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私の気持ちも伝えよう
しおりを挟む「ルキア、俺は君を愛している。」
ディランに両手を包み込まれ何かを伝えられた。
…。
オレワキミオ…アイシテイル…。
オレワ=俺は、
キミオ=君をここまでは訳せた。
アイシテイル=愛して…いる?
誰が?
キミヲ?
俺が?
アイシテイル?
どういうこっちゃ?
頭が正常に働かない。
その様子をディランが見て、心配そうな顔をする。
「何一つ難しい事は言っていないぞ。
もう一度言う。
いや、何度だって言う。」
「ルキア、愛している。
俺はルキアしか愛せないんだ。」
この人、何言ってるんだろう…。
どっきりでした~とか?
いや、この世界にどっきり悪ふざけ番組とかやってないよね。
だって、ほらディランが言ってたじゃんあの話…。
「えっと…ディランは好きな人居るって言ってたじゃない…。
その人とはどうなったの?」
そうだ、もしかしてその人がダメだったから二番手三番手の私にお鉢が回ってきたって話なら、キープ要員は考えさせてほしい。
私は待つ女ではない。
私はおかーはんのように旦那が連れてきた子供をあんなに優しく育てられるほど人格者ではない。
色々余裕がなさ過ぎて前世の喋り口調になってしまう。
「先ほどもその話をしていたが、
あの日俺が口にしていた気になる女性はルキア、君の事だ。
俺はずっと前から君に惹かれていたんだ。
俺の意気地がなさすぎてあらぬ誤解を招いてしまった…。」
「え…どういうこと?
好きな人いたんじゃないの?」
「何度も言うが、好きな女性はルキアのことだ!
愛しているのはルキアだけなんだ。
君は魅力的過ぎて、誰かのもとに行ってしまうだろう…。
だから…不安で仕方がなかった…。
どうしても君と一緒に居たくて、体で繋ぎとめるような事をしてしまったんだ。」
ディランが私を手放したくないって?
それは確かに私が居れば領地経営に関して利益が多いからでしょ?
それも、今までの話であってこれからは商売人だけじゃなくて貴族や王族と渡り歩かなくちゃいけないのよ。
私じゃ役不足だわ。
ディランには現実を知ってもらわないと…。
「ルキア…俺は君さえいれば良いんだ。
君とさえいれば平民にだってなれる。
行商でも良いし農夫でも漁師でも何だってできる。
君と一緒じゃなくちゃ生きる意味がないんだ。」
ディランの私を包む手に力が籠められる。
ディランの瞳がじっと私の瞳の奥を見据える。
冗談を言っている顔じゃない。
貴族じゃなくなっても良いって…
ディラン、本気で言ってるの?
「君への愛が本気でなければこんな指輪なんて作れない。
この愛の誓いは永遠だ。
俺は君意外の女性を愛することはない。
しつこいと思われるかもしれないが、俺は君を愛しているんだ。」
「…っ。」
どうしよう…。
無茶苦茶嬉しい…。
嬉しすぎる…んだけど、これはどう返せば良いんだろう…。
ええっと、私とディランは両想いって事で良いの?
「…言葉にすると、こんなに簡素だが…ルキアへの想いはもっと深くて重いんだ。
こんな重い奴は嫌か?」
まさか、そこまで想ってもらっているとは予想外過ぎて…。
っていうかちゃんとした恋愛も両思いも全部初めてすぎて反応に困る。
何か、何か返さなくちゃ。
「い、嫌じゃない…けど…予想外過ぎて…。」
ディランは何故かため息をついている。
「今まで自分ばかり身勝手に動いてしまいすまなかった。
ルキアを愛しすぎて冷静ではいられなくなってしまって…。
嫌じゃなければ、これからはしっかりと言葉にして想いを伝えることにする。」
「う、うん…。…?」
返事をしたものの、これからって言う事はこの婚姻関係はどうなるんだろう?
ディランは私が握っていた指輪をそっと取り出し、その場でひざまずいた。
「ディラン=マックレーンは生涯ルキア=マックレーンを愛することを誓います。
この先も死を迎えてもなおルキアを愛し続けることを許していただけますか?」
これは、この国のプロポーズだ。
すごく嬉しいのに、
まだ頭の中には『
こんな私で良いのだろうか?』
という考えがよぎる。
返事を迷っていると
「ルキア…。」
ディランに声を掛けられる。
ディランを見ると、ミントブルーの瞳が切なく揺れている。
「許すと言ってほしい…。」
優しい夜風が私の頬を通り過ぎる。
今は夢の中じゃない…。
ディランの表情と声と振る舞いに、揺らいでいた心が固まった。
信じてみよう…。
男女の愛情なんてもの私には縁がないと思っていたけど、ディランなら信じられる。
そう決心が固まった。
「許します…。
どうか、これからもよろしくお願いします。
ディラン。」
そう私が答えた時、ディランの綺麗な瞳からスウっと一筋涙が伝った。
ディラン…泣いている?
「ああ…これは夢ではないよな…。」
「夢じゃないわ。」
「そうか…。
この指輪をはめても良いか?」
「…もちろん。」
ディランは優しく指輪を私の左手薬指に入れ込んだ。
「ずっと一緒だ…ルキア。
俺には君しかいない。」
指輪の付けられた手にそっとキスを落とすディラン。
手を握ったままスッと立ち上がりお互い見つめ合う。
私もちゃんとディランに気持ちを伝えよう。
「あのね…ディラン。」
「ん?どうした?
ああ、少し寒いか?」
「違うの。
あのね、私もディランの事が好きだったのよ。」
「………………。」
ディランが手を握ったまま真顔で固まっている。
え?私そんな変なこと言った?
めっちゃ固まってるやん…。
もしかしてショック受けてる?
ってか何のショック?
「ディラン…大丈夫?」
「ル…ルキア…。
今…何て…言った?」
「ええ?
えっと大丈夫?って聞いたわ。」
「いや、違う。その前だ。」
「その前?」
「ルキアが俺の事を好きだったと…聞こえたが、都合のいい幻聴か?」
「幻聴じゃないわ。」
私の告白を幻聴にされるのはちょっと困るな。
「なら、もう一度その下りを言ってくれ。
頼む…。」
ディランが明らかに混乱している。
見ていて何だか可哀そうなくらいに。
恥ずかしいが、ちゃんと言おう。
「えっと、だから…私もディランが好きだったの。
あ…違うか。今も好きなんだけどね。」
そう伝えた瞬間、ぎゅうっと強い力で抱きしめられた。
「ディ、ディラン?」
「それは初耳なんだが…。」
抱きしめられたまま話しかけられる。
「初めて…言ったもの…。」
夜風が少し肌寒く感じる分ディランの体温が伝わってくる。
やっぱりディランって温かい…。
「何故今言葉にしてくれたのだ?」
「だって、ディランが私の事、あ…愛してるって言ってくれたから…。
ちゃんと言っておこうと思って。」
「………。」
私を包む腕に更に力が籠められる。
「何だよ…俺たちお互い想い合っていたってことじゃないか。」
「そ、そうみたい…だね。」
ディランがふわりと抱きしめていた腕を解き、私の頬を撫でる。
「キス…していいか?
今無性にルキアとキスがしたい。
ダメか?」
ディラン、月明かりでも分かるくらい顔が赤い。
ご丁寧に私の了解を得ようとしているのは、多分私はキスが苦手と言ったからだよね。
苦手と言うより、キスしちゃうとディランへの未練が重くなるからっていう考えだったんだよ。
今、断る理由はない。
人生初のキス。
…何か恥ずかしいな。
エッチな事は散々しているのにさ。
「良いわよ。
ファーストキスもらってくれる?」
そう言った瞬間、ディランにそっと口づけされた。
ああ、キスってこんなに柔らかいんだ。
知らなかった…。
しばらく、二人の唇が重なる。
…キスっていつ終わるんだろう。
な、長くないかい?
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