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あの方が鶴丸様
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来ない。
全然来ない。
しびれを切らした私は一応確認として受付に鶴丸様が来社したか聞いてみた。
「えっと、先ほどのご年配の男性が鶴丸様ですよ。元営業部の平井さんと約束があるのでお通ししました。」
「うそ…。ちょっと、何で教えてくれないのよ!私が誰か探して待ってたの知ってるでしょ?あんたたち適当な仕事してんじゃないわよ!!!」
どいつもこいつも私の事馬鹿にしやがって。
「あの、営業部の近藤さんですよね。」
「だから何よ!偉そうに私の名前呼ばないでくれる?!」
「後ろにお客様が並ばれています。うちの社内の人間だと知られると恥さらしなのでそこ、どいてもらえます?」
受付の女は顔は笑っているが目の奥が笑っていない表情を見せてきた。
大手会社の受付とあって顔だけは綺麗なのがまた癪に障る。
名前聞きとご機嫌取りしかできない仕事のくせに偉そうだわ。
「聞こえませんでしたか?業務に支障があるのでそこをどいてください。」
周りを見渡すと社内の人間や来客たちが私に注目していた。
ここはこれ以上この受付嬢に注意をすると変に悪目立ちしてしまうかもしれない…。
マコ先輩が事前に私に教えてくれていたらこんなことにならなかったのに。
「もういいわ。」そう言って私は営業部に戻った。
内勤の応対室に向かうと使用中のプレートが目に入った。
ここだ。
ここで今マコ先輩が鶴丸様と話しているんだ。
ドアに耳を当てて中の会話を探る。
今は換気を徹底しているから機密事項の会話でなければ数センチドアを開けておくことと言われている。
そのおかげでマコ先輩たちの声が少し聞き取れた。
「鶴丸様、今日もエントランスで色々な社員に声をかけていたんですか?」
「ああ。ちょっとした楽しみでね。いやあ、意地が悪いのは分かっているんだが色々な会社でこれをすると社内の雰囲気がよく分るんだ。今日は背の高い男の子にここまで案内してもらったよ。見栄えはさておき、なかなか良い青年だった。」
「あ、それ山根さんですね。ここまで一緒に来てくれてたんですよ。」
ん?マコ先輩と鶴丸様の他に誰か喋っている?
私は耳に全神経を集中させた。
「ああ、そうだったんですね。」これは聞きなれたマコ先輩の声。
「いや~やっと現役から息子の代に変わるって言うのにやれパーティだの会食だの講演会だの堅苦しいスーツを着せられて辛いんだよ。だから今日みたいな日はプライベートとして来るのが一番だ。服もこれが一番落ち着く。
社長って言ってももともと職人だからずっと違和感があるんだよ。」
「まあ、鶴丸様。貴重なプライベートなお時間使って頂いてありがとうございます。」
「いいや、僕も平井さんに会いたかったし今回異動って知って挨拶もしたかったんだ。これまで本当によくやってくれた。感謝しているよ。」
「そう言って頂けて嬉しいです。今後も何かの形でまた鶴丸様に助けていただくことがあるかと思います。今後もどうぞよろしくお願いします。」
「ああ、分かっているよ。それで、隣の彼女が今後僕の担当についてくれる方かな?」
「はい。滝野瀬恵さんです。」
ちょ、ちょ、ちょっと待って~~~~~!何でそこに滝野瀬さんがいるの!?
意味分からないんですけど!
しれっと会話に参加しているし、どこまで厚かましいの?
信じられない!パートのくせに!
ここは、鶴丸様の為にも私が登場しなくちゃいけないわね!
私の優秀さを知ってもらうためには…。
全然来ない。
しびれを切らした私は一応確認として受付に鶴丸様が来社したか聞いてみた。
「えっと、先ほどのご年配の男性が鶴丸様ですよ。元営業部の平井さんと約束があるのでお通ししました。」
「うそ…。ちょっと、何で教えてくれないのよ!私が誰か探して待ってたの知ってるでしょ?あんたたち適当な仕事してんじゃないわよ!!!」
どいつもこいつも私の事馬鹿にしやがって。
「あの、営業部の近藤さんですよね。」
「だから何よ!偉そうに私の名前呼ばないでくれる?!」
「後ろにお客様が並ばれています。うちの社内の人間だと知られると恥さらしなのでそこ、どいてもらえます?」
受付の女は顔は笑っているが目の奥が笑っていない表情を見せてきた。
大手会社の受付とあって顔だけは綺麗なのがまた癪に障る。
名前聞きとご機嫌取りしかできない仕事のくせに偉そうだわ。
「聞こえませんでしたか?業務に支障があるのでそこをどいてください。」
周りを見渡すと社内の人間や来客たちが私に注目していた。
ここはこれ以上この受付嬢に注意をすると変に悪目立ちしてしまうかもしれない…。
マコ先輩が事前に私に教えてくれていたらこんなことにならなかったのに。
「もういいわ。」そう言って私は営業部に戻った。
内勤の応対室に向かうと使用中のプレートが目に入った。
ここだ。
ここで今マコ先輩が鶴丸様と話しているんだ。
ドアに耳を当てて中の会話を探る。
今は換気を徹底しているから機密事項の会話でなければ数センチドアを開けておくことと言われている。
そのおかげでマコ先輩たちの声が少し聞き取れた。
「鶴丸様、今日もエントランスで色々な社員に声をかけていたんですか?」
「ああ。ちょっとした楽しみでね。いやあ、意地が悪いのは分かっているんだが色々な会社でこれをすると社内の雰囲気がよく分るんだ。今日は背の高い男の子にここまで案内してもらったよ。見栄えはさておき、なかなか良い青年だった。」
「あ、それ山根さんですね。ここまで一緒に来てくれてたんですよ。」
ん?マコ先輩と鶴丸様の他に誰か喋っている?
私は耳に全神経を集中させた。
「ああ、そうだったんですね。」これは聞きなれたマコ先輩の声。
「いや~やっと現役から息子の代に変わるって言うのにやれパーティだの会食だの講演会だの堅苦しいスーツを着せられて辛いんだよ。だから今日みたいな日はプライベートとして来るのが一番だ。服もこれが一番落ち着く。
社長って言ってももともと職人だからずっと違和感があるんだよ。」
「まあ、鶴丸様。貴重なプライベートなお時間使って頂いてありがとうございます。」
「いいや、僕も平井さんに会いたかったし今回異動って知って挨拶もしたかったんだ。これまで本当によくやってくれた。感謝しているよ。」
「そう言って頂けて嬉しいです。今後も何かの形でまた鶴丸様に助けていただくことがあるかと思います。今後もどうぞよろしくお願いします。」
「ああ、分かっているよ。それで、隣の彼女が今後僕の担当についてくれる方かな?」
「はい。滝野瀬恵さんです。」
ちょ、ちょ、ちょっと待って~~~~~!何でそこに滝野瀬さんがいるの!?
意味分からないんですけど!
しれっと会話に参加しているし、どこまで厚かましいの?
信じられない!パートのくせに!
ここは、鶴丸様の為にも私が登場しなくちゃいけないわね!
私の優秀さを知ってもらうためには…。
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