……ゴホッ、……ゲホッ」
こ、攻撃は受けてない……くそ、ここが僕の限界か。攻撃すら出来ずに……終わるなんて……。
「ち、ちくしょう……。」
ビスクが不思議そうに魔王へ訊ねる。
「今のはなんだ? かなりのエネルギーの塊だったけど。」
『勇者の力……な気がするな。コイツは勇者の血縁だからな。あの力に私は負けたんだ。と言っても、私が負けた力よりも数段劣るがね。』
「あっそう。……ちなみに、このカリム君を届けた時点で俺の任務は終わりってことだよな?」
『そうだが、それがどうしたんだい?』
「カリム君、攫っていい?」
『あー……ん。なんで?』
なんだ、話の流れが変わったぞ……。
「理由……? こいつには素質があるとだけ言っとくよ。それじゃ、またな。」
『ちょっと待て、まだ話は終わって──』
……また景色が変わった。目の前にはアダルベルトの遺体、どうやら森に戻ったみたいだ。
それだけじゃなく、今回は転移する瞬間が辛うじて見えた。ほんの一瞬の出来事だったが、瞬く間に現れたゲートのようなものに呑み込まれていた。
一体、何が起きたんだ。
いや、嘘だ……。
『嘘じゃないさ。嘘のような現実か、嘘なら良かった現実のどちらかだよ。おつかいありがとねビスクさん。』
やばい……ここで……こんな所で……殺されるのか。
『殺さないさ、君は高待遇で歓迎するよ。シエルと違って換えが効かないからね。』
「……お前らの目的はなんなんだよ。僕を攫って何する気だよ。」
『察しが悪いなぁ。前にも言ったと思うけど器が欲しいんだよね。で、君の体は互換性がいい。端的に言うと君が欲しいんだよね。』
……だろうな。なんだろう、推理するまでもなく予測出来ていた答えが、なんの驚きもなくそのまま来たよ。
「アハハ、ってことはさ。必要なのは身体であって、人格は要らないってこと? ちょっと拷問していいかな、趣味の方の。」
それは、拷問ではなく加虐じゃないのか? いやそんな揚げ足取り言ってる場合じゃない。
『ダメだ、人格が弱ると身体の質が悪くなる。もちろん器の乗り換え時には要らないけどね。このままじっくり育てるさ。主導権はこっちにある。』
加虐は無いのか……。
だが、何一つ安心出来ない状況なのは変わらない。
「こ、これ以上追い詰められたら自害する。何企んでるかは知らないけど、お前らの計画もこれで白紙に戻る。」
流石に今は覚悟固まってないけど。いざとなれば道連れにする。どうせ死ぬなら相手の思い通りにさせるつもりは無い。
『私の得意技は蘇生だよ。死亡時から一年以内なら完璧に治せるさ。例え、腐ったハンバーグになってもね。』
「そゆこと、主導権あるって言ったでしょ? もう無駄だから大人しくしなさい。あーそうだ、試しに一回蘇生してあげるよ。君は聞き分けが悪いからね。」
『虐めはやめてって言ってんじゃん……。』
……蘇生? 死んでも無駄なのか?
なら別の手を……別の手……何か無いのか……何か……思い付かないと。……もう、詰んだのか?
いや、まだだ。ここで諦めたら、全てが終わる。とっくに腕は完治してるんだ! こうなればとことん戦ってやる!
「うぁぁあ! 《操血》!」
「剣でどうにかなると思ってんのか?
毒に犯された身体で無理するな。どうせ無駄なんだから。」
ぐっ、少し血を使おうとしただけで意識が持ってかれる。だが、ここで倒れる訳にはッ!
グサッ
『ほう。自分の足を刺し、痛みで気付けか。』
痛っい……が、これでいい。これで頭が回る。
それを見ていたビスクのやつが口を挟む。
「奮い立たせるために自分を鼓舞して……合理性の欠けらも無いな。君がここから助かるプロセスを説明してやろう。
一、俺を倒し、ダンジョンを脱出
二、冒険者を撃退し、街を脱出
三、シエルキューテと合流し解毒
自分でも無理だって──」
「う、うるせぇ!」
ぐっ、啖呵をきったが、足に力が入らない。長期戦じゃ身体が持たない、やるなら短期で、一瞬で、一撃で決めてやる……。
あの噂に名高いアダルベルトですら相手にならなかった相手に……? いや、今更迷うな! やるしか無いんだ!
「あらら、ブチ切れちゃって、やる気満々って目つきだなぁ。魔王よ、ちょっと傷付けてもいいか?」
『しょうがないか。……良いけど、殺すなよ?』
目の前で敵対してるのは僕なんだぞ。よそ見したがって、敵とすら見られてない……。ちくしょう、隙だらけのそのニヤけた横面ぶった斬ってやる!
「うおあああ!」
『ほう?』
なんだ、《操血》で作った剣が光って……? だが丁度いい! この光であいつを!
「喰らえ! うああ……ゴホッ、……ゲホッ」
こ、攻撃は受けてない……くそ、ここが僕の限界か。攻撃すら出来ずに……終わるなんて……。
「ち、ちくしょう……。」
ビスクが不思議そうに魔王へ訊ねる。
「今のはなんだ? かなりのエネルギーの塊だったけど。」
『勇者の力……な気がするな。コイツは勇者の血縁だからな。あの力に私は負けたんだ。と言っても、私が負けた力よりも数段劣るがね。』
「あっそう。……ちなみに、このカリム君を届けた時点で俺の任務は終わりってことだよな?」
『そうだが、それがどうしたんだい?』
「カリム君、攫っていい?」
『あー……ん。なんで?』
なんだ、話の流れが変わったぞ……。
「理由……? こいつには素質があるとだけ言っとくよ。それじゃ、またな。」
『ちょっと待て、まだ話は終わって──』
……また景色が変わった。目の前にはアダルベルトの遺体、どうやら森に戻ったみたいだ。
それだけじゃなく、今回は転移する瞬間が辛うじて見えた。ほんの一瞬の出来事だったが、瞬く間に現れたゲートのようなものに呑み込まれていた。
一体、何が起きたんだ。
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