天才はやっぱり人生も普通じゃない!!

出会い

第０話 マヌエラ・ヘルフェリッヒ

  ベルク王国は山に囲まれ、隣国に行くのに１週間はかかるような閉鎖的な国だ。

ただ、たくさんの魔法使いが古くから住んでおり、世界的に有名な国のひとつでとても栄えていた。
  
そんなベルク王国を支えている王族は、必ずひとつの属性の魔法は最高レベルに達していないと王族と認められずに追放される。現在の王はラトケ・ヘルフェリッヒ王である。
  
ラトケ王には娘・マヌエラがいた。
しかし、最高レベルの魔法を扱える王族は、他よりも少しだけ子孫が育ちにくかった。
特に女の子が生まれづらい家系なのだ。

その代わり、生まれた女の子は自分の健康と引き替えに全ての属性の魔法を使うことができるようになる。国の利益に繋がるのだ。

しかしラトケ王は、マヌエラの魔力を封じようとした。国の利益に繋がるような天才は隣国にとって生かしておけない存在だから。何より、マヌエラの健康が第一だから。

マヌエラの母親、王妃はそれに大反対だった。ラトケ王は王妃はどうでもよかったのだが、マヌエラ自身もそれにならって反対しだしたので封じることは出来なかった。

ラトケ王は腹いs…いや、政治的な問題で、王妃を事故に見せかけて暗殺した。王妃の親戚が変なことを企んでいたからだと世間には知らせた。

つまり、マヌエラは貴重な王族の女の子であり、非凡な才を持っているという訳で、大事に育てられたことは言わなくても分かるだろう。これからの物語は、そんな貴重な女の子、マヌエラの人生の物語である。


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「マヌエラ様、おはようございます！」

朝から元気良いマヌエラの専属メイドが勝手に入ってきた。まぁ許可はしているから良いのだけれど。

「おはよう、シェリ。今日はいつもより体調がいいわ！街へ遊びに行きたいのだけれど…」

長年メイド達が磨いてきたマヌエラの美しさが上目遣いでシェリに攻撃を仕掛ける。

「ぐっ…､マヌエラ様、残念ですが、今日は国王陛下からの呼び出しがありまして、隣国の王族からの依頼だそうです。」

「そう…さすがにお父様は誤魔化せないわね。」

「誤魔化すつもりだったんですか？」

「ええ。」

マヌエラはけろっとしているが、普通の人がやれば問答無用で死刑である。

「ところで隣国の王族が私に何を依頼するっていうの？」

「やはりマヌエラ様の偉大な力を利用して、何かしでかそうとしているんですよ!!!!!!!
大方、隣国の王太子の持病を治せとか言われるのでは無いでしょうか？」

「この際、隣国に恩を売っておけば将来安定するわね。お父様に直談判してくるわ！
ちょっと移動魔法陣を描くからベッドの上にいて。」

「マヌエラ様、歩いた方が早いですし運動しないと太りますよ。」

シェリがジト目でこちらを睨んでくる。
思春期の女子には絶対言ってはいけない言葉だ。

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「お父様、隣国の依頼とは具体的にどのようなものなのでしょうか？」

マヌエラは結局歩いて王族専用の談話室に向かった。

「マヌエラ、まぁ落ち着いて座りなさい。」

そう言ってソファでくつろいでいるラトケ王は悲しげな顔をしている。

「またお前を利用するのは本当に心苦しいんだが…。お前に縁談をもちかけてきたこともあるレクタゴ国の第一王位継承者クソ男のエルヴィン・フェルスターが難病にかかっていてな。感染病じゃないんだが、変な噂が広まる前に治して欲しいというお願いだ。」

「それ、医者でも治せないものなのですか？」

「うちにお願いしてきたんだから、治せないものなんだろう。」

「ふうん。じゃあ私行ってきますわ！
レクタゴ国は海があって楽しそうですから、観光して帰ってきます。出発は2週間後でいいですか？連れて行くのはシェリと、3人の侍女だけでいいです。護衛は必要ありません。」

「ああ、頼む。………何故行く気なのだ…もしやエルヴィンという奴に惚れたのか…??どうしよう…やはり私が気に入った奴が見つかるまで閉じ込めておくべきか…??はぁ…全く…。」

マヌエラは特技、聞かなかったふりをした。
エルヴィン・フェルスターには1度だけ会ったことがあるが、やけに好感度が高くて裏があるんじゃないかと疑ったほどだった。

レクタゴ国で何をするか考えながら、旅の支度を侍女に指示した。