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第24話 新たに始まる一年 ―前編―
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シホが正社員としてROSEに帰ってきた日、ヒカリは再びシホと受付の仕事をしていた。
「今日の仕事は、これで終わりだね!」
シホは手元の書類を整理しながらそう言った。
「はい! ……やっぱり、シホさんが戻ってきてくれて、本当に良かったです!」
ヒカリは笑顔で話す。
「んー? ……それは、一人で受付の仕事が大変だったからってこと?」
シホはヒカリに問いかけた。
「んまぁ、それも少しはありますけど……。やっぱり、シホさんと一緒に仕事した方が、私、楽しいです!」
ヒカリはシホを見ながら笑顔で言った。
「本当? そっか! 嬉しい!」
シホは少し照れて喜んでいる様子だった。
「それに、今のシホさんは、前よりもイキイキ働いているのがわかります! だから、尚更そう思うのかもしれないです! やっぱり、正社員になると気持ちが変わるんですか?」
ヒカリは元気よく言った後、少し前のめり気味でシホに質問した。
「まぁ、正社員になれたのはすごく嬉しくて、少し自信がついたのは確かだけど。……私がイキイキ働けているのは、この仕事を含めた『今の生き方が自分のやりたいこと』なんだと、やっとわかったからなんだよ。……だから今は、すっごく生きてるなーって感じるんだよね!」
シホは窓の外を見ながらそう話した。ヒカリはシホが生き方について、堂々と話している姿を見て、芯のある人というのは、こういう人を言うのかなとしみじみ思った。
「……シホさんは、やっぱりかっこいい先輩です」
ヒカリは落ち着いた口調でそう言った。
「そう? ……困ったことがあれば、なーんでも頼りなさーーい! ……みたいな」
シホはわざとらしく大げさにかっこいい先輩を表現したみたいだ。
「ふふ。それはちょっと違うような」
ヒカリは少し変わったことをするシホが面白かった。
「ふふふ」
シホは優しそうな表情を浮かべながら笑っていた。
シホとの会話が途切れ、ヒカリは帰る準備をしていた。帰る準備をしながらも、頭の中では次の魔女試験のことを考えていた。自分がこれからどうしたらいいのか、何が足りなかったのか、いろいろなことが巡り巡る。そんな時、ヒカリの中で新しい考え方が生まれた。悩むならば時間を決めてしっかり悩もう。そして、終わらせよう。そう思い立ったヒカリは、エドのもとへ向かった。
「エド! ちょっといい?」
ヒカリはエドに話しかけた。
「ん? ちょっと待ってな! もう少しでキリがいいところだから……」
エドは手書きで報告書を書いていた。ヒカリはエドの仕事が少し落ち着くまで待つ。
「……よし、いいぞ!」
エドがヒカリに声をかけた。
「土日のことなんだけど、いろいろ考える時間にしたいから、魔女修行をなしにさせて欲しい! この前の魔女試験で、自分に何が足りなかったのかとか、これから何をすべきなのかとか、そういうのを少し時間かけて深く考えてみたい! このままじゃ私、たぶん魔女試験に受かりっこないと思うからさ!」
ヒカリは真剣に伝えた。
「そうか! わかった! そうやって、自分で決めて行動する。それが最大の成果を生み出す方法だからな。……俺の方も、あと一年の魔女修行で、ヒカリを絶対に魔女にしてあげたいから、いろいろ考える時間にしたかったし! お互い考える時間にするか!」
エドはヒカリの顔を見て笑顔でそう言った。
「ありがとう」
ヒカリはエドにそう言った。
土曜日の朝、ヒカリは原付バイクにまたがり寮を出発した。原付バイクでの移動中、自分の中で浮かない気持ちがモヤモヤとわいてくる。
三十分ほど走った時、とある民家の前で原付バイクを停めた。ヒカリは黙って民家を見つめていた。
「もう、誰かの家が建っているんだ……」
ヒカリはそうつぶやいた。ここは、元々ヒカリが両親と住んでいた家があった場所だ。火事のあった日からほとんど来ることが無かった、というよりも思い出すのが嫌でずっと避けていた。
「魔女になろうと思い始めたのは、この場所から……。…………んー。…………ふう。…………」
ヒカリは少しつぶやいた後、眉間にしわを寄せながら考え始めた。
「………………うん。……魔女試験の時、私は呪いの魔女に幻を見せられたんだよな。…………その幻というのは、自分の家が火事になった時に、両親を失ったすごく悲しい出来事について」
ヒカリは魔女試験を思い出しながらつぶやく。
「………………いや…………違う。……違うよ」
ヒカリは大事なことに気づいた。
「私が見た幻は、自分の心のどこかにあって、自分でも必死に見ないようにしている、大きなトラウマのことだ! ……そうか。自分の中の弱さに打ち勝てなかったから、魔女試験に落ちてしまったんだ。………………いや、落ちたんじゃない。……ギブアップだ。……うん。そういうこと」
ヒカリは自問自答しながら、心の中を整理していく。あの幻が何を意味していたのか、ヒカリの中で理解ができた。ヒカリは再び原付バイクを走らせる。
それから、二十分ほど原付バイクを走らせて、ひまわり公園に到着した。ベンチに座り、持ってきたおにぎりを食べながら空を見ていた。自分の心がスッキリしていないのに、天気だけはスッキリ気持ちがいいことを少し残酷に感じた。
おにぎりを食べ終わると、気分転換に少しだけ散歩をし、遊具で遊ぶ子供達を見て癒された後、また同じベンチに座る。今まで深く考えることをあまりしたことがなかったので、よくわからなかったが、とにかく疲れる作業だと身をもって思い知った。
「魔女になること……。自分のやりたいこと……。仕事って……。生きるって……。うぅー………………。あー! もう!」
ヒカリは今考えたいことがよくわからなくなってしまった。本気で頭を使うと、こんなにも頭が痛くなるのか。それを全く知らなかったということは、全く頭を使ってこなかったということだと気づいてしまい、尚更頭が痛くなってしまう。
持ってきたお茶を飲みながらリフレッシュしよう。お茶を飲むと気持ちが少し落ち着いてきた。一分ほど休憩したらまた始めよう。ヒカリは目を閉じた。そして、だいたい一分が経過した時、パッと目を開けた。
「よし! ……魔女になること。正直、軽く考えていたのか。………………いやいや、そんなことはないはず。……魔女になって、誰かが大事なものを失わないで済むように助けてあげたい。……それが私のしたいことなんだ。…………うん。それは自分の本心。間違いない。…………だから、魔女になりたい。……………………じゃ、魔女になる過程で死ぬかもしれなくても挑戦するのか。………………………………」
ヒカリは自問自答を始めて、最後の問いに対して回答が出てこなかった。
「そうだな。ここを本気で考えてこなかったんだ。……すぐ答えらんないんだもん。…………悔しいけど、やっぱり魔女になることを、軽く考えていたってことか。…………魔女になるのに、命を懸ける、か。……そうだよね。初めからマリーさんも言ってたよね。……せっかく助かった命なんだから、人間らしい普通の人生を送った方がいいんじゃないのって」
ヒカリは魔女になるために、命を懸ける覚悟ができていなかったことに気づいた。
それから、ヒカリは背伸びをした後、両手を顔に当てながら下を向いた。
「はぁー。やっと、わかったよー。……ホントしょぼかったなー。……あー。しょうもなかった。そりゃ、全然足んないよね。今までなんで考えてこなかったんだろう。答えなんてとっくに決まっているのにさー。……ホントバッカだなー」
ヒカリは両手を顔から離し、目を大きく開いて顔を上げる。
「火事で全て失ったあの日から、私の生きる目的は決まっていた。……私は、誰かの大切なものを守れる立派な魔女になりたい。……なぜなら、誰かが自分と同じような辛い思いをしてほしくないから。それはなぜかというと……………………」
ヒカリはそこで固まった後、急に涙を流し始める。
「……だって…………。本当に…………。めちゃくちゃ辛いがらざぁ…………」
ヒカリは号泣しながら言った。誰にも言えなかったこと、誰にも頼れなかったこと、誰にも甘えられなかったこと、誰にも弱みを見せられなかったこと。大切なものを失った悲しみと辛さを押し殺し目を背け、ずっと我慢していたことに初めて気がついた。こうやって考えるだけで体が震えるほど、ずっと辛い気持ちを抱えていたのだとわかった。
ヒカリは、突然涙を拭って勢いよく立ち上がる。
「だから私は! この人生を懸けてでも、絶対に魔女になる! よし!」
ヒカリは泣きながら笑顔で力強くそう言った。すると、モヤモヤしていた気持ちがスッキリし、気持ちの良い空や風が、まるで語りかけてきているような気がした。只々、ヒカリは気持ちがまとまり嬉しかった。
「今日の仕事は、これで終わりだね!」
シホは手元の書類を整理しながらそう言った。
「はい! ……やっぱり、シホさんが戻ってきてくれて、本当に良かったです!」
ヒカリは笑顔で話す。
「んー? ……それは、一人で受付の仕事が大変だったからってこと?」
シホはヒカリに問いかけた。
「んまぁ、それも少しはありますけど……。やっぱり、シホさんと一緒に仕事した方が、私、楽しいです!」
ヒカリはシホを見ながら笑顔で言った。
「本当? そっか! 嬉しい!」
シホは少し照れて喜んでいる様子だった。
「それに、今のシホさんは、前よりもイキイキ働いているのがわかります! だから、尚更そう思うのかもしれないです! やっぱり、正社員になると気持ちが変わるんですか?」
ヒカリは元気よく言った後、少し前のめり気味でシホに質問した。
「まぁ、正社員になれたのはすごく嬉しくて、少し自信がついたのは確かだけど。……私がイキイキ働けているのは、この仕事を含めた『今の生き方が自分のやりたいこと』なんだと、やっとわかったからなんだよ。……だから今は、すっごく生きてるなーって感じるんだよね!」
シホは窓の外を見ながらそう話した。ヒカリはシホが生き方について、堂々と話している姿を見て、芯のある人というのは、こういう人を言うのかなとしみじみ思った。
「……シホさんは、やっぱりかっこいい先輩です」
ヒカリは落ち着いた口調でそう言った。
「そう? ……困ったことがあれば、なーんでも頼りなさーーい! ……みたいな」
シホはわざとらしく大げさにかっこいい先輩を表現したみたいだ。
「ふふ。それはちょっと違うような」
ヒカリは少し変わったことをするシホが面白かった。
「ふふふ」
シホは優しそうな表情を浮かべながら笑っていた。
シホとの会話が途切れ、ヒカリは帰る準備をしていた。帰る準備をしながらも、頭の中では次の魔女試験のことを考えていた。自分がこれからどうしたらいいのか、何が足りなかったのか、いろいろなことが巡り巡る。そんな時、ヒカリの中で新しい考え方が生まれた。悩むならば時間を決めてしっかり悩もう。そして、終わらせよう。そう思い立ったヒカリは、エドのもとへ向かった。
「エド! ちょっといい?」
ヒカリはエドに話しかけた。
「ん? ちょっと待ってな! もう少しでキリがいいところだから……」
エドは手書きで報告書を書いていた。ヒカリはエドの仕事が少し落ち着くまで待つ。
「……よし、いいぞ!」
エドがヒカリに声をかけた。
「土日のことなんだけど、いろいろ考える時間にしたいから、魔女修行をなしにさせて欲しい! この前の魔女試験で、自分に何が足りなかったのかとか、これから何をすべきなのかとか、そういうのを少し時間かけて深く考えてみたい! このままじゃ私、たぶん魔女試験に受かりっこないと思うからさ!」
ヒカリは真剣に伝えた。
「そうか! わかった! そうやって、自分で決めて行動する。それが最大の成果を生み出す方法だからな。……俺の方も、あと一年の魔女修行で、ヒカリを絶対に魔女にしてあげたいから、いろいろ考える時間にしたかったし! お互い考える時間にするか!」
エドはヒカリの顔を見て笑顔でそう言った。
「ありがとう」
ヒカリはエドにそう言った。
土曜日の朝、ヒカリは原付バイクにまたがり寮を出発した。原付バイクでの移動中、自分の中で浮かない気持ちがモヤモヤとわいてくる。
三十分ほど走った時、とある民家の前で原付バイクを停めた。ヒカリは黙って民家を見つめていた。
「もう、誰かの家が建っているんだ……」
ヒカリはそうつぶやいた。ここは、元々ヒカリが両親と住んでいた家があった場所だ。火事のあった日からほとんど来ることが無かった、というよりも思い出すのが嫌でずっと避けていた。
「魔女になろうと思い始めたのは、この場所から……。…………んー。…………ふう。…………」
ヒカリは少しつぶやいた後、眉間にしわを寄せながら考え始めた。
「………………うん。……魔女試験の時、私は呪いの魔女に幻を見せられたんだよな。…………その幻というのは、自分の家が火事になった時に、両親を失ったすごく悲しい出来事について」
ヒカリは魔女試験を思い出しながらつぶやく。
「………………いや…………違う。……違うよ」
ヒカリは大事なことに気づいた。
「私が見た幻は、自分の心のどこかにあって、自分でも必死に見ないようにしている、大きなトラウマのことだ! ……そうか。自分の中の弱さに打ち勝てなかったから、魔女試験に落ちてしまったんだ。………………いや、落ちたんじゃない。……ギブアップだ。……うん。そういうこと」
ヒカリは自問自答しながら、心の中を整理していく。あの幻が何を意味していたのか、ヒカリの中で理解ができた。ヒカリは再び原付バイクを走らせる。
それから、二十分ほど原付バイクを走らせて、ひまわり公園に到着した。ベンチに座り、持ってきたおにぎりを食べながら空を見ていた。自分の心がスッキリしていないのに、天気だけはスッキリ気持ちがいいことを少し残酷に感じた。
おにぎりを食べ終わると、気分転換に少しだけ散歩をし、遊具で遊ぶ子供達を見て癒された後、また同じベンチに座る。今まで深く考えることをあまりしたことがなかったので、よくわからなかったが、とにかく疲れる作業だと身をもって思い知った。
「魔女になること……。自分のやりたいこと……。仕事って……。生きるって……。うぅー………………。あー! もう!」
ヒカリは今考えたいことがよくわからなくなってしまった。本気で頭を使うと、こんなにも頭が痛くなるのか。それを全く知らなかったということは、全く頭を使ってこなかったということだと気づいてしまい、尚更頭が痛くなってしまう。
持ってきたお茶を飲みながらリフレッシュしよう。お茶を飲むと気持ちが少し落ち着いてきた。一分ほど休憩したらまた始めよう。ヒカリは目を閉じた。そして、だいたい一分が経過した時、パッと目を開けた。
「よし! ……魔女になること。正直、軽く考えていたのか。………………いやいや、そんなことはないはず。……魔女になって、誰かが大事なものを失わないで済むように助けてあげたい。……それが私のしたいことなんだ。…………うん。それは自分の本心。間違いない。…………だから、魔女になりたい。……………………じゃ、魔女になる過程で死ぬかもしれなくても挑戦するのか。………………………………」
ヒカリは自問自答を始めて、最後の問いに対して回答が出てこなかった。
「そうだな。ここを本気で考えてこなかったんだ。……すぐ答えらんないんだもん。…………悔しいけど、やっぱり魔女になることを、軽く考えていたってことか。…………魔女になるのに、命を懸ける、か。……そうだよね。初めからマリーさんも言ってたよね。……せっかく助かった命なんだから、人間らしい普通の人生を送った方がいいんじゃないのって」
ヒカリは魔女になるために、命を懸ける覚悟ができていなかったことに気づいた。
それから、ヒカリは背伸びをした後、両手を顔に当てながら下を向いた。
「はぁー。やっと、わかったよー。……ホントしょぼかったなー。……あー。しょうもなかった。そりゃ、全然足んないよね。今までなんで考えてこなかったんだろう。答えなんてとっくに決まっているのにさー。……ホントバッカだなー」
ヒカリは両手を顔から離し、目を大きく開いて顔を上げる。
「火事で全て失ったあの日から、私の生きる目的は決まっていた。……私は、誰かの大切なものを守れる立派な魔女になりたい。……なぜなら、誰かが自分と同じような辛い思いをしてほしくないから。それはなぜかというと……………………」
ヒカリはそこで固まった後、急に涙を流し始める。
「……だって…………。本当に…………。めちゃくちゃ辛いがらざぁ…………」
ヒカリは号泣しながら言った。誰にも言えなかったこと、誰にも頼れなかったこと、誰にも甘えられなかったこと、誰にも弱みを見せられなかったこと。大切なものを失った悲しみと辛さを押し殺し目を背け、ずっと我慢していたことに初めて気がついた。こうやって考えるだけで体が震えるほど、ずっと辛い気持ちを抱えていたのだとわかった。
ヒカリは、突然涙を拭って勢いよく立ち上がる。
「だから私は! この人生を懸けてでも、絶対に魔女になる! よし!」
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