『選ばれし乙女』ではありませんが、私で良いのでしょうか?私、地味で目立たない風属性ですよ?

ミミリン

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テストの結果

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今日のピーター様はすこぶる機嫌が悪い。


何故か私は上級クラスの一部の生徒に呼び出され、取り囲まれている。



「おい、セレナ。これはどういうことだ!」


乱暴に何かの用紙をバシンっと机に叩きつけられる。


何が書かれてあるかそっと目を通すと前回の全体テストの結果みたいだ。


普通科にはまだ知らされていないけど、上級クラスは一足早く結果を教えてもらえるようだ。


「これが、どうかされましたか?」


「何でお前が学年1位をとっているんだ!
どんな汚い手を使ったんだよ!!」


「汚い手と言われましても…。」


出された問題をただ解いただけなんだけど…。


私を取り囲んでいる上級クラス生徒の視線が痛い。
私を責めるような睨みつける視線だ。



「セレナさん、悪い事はいつかバレますよ。
私は心配しています。
あなたが汚い手を使うような女性に成り下がる所なんて見たくありません。
ね、今なら私たち上級クラスでこの結果をもみ消す事も出来るかもしれない。
あなたに協力して差し上げようとしているのですよ。」


うるうるとした瞳でミリアさんが私の手を掴んできた。



見れば見るほど私と正反対な女の子だと思う。
可愛くて守ってあげたくなるふわふわの綿菓子のような甘い香りのする女の子。


「おい、ミミリ―を睨むな。
犯罪者のくせに生意気な態度を見せるんじゃない。」


「は?犯罪者ですか?
私はただ問題を解いただけです!」

流石に犯罪者呼ばわりはひどいわ。



予想以上に大きな声を出したので周囲が驚いている。

ピーター様に反論したのはこれが初めてだと思う。


「やだ…セレナさん、怖い…。
そんな大きな声、出さないで。」



目の前でポロポロと美しい宝石のような涙を流すミリアさん。


何故、あなたが泣くのでしょうか?

犯罪者と呼ばれて泣きたいのは私だと思うのですが。



「おい!ミミリ―を泣かせるな!
なんて卑怯な女なんだお前は。見損なったぞ!」



「そうだ、そうだ!」


私が皆さんから責められているのはどうしてでしょうか?


私が何をしたというのでしょうか?


「私がテストを受けたのは普通科です。」



「そうだ、お前のような低能は普通科しか行けないからな。」


「今回のテストには上級クラスの方にしか解けない問題が3割ほどありました。」


「そうだ、俺たち優秀な人間にしか解けないんだよここのテストは。」


「では、普通科の生徒の回答を先生から見せてもらってください。
私がどの生徒の回答をカンニングしたのかそれで分かるのではないですか?」


「この期に及んでまだ悪あがきを…。」


「普通科の生徒の中に今回のテストで7割以上とれている人間が私以外に居るかを調べてから私を疑って頂きたいです。
テスト終了後のみなさんの様子だと残り3割はどうしても解けなかったと口々におっしゃっていましたけど。」


「…っ!」


「私は日ごろからピーター様の課題を…。」

「もういい!!ごちゃごちゃと言い訳ばかり並べやがって!」


「ピーター?どうしたの?セレナさんの言い訳聞かないの?」


この様子だとミリアさんの課題を私が代行している事、ご存じないのかしら?
確認しておいた方が良いのかしら?


「ミリアさん、あの…。」



「これ以上しょうもない事をこのクラスで話すな!
お前みたいなものがこの場で話す権限はねえんだよ!」


「おい、ピーター…あんまり怒鳴ると上級クラスの印象が悪くなるぞ。
ちらちらこっち見てくる生徒いるし。」


「くそ…っ。どいつもこいつも…。」


「私の身の潔白が証明されるなら先生をこちらにお呼びしてください。
そろそろ次の授業も始まりますので早い方がよろしいかと。」


「おい、どうするピーター。
俺、先生呼んでこようか?」


「呼ぶな!…っもういい!どうせ、たまたまセレナのヤマが当たったんだろ。
ばくちに当たった運のいい女だったという事だ!
今回はこう言う事で見逃しておいてやる!早く失せろ!」


ピーター様はわなわなと震えながら私を脅すように睨みつける。


「…。そうですか。では失礼します。」


私はスッと立ち上がり一礼して教室をあとにした。


とりあえず犯罪者ではなくなったようだ。


私の希望はこの学園の卒業認定をもらう事と、実家への支援が途切れない事だけ。




これからは目立たないようにテストでは中の下くらいの成績をキープすることを心に誓った。

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