【完結】色欲の悪魔は学園生活に憧れる

なかじ

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第一部

3※ 有×春樹

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 結局俺は住宅街まで来てしまい、近くを通った車から呼び止められた。素直にここがどこかわからんというと、車に乗っていた少年は苦笑いをしながら俺を車へと招き入れた。

「そう、初日なのに迷っちゃったんだ? 大変だったね」
「家が皆同じ形で覚えられん」

 俺を車に乗せてくれたのは俺が転入する高校の生徒らしい。線が細く、美しい顔は青白くて儚げな印象を受ける。灰色に近い色素の薄い髪に同系色の瞳は日本人ではなく外国の血を感じさせた。聞けばクオーターらしい。祖母が外国人なのだそうだ。
 青白い肌が気になってこっそり分析アナライズしてみると、やはり彼は病を患っていた。心臓が悪いらしい。鼻を鳴らすと独特の刺激臭の中に甘い香りがしたので、きっと薬の匂いだろう。

「何分、ここに来たばかりでな。世話をかける」
「かまわないよ。行き掛けだしね」
「俺は静海という。静海有しずみあるだ。日本ではない別の国からきた」

 ――ということになっている。
 昨日イウディネに散々練習させられた。なかなか気に入っている名前だ。何なら本名よりも好ましく思っている。

「静海くんか、僕は早良だよ。早良春樹さわらはるき。どこからきたの?」
「バルバトス」
「……そう」

 実際にこの世界にもある国名なのだが、思い当たらなかったのだろう。それ以上の言及はない。
 俺達が乗っている車はまぁまぁ良い革の使われており、イウディネが通勤用にと買った車によく似ていた。外車だと言っていたので、よくわからんがこの車もそうなのだろう。

「春樹は病気か? 顔色があまりよくないな」
「……あぁ、うん。持病でね。今朝も体調が悪くて病院に行ってきたんだ」

 春樹は明らかに嫌な顔をしているので病気である己、もしくは病について問われることが嫌なのだろう。胸を抑える様子を見るに、未だに胸が痛んでいるようだ。

「痛むのか?」
「うん……。僕、本当にポンコツだから」
「ポンコツ? どういう意味だ?」
「静海くんは留学生だったね。えぇと、不出来ってこと」

 何と、眼の前にいる春樹は人間の中で不出来な部類に入るらしい。見目は綺麗なのできっと能力値のことだろう。これは丁度良い! と俺は今朝方イウディネに教えて貰ったステータス設定を行うことにした。モニターは勿論目の前の春樹である。

(こやつが平均以下の人間ということだな……)

 ならば春樹のステータスを自分の身体に投影し、病気を加味してフィジカル数値を上げておけばほぼほぼ平均の人間になるのではなかろうか。これは朝から幸先の良い! 漫画のようだ! と俺は再び春樹をアナライズし、自分の肉体数値を設定していく。

 やり方は簡単だ。瞬きを二回すれば、勝手にメニュー画面が出て来る。あとは目線と瞬きで選択が可能だ。あっという間に数値を入れ、瞬きを三回して終了させる。

「あ、着いたようだね。目立つとまずいから、裏門につけているんだ。まわりこんで正門から入ると良い」

 無事に学校にも着いたし、ステータスもばっちり。これでイウディネも文句ないだろう。俺はウキウキとした心地でバッグの肩にかける。漫画で見ていた憧れの高校生だ。今から胸躍る娯楽が味わえるのが楽しみである。

「助かった春樹。礼だ」
「え?」

 ウキウキついでに春樹の唇に唇を押し付ける。腕輪の制御はあるが、残った魔力なら人間の身体でも使って問題ない。魔力を春樹に送り込み、問題がある心臓への負担を軽減させた。簡単な治癒魔法である。
 これで多少運動もできるくらい春樹は回復したはずだ。

「これで少々体調が良くなるはずだ。世話になったな」
「ちょ、し、静海くん?」
「内緒だぞ」
「……これだけ?」

 春樹が俺の制服の袖を掴む。切れ長の瞳が甘えるように潤んでいて愛らしい。
 白くて愛らしいといえばウサギであるが、春樹はそれよりももう少し気高い。白鳥のような美しさを持っている。

「何だ。欲しがりだな?」

 俺が浮かせた腰をシートに戻すと、運転手が外へと出ていく。よく調教された従者だ。イウディネなら別の場所に移動してくれるまでしてくれるが、他人の従者にそこまでは求めまい。なにせ、時間もないのだ。

「っはぁ……っふ……んぅ……」
「ふ……愛らしいな」
「え? あっ」

 唇を重ねると、春樹が俺の頭や首に手を回す。興奮しているのか頬を紅潮させていた。
 春樹が初対面の俺に惹かれ、発情しているのは俺の魔力が春樹の身体の情欲に働きかけているせいだろう。求められるのは嬉しい。可愛がってやろうと、春樹の股間をすりすりと掌で撫でる。

「こっちは駄目だよ静海くん。僕は心臓弱いから……」
「大丈夫だ。ほら、集中しろ」

 俺を止めようとする唇を塞いでしまう。指先で服の上から陰茎をなぞると、ビクビクと身体が反応した。
 俺の色欲の能力の一つとして、相手の匂いで男や女を抱いたか、男に抱かれてきたかということがわかる。混ざり合う愛液や精液の匂いが相手の身体にこびりついていたら、それほど頻繁に抱き合っている相手がいるということである。逆に匂いが薄ければ相手があまりいない、もしくはご無沙汰ということになる。スンと鼻を鳴らす。そこまで多いとは思わなかったが、人間でこの年齢なら十分多いうちに入る。相当モテているようだ。

「ひっ、あっ、ああっ」
「なんだ。布の上からだぞ? 敏感だな、春樹」
「おか、おかしっ……あ、ぐっ……ち、くび痛っ……」
「これは痛いのではない。感じているのだ」

 シャツの上から指で胸の先端を転がす。ついでにちといじめてやろうと魔力を指先から流して身体を敏感にした。快感増幅はすぐに作用し、春樹は顔に似合わぬ大きい性器を服の上からでもわかるくらい勃起させている。
 キュっと先端を指先で抓ると春樹の唇から悲鳴のような喘ぎが上がる。気持ちよさそうに身を捩っていた。腰が揺れているのは直接的な刺激が欲しいのだろう。開いていく足が素直で可愛らしい。
 俺は春樹の陰茎をズボンの上から軽く扱く。既にズボンにまで先走りが染み込んで色を濃くしていた。いい匂いだ。俺の大好きな匂いがする。

「く、ひっ、あ、も、イ、くっ……ッ!」
「構わん。駄賃だ」

 自分ばかり、と春樹の目が語るので優しく耳元で囁く。白い耳の穴に舌を差吸い込めば、ビクビクと扱いていた陰茎が震える。ハァハァ、と吐息を零す春樹の頬にちゅっと口付けると、春樹はトロンと上気した顔で俺を見つめていた。

「助かった春樹。ではまたいずれな」

 魔力を二度も使ったとイウディネにバレたら人間を模した意味がないと言われるので人差し指を唇に押し付けて『内緒だぞ』と念を押す。春樹は目を瞬かせ、小さくコクコクと頷いた。
 
 俺は春樹に言われた通り、校舎をぐるりとまわって正門に向かう。
 実は反対側から回ったほうが圧倒的に早いのだけれど、それは大分先の未来まで気付かなかった。




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