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第三部
46※ 海月→有(お触り)
しおりを挟むこいつ、俺も同じ悪魔だと知らずに粉をかけてきたな……。
海月はキスで快感増幅をかけてきたが、イウディネにかけられた時の方がよっぽど強い快感を得る。ということはイウディネ以下、つまり俺以下である。格下相手の魔法など、簡単に押さえ込むことが可能だ。
(しかしなぁ……)
厄介なことに、押さえ込んだら俺がこいつ以上の悪魔だとバレてしまう。アルファリア=リアレクトがここにいると知られるとまずいのは、俺だけではなく叔父上もそうなのだ。俺を匿っていたと知れば長兄あたりからお怒り(物理)が飛んできそうである。これ以上叔父上に迷惑をかけるのは避けたい。
「あぁ、もうこんなになっている。可愛いな」
「お前は……夏が、好きなんじゃなかったのか……?」
「そうだね。まぁまぁ好きだよ。でも夏義のことは今は忘れよう? ……君は好みの顔立ちだから、すごく良くしてあげる」
もしや海月の狙いは夏ではなく俺なのか?
俺が足りない頭で一生懸命思案していると、海月はシャツの上から俺の乳首をこね始めた。絶妙な力加減はさすがの玄人である。チリチリと痛みに似た快感が胸に走り、股間は下着を押し上げて痛いくらい硬くなっていた。
(気持ち良いが! こんなことをしている場合ではないだろう! 俺!)
『ひぃんひぃん、気持ちいいんっ』と叫んで煽るべきなのか、中二病よろしく『これっぽっち? 無様なテクニックだな……』と煽るべきなのか悩む。どれが正解だ!? どうすればいいのだ!?
「本当は挿入れてもらいたいんだけど、君は挿入れた方がよさそうだな。ねぇ、どっちが良い?」
「ひっ、ぁ、んぁっ」
「うんうん。俺のちんこでお尻ぐちゃぐちゃにして欲しいんだね。ど淫乱だな」
確かに俺はど淫乱だがそんなこと言ってないぞ!
性器を服の上から握り込まれ、やわやわと揉みしだかれる。強制的に性欲を刺激されている今はつい欲望に流されそうになってしまう。いかんいかん。快感増幅をかけられたまま抱かれると、魔力を吸いすぎて海月を殺しかねない。俺は自慢じゃないが動物一匹殺すことができぬ箱入り悪魔だぞ。そんなことをしたらショックで夜にしか眠れなくなってしまう!
「ほら、触って欲しい? 腰が動いているよ?」
「ん、っふぁ、あっ、ぁあっ、イッく……ッ」
「いいよ。ほら、もっと強くしてあげようか」
海月が直接俺の性器に快感増幅をかける。それは反則技だ。抵抗しなければ否応なく射精コースである。
我慢しようとしたが、海月の手で性器を擦られ俺は呆気なく達した。ビクビクと腰が震え、下着がじわりと冷たくなる。ズボンにまで精液が染みてお漏らしみたいになってしまった。恥ずかしいことこの上ない。しかし性器はまだ硬いまま、次の快楽を求めていた。
「ぁ、んあ、ああっ」
「まだ足りないよね? じゃあ服は脱ごうか」
海月は俺のベルトに手をかけ服を脱がそうとする。もういっそ一発ヤッてから考えてしまおうか、と考えることを放棄した矢先、ウィンと扉が開く音がした。
「おや? 海月先生?」
「い、うら先生っ!?」
「……?」
扉が開き、中に入ってきたのはイウディネだった。俺は欲情したまま海月の腕の中で喘ぐ。身動ぐ度、痛いほど性器が脈打ち、イきそうになってしまう。
「具合を悪くしているのかな?」
「……」
やってきたイウディネを俺はぼんやり眺める。スッと細まるイウディネの目にゆらりと浮かんだのは欲望ではない。殺意だ。別の意味でゾクリとし、快楽に犯された頭が急激に冷え始めた。
「どう、してここに……」
「え? あぁ、彼の保護者に頼まれて、毎週この日の放課後はカウンセリングをしなければいけないんです。なかなか来なかったから探しに……」
そんな設定いつ考えたんだ、と思うようなことをイウディネは淀み無く海月に伝える。海月は戸惑いながら俺の身体からゆっくり手を離した。
「そうそう、海月先生、先程学年主任が探されてましたよ? 見かけたら職員室に行くよう言付かっています」
「いや、でも静海くんがこのままじゃ……」
「具合が悪いなら私が対応しておきますよ」
「ですよね……」
何か文句があるのでしょうか? と言わんばかりのイウディネに海月が黙った。
イウディネは養護教諭で、俺の体調が悪いとすれば、付き添いにこれほどぴったりの人材はいないだろう。海月はここでイウディネを巻き込むのはさすがに危険だと思ったらしく、すんなり俺から離れた。無理矢理3Pを強行する気はないようだ。
「では、お願いします……」
「えぇ」
海月が唇を噛みながら部屋を出ていく。すれ違いざま、鋭い視線がイウディネを睨みつけていた。いつもの人が良い海月の姿はどこにも無い。あれが本性か。
「……お誘いしたのは貴方様からですか?」
海月がいなくなるとイウディネが腕を組んで俺を見下ろした。俺は背もたれに寄りかかったまま頭を横に振る。
「まさか。どうしてここに?」
「春樹から連絡がありました」
春樹がイウディネに俺の監視を依頼したらしい。
イウディネはちょっと様子を見て、サボっているなら叱るつもりだったらしい。良いタイミングできてくれた。俺が春樹に全く信用されていないことが功を奏したようだ。ん? これ功を奏したと言っていいのか?
「あれは?」
イウディネは海月が出ていった扉を睨みつけている。
「俺達と同じだ。上から人間をかぶっている」
「まさか。あれは王弟殿下から頂いたものですよ……?」
この技術、肉体は叔父上でなければ手に入れられない特殊なものだ。
俺達も叔父上に身体を貰うまで見たことも聞いたこともなかった。この肉体が叔父上専用の技術ならば海月の身体も叔父上が手配した可能性が高い。叔父上に聞けば、海月の正体がわかるかもしれないな……。
「後ほどテオドール様に連絡をしておきます。……他に何か気付いたことはありますか?」
「他?」
「海月冬夜についてです」
「……俺はずっと、あいつが単に好みでないから食指が動かないのだと思っていたのだが、あいつが悪魔なら話は変わるかもしれん」
「と、言いますと?」
「海月は天使の血が濃いのではないかと思う」
この世界において、天使とは悪魔の対義とされているが、魔界では少し異なる。
魔界の歴史では悪魔は元々天使であったとされていて、悪魔の進化論として俺もそう習った。
欲望に身を委ね、穢れた天使は天界を追われて魔界へと堕ちた。
天から最も遠い魔界の土地は神からの聖なる力が届かず、その真逆ともいえる力が充満しており、堕天使は生き延びるため、聖なる力の代わりにその力、魔力を身体に取り込み、あるものは溶け、あるものは奇形となり、あるものは禍々しい姿に変化した。
俺達の先祖、最初の王族は堕ちたと同時に巨大な魔力を取り込み、その身体から聖なる力を完全に無くしたものとされた。そのため王族は情も慈愛も、一切が無くなった。己の欲だけで満たされた純然たる悪魔なのである。
……という話が有名だが、俺は自負できるほど情も慈愛も持ち合わせている。これは悪魔の進化に紐づくお伽噺のようなものだ。
「羽根持ちということですか?」
「多分そうだな。始祖返りだ」
悪魔の中には鳥のような羽根を持つ者がいて、そういう悪魔は『羽根持ち』や『始祖返り』と呼ばれる。悪魔の中でも類まれな能力を持ち、聖なる力すら使えるという唯一の存在。
そして俺はこの羽根持ちとの相性が大変よろしくない。
俺は聖なる力というものと一切相容れない特異な体質で、礼拝堂も教会もいるだけで船酔いならぬ聖地酔いをする。聖職者に至ってはどれほど好みでもちんこが動かない。
色欲の悪魔としては、聖職者をたぶらかして堕落させる萌えイベントを起こしたいところなのだが、すっごく頑張らないと下半身が反応しないので、それならばいっそ仏僧を襲いたい。袈裟プレイをしてみたいのだ。おわかりいただけるだろうか?
「快感増幅がなければ俺は勃たなかったと思うし、概ね当たっているだろう」
「海月冬夜が羽根持ち……。我が君、この件は私が預からせて頂いても?」
「あ、あぁ……」
イウディネの表情が険しいまま固まっている。額には青筋が浮かんでいるのが見えた。
そういえばイウディネは羽根持ちが大嫌いだった。俺と同じような、相性云々の話ではない。純粋にただ大嫌いなのだ。こうなったイウディネは怖いので、できるだけ穏便に話を進めた方が良い。
「イウディネがそう言うのなら任すぞ。あいつの狙いはどうやら夏ではなく、俺のようだからな。動きにくい」
「かしこまりました。必ず息の根を止めてみせます」
「ディ、ディネ……?」
イウディネがこんなにイラつくのは羽根持ちの話をしたからだろう。いつもなら俺がどんな男に抱かれても仕方ない方ですねと笑ってくれるのに、今はその余裕が皆無だ。
「あの男、最初に学校で会った時からいけすかないんです。なるほど羽根持ちだったのですね。どうりで生理的に無理だと思いましたよ」
イウディネと海月が嫌過ぎて職員会議以外はずっと避けていたらしい。先程から目が据わっているのがどうにも気にかかる。
(昔、羽根持ちと何かあったのだろうか……)
ずっと理由を聞いてみたかったのだが、こうなったイウディネが怖すぎて未だに理由を聞けていない。迂闊に聞いて要らぬ火の粉を浴びるほど俺は馬鹿ではなかった。例えテストで3点しか取れない俺でも、わかることはあるのだ。
「ディ、ディネ……すまないが……その……」
身体がムラムラして堪らない。治癒で治すのが億劫なほど身体が快楽に支配されていた。こうなったらもう発散させた方が良い。
「……えぇ、消毒しましょうね」
イウディネは頷くと、俺のベルトに指をかける。険しかった表情がいやらしい笑みに変わりほっとした。
この後の声を殺しながらの自習室セックスは大いに盛り上がったが、後からやってきた春樹に見つかりとんでもなく怒られ、この場所でのセックスは禁止となってしまった。
勿論ご褒美は無し。大変無念である。
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